第3話「画面の向こうの作戦会議
『ビーストギア Another』
第三篇「メモリー予想スレを目撃する紀人」
第3話「画面の向こうの作戦会議」
【だったらさ――】
「…………」
紀人は、画面を見た。
【KIDって、強い生物のメモリー集めれば強くなるって単純な話じゃないんじゃね?】
「…………」
少し眉をひそめる。
「まあ……」
それくらいなら、自分でも分かっている。
【同じメモリーでも、入れる場所で変わるだろ】
「…………」
【コブラなんて頭なら毒使えそうなのに】
「使える」
【脚だと足消えた】
「そこ教材にするなよ……」
【つまりさ】
【動物そのものが強いかどうかより】
【その生物の、どの特徴を、どの部位に出すかの方が重要なんじゃね?】
「…………」
紀人の指が止まった。
◇
【ライオンだから強い】
【象だから強い】
【って考え方だと雑すぎる気がする】
「…………」
【先に「何がしたいか」を決めるべきじゃね?】
「何がしたいか……」
【速く動きたい】
【硬くなりたい】
【相手を捕まえたい】
【遠くを見たい】
【高く跳びたい】
【その目的に合う生物を選ぶ】
「…………」
紀人は顎に手を当てた。
今まで。
自分は。
「このメモリーを使ったら何ができる?」
そう考えることが多かった。
でも。
【逆なんだよ】
【必要な能力が先】
【その後に、生物を選ぶ】
「…………」
紀人は、小さく呟いた。
「……なるほど」
◇
【例えば速さ】
【チーター脚でいいじゃん】
「まあ、それは分かる」
【でも直線だけならな】
「…………」
【急に方向変えるなら別の生物の方が良くね?】
【オニヤンマみたいな機動力もある】
「…………」
紀人が、少し姿勢を正した。
【速い=全部同じじゃない】
【直線速度】
【加速】
【旋回】
【跳躍】
【空中機動】
【全部別】
「…………」
オニヤンマ。
鷲。
思い出す。
同じ「飛ぶ」でも。
感覚は。
全然違った。
「……確かに」
◇
【攻撃力も同じ】
【ゴリラ腕でぶん殴れば解決】
「強そうだけどな」
【でも相手を殺したくない時は?】
「…………」
【拘束したい時に、攻撃力高すぎても困るだろ】
「…………」
紀人の表情が、少し変わった。
【強い能力=いつでも正解じゃない】
【捕まえるなら拘束】
【逃げる相手なら追跡】
【硬い相手なら貫通】
【遠距離なら射程】
【周りに人いたら広範囲攻撃は使いにくい】
「…………」
紀人は黙って読み進めた。
怪人との戦い。
ただ倒せばいい。
それだけでは済まないこともある。
「…………」
さっきまでネット民にツッコミを入れていた口が。
止まっていた。
◇
【あと身体の場所ごとに役割分ければ?】
「……役割?」
【脚=移動】
【腕=攻撃】
【胴=防御】
【頭=索敵とか】
「…………」
【全部を一個の能力に寄せる必要ないだろ】
「…………」
紀人は自分の身体を見る。
脚。
腕。
胴。
頭。
【移動しながら】
【防御して】
【相手を見つけて】
【攻撃する】
「…………」
考えれば当たり前。
でも。
今まで。
そこまで役割を分けて考えたことはなかった。
「これ……」
紀人が、小さく呟く。
「組み合わせ次第で、かなり変わるな」
◇
【ただし】
「…………」
【メモリー交換、順番大事】
「…………またそれ言う?」
【ヒクイドリ腕で詰んだし】
「…………」
【先に操作できる能力確保した方がいい】
「コブラの尾……」
紀人が呟く。
【そうそう】
【手が使えなくなるなら、先に別の操作手段作る】
「…………」
自分が考えていたことと同じ。
違うのは。
画面の向こうの人間が。
実際にメモリーを使ったことなどないということ。
【逆にさ】
「…………」
【交換の順番そのものを戦術にできない?】
紀人の指が止まった。
◇
【最初から万能フォーム作る必要ないだろ】
「…………」
【接近用の構成】
【近づいたら攻撃用へ交換】
【危なくなったら防御用】
【追いかける時は追跡用】
「…………」
紀人は何度も書き込みを読む。
【戦闘中にフォームそのものを切り替える】
【メモリー交換=準備じゃなくて、戦術】
「…………」
一拍。
「……それ」
紀人の目が少し変わった。
「ありかも」
◇
【いや無理だろ】
「…………」
【戦闘中にそんな何回も交換してたら殴られる】
「…………」
【交換速度次第】
【KIDがどれくらい早く交換できるか分からん】
「…………」
【そもそも本人がそんな器用なことできるのか?】
「できるわ!」
思わず声が出た。
「…………」
すぐ止まる。
「…………まあ」
少し考える。
「どのくらいまでなら……」
紀人は実際の感覚を思い出す。
メモリーを抜く。
入れる。
変化する。
その間。
無防備になる瞬間。
「…………」
【交換中に攻撃されたら危ない】
「…………」
正しい。
【だから安全な瞬間を作る必要ある】
「…………」
【相手を吹き飛ばした直後とか】
【距離取った時】
【仲間に任せられる時】
「…………」
紀人は、もうツッコまなかった。
◇
【本人しか分からない部分多いよな】
「…………」
【交換の速さ】
【変身中の感覚】
【負担】
【どこまで同時に能力使えるか】
「…………」
そう。
そこは。
画面の向こうでは分からない。
紀人にしか分からない。
【だから俺らが考えても机上の空論かもしれん】
「…………」
【でも候補くらいにはなる】
「…………」
【KID本人が見てたら、使えそうなの選べばいいしなwww】
「…………」
紀人は、その書き込みをじっと見た。
◇
「……使えそうなの、か」
紀人は、もう一度上へ戻った。
【チーター脚】
「直線」
【オニヤンマ系】
「機動」
【カメ胴】
「防御」
【拘束に向いた生物】
「捕獲」
【遠距離攻撃できる生物】
「射程」
「…………」
さっきまで。
ただ面白いか。
格好いいか。
それだけで見ていた書き込み。
今は違って見える。
「これは……無理」
一つ。
「これは使えるかも」
次。
「これは俺の動きだと合わない」
次。
「これ……」
少し考える。
「試す価値あるな」
◇
何百。
何千。
書き込みがある。
当然。
ほとんどは適当。
【マンボウ頭最強説】
「それはない」
【キリン首フォーム希望】
「首じゃない」
【ナマケモノ全身】
「俺を休ませたいだけだろ」
くだらない案も。
山ほどある。
だが。
その中に。
【生物詳しい人いる?】
【いる】
【この動物ってこういう能力あるよな】
【厳密には――】
「…………」
紀人の目が止まった。
◇
【厳密には、その能力は――】
長い。
説明。
専門用語。
生物の身体の構造。
生息環境。
行動。
なぜ、その能力を持っているのか。
「…………」
紀人は読んでいく。
「…………難しいな」
少し眉を寄せる。
でも。
読む。
「…………」
ふと。
笑った。
「こういう話……」
一拍。
「ジン兄さん、好きだったな」
◇
虫取り。
動物園。
博物館。
何か聞けば。
長い説明。
途中から。
紀人には。
何を言っているのか分からなくなる。
『もっと簡単に!』
昔の自分。
「…………」
紀人はスマートフォンを見る。
専門的な。
長い書き込み。
「今なら……」
少し考える。
「昔よりは、分かるかな」
全部ではない。
でも。
昔より。
ずっと。
読める。
「…………」
紀人は、その書き込みを最初からもう一度読んだ。
◇
【だったらこの生物の能力を脚に使えば】
「…………」
【頭にはこっち】
「…………」
【ただ順番はこっち先】
「…………」
紀人はスマートフォンのメモを開いた。
一つ。
書く。
「…………」
もう一つ。
保存。
「これも」
次。
「…………これは」
少し考える。
「覚えとこう」
◇
最初。
このスレを見つけた時。
「俺のメモリーを勝手に予想するな」
そう思った。
コブラ脚で笑われた。
コブラ腕で黒歴史を掘り起こされた。
ヒクイドリで散々からかわれた。
「…………」
でも。
紀人は画面を見る。
知らない誰かが。
知らない誰かへ。
自分の知識を投げている。
生物。
格闘。
物理。
戦術。
ただの思いつき。
馬鹿みたいな案。
その全部が混ざっている。
「…………」
その中から。
使えるものを選ぶのは。
自分。
「…………なるほどな」
◇
【KID本人が見てたりしてな】
「…………」
紀人の指が止まる。
【もし見てたら、好きなの使ってくれwww】
「…………」
紀人は保存した書き込みを見る。
一つ。
二つ。
三つ。
「…………」
そして。
小さく笑った。
「…………もうしてるよ」
もちろん。
画面の向こうには聞こえない。
それでよかった。
◇
紀人はスマートフォンを置く。
「…………」
少しして。
また手に取った。
新しい書き込み。
【次は何考える?】
「…………」
紀人は。
今度は笑わなかった。
「好きに考えてくれ」
一拍。
「使えるのがあったら、俺が拾うから」
書き込まない。
ただ読む。
画面の向こうで。
勝手に始まった。
作戦会議を。
今度は。
紀人も。
少しだけ楽しみにしていた。
――第三篇「メモリー予想スレを目撃する紀人」完。
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※本作は、作者が物語のストーリー、世界観、キャラクター、設定、展開を考案し、AIとの対話を通じて文章の整理・推敲・執筆補助を行いながら制作しています。
物語の方向性、設定、展開、および最終的な内容の判断は作者自身が行っています。
本作では「人間とAIが協力して、一つの物語を作る」という創作の形にも取り組んでいます。
※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




