「腕なしでどう戦えと!?」
ANOTHER BEAST GEAR
第2話「腕なしでどう戦えと!?」
時根脱才 作
怪人の腕が振り下ろされた。
「詰んだああああああああああっ!!」
叫びながら。
紀人は横へ跳んだ。
直後。
さっきまで立っていた地面が、大きく抉れる。
「だから待てって!」
転倒しそうになった身体を、必死に脚だけで立て直す。
「今こっちは人生最大級のトラブル抱えてんだぞ!」
怪人は答えない。
むしろ。
腕を失った紀人を見て、好機と判断したかのように距離を詰めてくる。
「ですよね!」
紀人は走った。
とにかく。
今は距離を取るしかない。
「どうする……どうする俺……!」
カバーを開ければいい。
コブラメモリーを外す。
ブランク状態にして。
閉じる。
そうすれば、この形態は解除できる。
理屈は分かっている。
問題は。
「そのカバーを開ける手がねえ!」
紀人は叫んだ。
「なんだこの欠陥システム!」
一瞬。
考える。
「…………」
いや。
「入れた俺が悪いのか……?」
さらに考える。
「いやでも普通、誤操作防止とかあるだろ!」
怪人が追いつく。
「今それ考えてる場合じゃねえ!」
紀人は急停止。
怪人の拳をかわし、その懐へ潜り込む。
「腕がないなら――!」
右脚を振り上げる。
「脚を使う!」
蹴りが怪人の脇腹へ突き刺さった。
怪人の身体が横へ流れる。
「よし!」
追撃。
左。
右。
回し蹴り。
後ろ蹴り。
拳は使えない。
肘も使えない。
掴めない。
防御もできない。
だったら。
脚だけで。
攻撃される前に攻撃する。
「おらっ!」
怪人の頭部へ蹴りが入る。
巨体がよろめいた。
「いける!」
紀人の顔に笑みが戻る。
「なんだよ! 腕なくても――」
足を掴まれた。
「…………」
紀人の笑顔が消えた。
「また?」
怪人が持ち上げる。
「お前それ気に入ったの!?」
紀人の身体が宙へ浮く。
「ちょっ――」
振り回される。
「だから酔うってえええええ!」
今度は。
怪人が紀人を地面へ叩きつけようとした。
「まずい!」
腕はない。
受け身も取れない。
なら。
「――っ!」
紀人は腹筋に力を込めた。
身体を折る。
怪人に掴まれている脚を軸に。
もう片方の脚を振り上げる。
「だったらこれで!」
踵が怪人の顔面へ直撃した。
怪人の手が緩む。
「離せ!」
もう一発。
蹴る。
足が解放された。
「よしっ!」
紀人は宙へ投げ出される。
「……あ」
今度は。
着地。
腕は必要ない。
「これはいける!」
両脚から地面へ降りる。
膝を曲げる。
衝撃を逃がす。
成功。
「よっしゃ!」
紀人は顔を上げた。
「分かってきたぞ!」
腕がない。
それを。
元の身体と同じように動こうとするから、失敗する。
なら。
最初から。
「腕なんかないと思って戦えばいい!」
実際。
ないのだが。
「…………」
紀人は一瞬だけ黙った。
「いや、それ何の解決にもなってねえな」
怪人が突進してきた。
「でも今はそれでいい!」
紀人も走る。
◇
戦い方を変える。
拳による牽制は捨てる。
相手を掴むことも考えない。
防御もしない。
かわす。
蹴る。
離れる。
ただ、それだけ。
単純。
だが。
「はっ!」
紀人の蹴りが怪人の膝へ入る。
体勢が崩れる。
すぐに。
「そこ!」
顎へ蹴り上げる。
怪人がのけ反った。
「よし!」
いける。
さっきまでより。
明らかに動けている。
「要するに!」
怪人の攻撃。
身体を沈めてかわす。
「腕がないなら!」
地面へ片膝をつく。
そのまま身体を回転。
脚を払う。
「脚だけで戦えばいいんだよ!」
怪人が倒れた。
「どうだ!」
紀人は立ち上がる。
「人間、やれば何とかなるもんだな!」
そのとき。
倒れた怪人が、紀人の足を掴んだ。
「…………」
紀人が下を見る。
怪人を見る。
「それは禁止にしない?」
当然。
聞いてもらえなかった。
「うおおおおっ!?」
引っ張られる。
紀人が倒れる。
「だから倒れると起きるの大変なんだって!」
地面を転がる。
怪人が覆いかぶさってくる。
「まずっ……!」
押さえ込まれた。
「…………」
紀人は動こうとする。
肩。
動く。
脚。
動く。
腕。
ない。
「…………」
怪人の両腕がある。
紀人の両腕はない。
「これ……」
紀人の顔が引きつる。
「組み技になったら絶対勝てなくない!?」
怪人が拳を振り上げた。
「うわあああ!」
紀人は脚を曲げる。
怪人の腹へ両足を当てる。
「どけぇぇぇ!」
一気に蹴り飛ばした。
怪人の身体が浮く。
その隙に。
紀人は身体を横へ転がした。
「起きろ俺!」
腹筋。
脚。
勢い。
「よっ!」
どうにか立ち上がる。
「はぁっ……はぁっ……」
きつい。
戦えるようにはなった。
だが。
これでは。
いつか捕まる。
「やっぱ……戻らないとダメだ」
紀人はベルトを見る。
カバー。
コブラメモリー。
あれを外す。
方法。
「手がないなら……」
紀人は周囲を見る。
「手を使わずに開ければいい」
何か。
引っかけられるもの。
押せるもの。
カバーへ届くもの。
「…………」
紀人の視線が止まった。
少し離れた場所。
壊れた柵。
怪人の攻撃によって折れた金属部分が。
斜め上へ突き出している。
「…………」
紀人はベルトを見る。
柵を見る。
もう一度。
ベルト。
柵。
「……いけるか?」
怪人が起き上がる。
「やるしかねえ!」
紀人は走った。
怪人ではなく。
柵へ。
「頼むぞ……!」
突き出た金属へ身体を寄せる。
先端を。
ベルトのカバーへ引っかける。
「もうちょい……!」
身体を捻る。
カチッ。
「!」
わずかに。
カバーが浮いた。
「開いた!」
紀人の顔が輝く。
「よっしゃあ!」
カバーを開ける。
できた。
あとは。
コブラメモリーを。
「…………」
紀人の動きが止まった。
カバーは開いた。
メモリーが見えている。
「…………」
外す。
「…………」
どうやって?
「…………」
右肩を見る。
左肩を見る。
メモリーを見る。
「…………」
怪人を見る。
怪人が迫ってくる。
「待って」
紀人はもう一度、ベルトを見る。
「開けるだけじゃダメじゃん」
そう。
メモリーは。
自分で抜かなければならない。
「…………」
紀人は天を仰いだ。
「次から次へとぉぉぉぉぉぉっ!!」
怪人が迫る。
だが。
カバーは。
開いた。
あと一つ。
あと一つだけ。
コブラメモリーを抜く方法さえ見つければ。
「……やってやる」
紀人は怪人へ向き直った。
「ここまで来たら意地でも戻ってやる!」
腕のない紀人と。
容赦なく襲ってくる怪人。
そして。
開いたままのベルト。
紀人に残された問題は。
ただ一つ。
「手を使わずに……どうやってメモリー抜くんだよ!」
答えは。
まだ。
見つかっていなかった。
◇
後書き
腕がない。
だからベルトのカバーを開けられない。
では、手を使わずに開ければいい。
紀人、解決策を発見。
――と思ったら。
今度はメモリーを抜く手がありません。
一つ解決するたびに、次の問題が出てくる。
完全に自業自得ですが、本人はいたって真剣です。
そして、腕がなくても戦い方を変えれば戦えることも分かってきました。
果たして紀人は、手を使わずにコブラメモリーを抜くことができるのか。
次回、いよいよこの「腕なし問題」の解決編です。
【ANOTHER BEAST GEAR】
本作は『ビーストギア』本編の設定をもとに、「もし、あのとき別の選択・結果になっていたら」を描くIFストーリーです。
本編とは異なる世界線の物語であり、本編の出来事そのものを変更するものではありません。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、基本設定は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。




