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ビーストギア Another  作者: 戮
アリア編1

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第一話 目覚め

第一話 目覚め


 最初に感じたのは、痛みだった。


「……っ」


 息を吸っただけで、身体の奥が軋んだ。


 サクラはゆっくり目を開ける。


 白い天井。  無機質な照明。  見覚えのない部屋。


「……ここ、どこ?」


 身体を起こそうとして、初めて異変に気づいた。


 動かない。


「え?」


 もう一度、力を入れる。


 腕が上がらない。  脚も動かせない。


 視線を落とすと、両手首と両足首が拘束具のようなもので台に固定されていた。


「何、これ……」


 一瞬、頭の中が真っ白になった。


 サクラは混乱する思考を無理やりたぐり寄せ、直前の記憶を探した。


 昨日は道場へ行った。


 いつものように稽古をして、紀人とも顔を合わせた。


 その帰り道。


 公園の近くに停まっていたキッチンカーへ寄った。


「……クレープ」


 ブドウのクレープを食べた。


 甘さの中に少し酸味があって、思っていたよりおいしかった。


 そこまでは、はっきり覚えている。


 だが――。


「…………」


 その先がない。


 家に帰った記憶がない。


 誰かと話した記憶もない。


 どこかへ移動した覚えすらない。


「私……昨日……」


 何をしていた?


 どうして、ここにいる?


 誰が自分をここへ運んだ?


「何で……思い出せないの?」


 どれだけ考えても、ブドウクレープを食べたところから先だけが、すっぽりと抜け落ちていた。


 サクラは周囲を見回す。


 窓は見当たらない。


 壁際には、用途の分からない機械や器具がいくつも並んでいた。


 病院。


 一瞬そう考えた。


 だが、すぐに違うと思った。


 少なくとも、サクラが知っている病室ではない。


「誰か!」


 声を張る。


「誰かいませんか!」


 返事はない。


「ちょっと! 誰か!」


 静かだった。


 静かすぎる。


 自分の呼吸だけが、やけに大きく耳に響く。


 その静けさが、急に恐ろしくなった。


 ここにいてはいけない。


 理由など分からない。


 誰かに襲われたわけでも、何か危険なものを見たわけでもない。


 それでも、本能が逃げろと告げていた。


「……外さなきゃ」


 サクラは右腕に力を込める。


「っ……!」


 全身を痛みが走った。


 筋肉痛ではない。


 打撲とも違う。


 空手を続けてきたサクラは、身体が痛むことには慣れていた。


 合宿で限界まで身体を追い込んだ翌日。


 激しい組手のあと。


 拳を痛めた時の感覚。


 どれも知っている。


 だが、今の痛みはそのどれとも違った。


 身体中が、無理やり一度ばらばらにされ、別の形に組み直されたように軋んでいる。


 それ以上に気味が悪いのは、自分の身体なのに、どう動かせばいいのか分からないことだった。


 腕を引こうとすれば、別の場所まで引っ張られる。


 脚に力を入れているつもりなのに、感覚がわずかにずれる。


 自分が知っている身体の使い方が、通じない。


「何なのよ……これ……!」


 怖い。


 痛い。


 それでも、ここにいる方がもっと怖かった。


「外れろ……!」


 腕を引く。


 拘束具が軋んだ。


「……え?」


 サクラは思わず動きを止めた。


 今の音は何だ。


 恐る恐る、もう一度腕を引く。


 金属らしき固定具が、目の前ではっきりと歪んだ。


「そんな……」


 自分にこんな力があるはずがない。


 だが、今は考えている場合ではなかった。


「お願いだから……外れて!」


 思い切り腕を引く。


 大きな音とともに、拘束具が外れた。


「……!」


 壊した本人が、一番驚いていた。


 それでも手は止めない。


 反対の腕。


 両脚。


 一つずつ拘束を外していく。


 ようやく身体が自由になり、台から降りた瞬間だった。


「うっ……!」


 膝が折れた。


 床へ手をつき、辛うじて身体を支える。


「痛っ……」


 重い。


 自分の身体が、これまでよりずっと重くなったように感じる。


 それでも、サクラは立ち上がった。


 壁へ手をつきながら、出口を探す。


 何が起きているのか。


 ここがどこなのか。


 そんなことは後でいい。


 今はただ――。


 ここから逃げたかった。


     ◇


 どうやってそこから脱出したのか。


 後になって思い返しても、サクラにはよく分からなかった。


 何枚の扉を開けたのか。


 階段を上ったのか、下ったのか。


 どれだけ長い廊下を走ったのか。


 記憶に残っているのは、ひたすら逃げたことだけだった。


「はぁ……っ、はぁ……!」


 身体が重い。


 脚が思った位置へ出ない。


 腕を振るだけで、身体全体が引きずられるような違和感がある。


「何なのよ……私の身体……!」


 痛い。


 それなのに、走れてしまう。


 これほど全身が痛むなら、普段ならまともに動けるはずがない。


 なのに身体は、自分が思っている以上の力で前へ進んでいく。


 そのことが、痛み以上に怖かった。


 どれほど走ったのか。


 どこまで来たのか。


 もう分からない。


 ただ、いつの間にか建物は少なくなり、人の気配も消えていた。


 そこでようやく、サクラは足を止める。


「……ここまで来れば」


 大丈夫。


 そう続けようとしたが、最後まで言葉にならなかった。


 荒い呼吸を整えながら、近くの木へ手をつく。


「はぁ……」


 もう動きたくない。


 その場に座り込んでしまいたかった。


 それでも、誰かが追ってきていないか何度も周囲を確認する。


 誰もいない。


「……何だったのよ」


 呟いても、答える者はいなかった。


「何なの……あそこ……」


 少し先に、小さな池が見えた。


 木々に囲まれ、水面はほとんど揺れていない。


「……水」


 喉も渇いていた。


 サクラは重い身体を引きずるようにして、池へ近づく。


 縁まで来て。


 水面を覗き込んだ。


「…………」


 身体が止まった。


 そこに――何かがいた。


 サクラは反射的に振り返る。


 誰もいない。


「……え?」


 もう一度、水面を見る。


 怪物。


 そうとしか思えないものが映っていた。


 辛うじて人の形は残している。


 だが、人間ではない。


 虫を思わせる異様な身体。


 背中には、本来人間にあるはずのないものまで見える。


「……何?」


 サクラが一歩下がる。


 水面の怪物も、一歩下がった。


「…………」


 右腕を上げてみる。


 怪物も同じように腕を上げる。


 ゆっくり下ろす。


 向こうも下ろした。


「嘘……」


 自分の手を見る。


 知らない手だった。


 何度も拳を握った。


 何度も稽古した。


 紀人とも、数え切れないほど拳を交えた。


 ずっと使い続けてきた、自分の手。


 その面影が、どこにもない。


「…………」


 恐る恐る、水面へ視線を戻す。


 怪物はこちらを見ていた。


 いや。


 違う。


 見ているのではない。


 自分が見ているから、向こうも見ている。


「……これ」


 声が震えた。


 サクラは自分の身体を見下ろす。


 そして、もう一度水面を見る。


 そこにいた怪物も。


 同じように。


 自分の身体を見下ろしていた。


「これ……本当に私?」


※本作は、作者とChatGPT(AI)による合作作品です。物語の企画・原案・世界観・キャラクター設定・物語構成・展開の方向性など、作品の根幹となる部分は作者が制作しています。それらの原案や設定、作者との相談・修正・指示をもとに、ChatGPTが文章化、表現の調整、推敲などを担当しています。作者とAIが互いに案を出し、検討と修正を重ねながら、一つの物語として完成させています。

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