第2話「俺のメモリーを勝手に予想するな」
『ビーストギア Another』
第三篇「メモリー予想スレを目撃する紀人」
第2話「俺のメモリーを勝手に予想するな」
【次にKIDが使うメモリーを予想するスレ】
「…………」
紀人は、その文字をじっと見ていた。
閉じろ。
絶対に、ろくなことにならない。
ついさっき学んだばかりではないか。
ネットで自分の名前を検索すると。
傷つく。
「…………」
紀人は画面を閉じ――。
「…………」
なかった。
「見るだけだから」
開いた。
◇
【次のKIDメモリー何だと思う?】
【ライオン】
【王道だな】
【腕ライオンとか強そう】
【爪か?】
【ライオンなら頭じゃね?】
「…………」
紀人は顎に手を当てた。
「まあ……普通に格好良さそうだな」
【カブトムシ】
「それもいいな」
【腕に角とか?】
「腕に角……」
紀人は想像する。
腕から伸びる。
巨大な角。
敵の攻撃を受け止める。
そのまま。
持ち上げる。
「…………!!」
紀人の目が輝いた。
「ちょっと格好いいな!」
【だろ?】
「これ、普通に使えるんじゃ――」
「…………」
止まった。
「…………いや」
自分の腕を見る。
カブトムシを思い浮かべる。
角。
どこにある?
「…………」
頭。
「待て待て」
もう一度、自分の腕を見る。
「腕に角、生えないだろ」
【腕なら脚じゃね?】
「だよな!?」
【カブトムシの前脚】
「危なっ!」
【何が?】
「俺、完全に角が生えるつもりで考えてた!」
【KIDなら試してくれる】
「試さねえよ!」
【試してから「角ないじゃん!」って言いそう】
「…………」
紀人の脳裏に。
小さな翼が。
ぱたぱた。
「…………絶対試さない」
◇
【象】
「象」
【腕ならパワー出そう】
「それは分かる」
【鼻になるんじゃね?】
「…………」
紀人は自分の腕を見る。
「腕が鼻……?」
【便利そう】
「便利さでヒーローの腕を決めるな」
【物つかめるぞ】
「普通の手でもつかめるよ!」
【高いところも届く】
「…………」
紀人が止まる。
【ベルトにも届く】
「やめろ!!」
【ヒクイドリ腕より便利】
「比較対象にするな!!」
◇
【サイ頭】
「頭?」
【頭突き最強】
「これは普通に強そうだな」
【首、大丈夫?】
「…………」
紀人が止まった。
「それは……」
【KIDなら一回やる】
「やらねえよ」
【やってから首押さえそう】
「…………」
【『首いてえ!』って】
「やらねえって!」
【でもコブラ脚やったじゃん】
「関係ないだろ!」
【ヒクイドリ腕も】
「関係あるけど出すな!」
◇
まだ。
ここまでは。
まともだった。
【キリン脚】
「何で?」
【高くなる】
「何のために?」
【遠くが見える】
「戦闘に必要か?」
【高い棚に届く】
「だからヒーローの能力を生活の知恵に使うな!」
【ナマケモノ腕】
「何に使うんだよ」
【ゆっくり殴る】
「弱くなってるだろ!」
【カタツムリ脚】
「遅くなるだろ!!」
【マンボウ頭】
「俺に何させたいんだよ!!」
【見たい】
「お前が見たいだけじゃねえか!」
【ノミ頭いけたんだから大体いける】
「ノミを基準にするな!」
【KIDなら試してくれる】
「試さねえよ!」
【でもヒクイドリ腕は試した】
「…………」
【コブラ脚も】
「…………」
【ノミ頭も】
「…………」
【オニヤンマで遊んでたし】
「遊んでない!」
【遊んでた】
「性能確認!」
【めっちゃ楽しそうだった】
「…………」
一拍。
「それは今関係ないだろ!!」
◇
【じゃあ今までで一番面白かった組み合わせ】
【コブラ脚】
【コブラ脚】
【コブラ脚】
【コブラ脚】
「何でだよ!!」
【あれは強い】
「強くねえよ!」
【笑いに】
「そっちかよ!!」
【尻尾は!?】
「やめろ!」
【尻尾くらい出せよ!】
「やめろって!」
【立て!】
「無理だよ!」
【諦めるな!】
「足がねえんだよ!!」
【寝ろ!】
「最終的にそうしたよ!!」
「…………」
紀人は肩で息をした。
「…………」
誰にも。
聞こえていない。
「何で俺……」
一拍。
「ネット見て疲れてるんだよ……」
◇
【コブラって脚以外ならどうなるんだろ】
「…………」
紀人が止まった。
【頭なら毒牙?】
「まあ……」
ジンから聞いた話を思い出す。
コブラなら、頭突きで毒を使える。
種類によっては。
口から毒を飛ばすものもいる。
「…………」
想像した。
敵。
KID。
そして。
口から。
「…………」
一拍。
「格好悪いな」
【毒飛ばせたりしない?】
「できるかもしれないけど!」
【強そう】
「強いけど!」
【じゃあありじゃん】
「ヒーローが口から毒飛ばすの嫌だろ!」
【怪獣っぽくて格好いい】
「…………」
紀人が揺れた。
「…………怪獣」
【恐竜っぽいの好きならいけるだろ】
「…………」
さらに揺れた。
「いや!」
首を振る。
「それとこれは別!」
◇
【じゃあコブラ腕】
「…………」
止まった。
「…………」
コブラ。
腕。
「…………やめろ」
【腕が蛇みたいになるんじゃね?】
「腕ないんだよ!!」
【ムチみたいに使えそう】
「だから腕がないんだよ!!」
【伸びる腕で遠距離攻撃】
「伸びる腕がないんだよ!!」
【巻き付いて拘束とか】
「巻き付く腕がないんだよ!!」
【腕から毒出せたりして】
「だから腕がないんだよ!!」
【毒牙ついた腕で噛みつくとか?】
「腕が!!」
紀人は。
スマートフォンを指差した。
「ないんだよ!!」
【コブラの頭が手の位置に出るとか】
「出ない!」
【蛇の尻尾みたいな腕になる可能性】
「ならない!」
【何で言い切れるんだよwww】
「…………」
紀人が止まった。
「…………」
言えない。
実際に。
やったから。
とは。
絶対に。
言えない。
◇
【でもコブラ腕って普通に強そうだよな】
「…………」
【リーチ長そう】
「腕ない……」
【ムチとして使える】
「腕……ない……」
【拘束もできる】
「ないんだよ……」
【毒も使えそう】
「ない……」
【かなり当たりじゃね?】
「…………」
紀人の脳裏に。
あの日が蘇る。
メモリーを。
入れ間違えた。
腕を見る。
ない。
反対を見る。
ない。
「…………」
【KIDにも試してほしい】
「…………」
紀人は。
ゆっくり。
机へ。
突っ伏した。
「うわ~~~~…………」
思い出したくなかった。
完全なる。
黒歴史である。
◇
【でもKIDなら間違えて腕に入れたりしてwww】
「…………」
突っ伏したまま。
紀人の肩が止まった。
【ありそうwww】
【間違えて装填】
「…………」
【本人「あれ?」ってなりそう】
「…………」
【とりあえず自分の腕見る】
「…………」
【そして本人が一番びっくりするwww】
「…………」
紀人が。
ゆっくり。
顔を上げた。
「…………お前ら」
画面を見る。
「どっかで見てた?」
見ていない。
ただ。
恐ろしく。
当たっている。
【その後、何とかしようとして余計なことしそう】
「…………」
【KIDだし】
「…………」
【絶対やる】
「…………」
紀人は。
再び。
机へ。
突っ伏した。
「うわ~~~~~~…………」
◇
しばらくして。
紀人は。
ようやく復活した。
「…………もうコブラ腕の話は禁止」
誰にも。
伝わっていない。
【ヒクイドリ腕リベンジ】
「絶対やらねえ」
【今度は先にコブラ胴】
「…………」
【尻尾出してからヒクイドリ腕なら戻せる】
「…………」
【順番だけ間違えなければいけるだろ】
「…………」
【先にコブラな】
「分かってるよ!!」
【絶対先にコブラ】
「分かってるって!!」
【ヒクイドリから入れるなよ】
「もうやらねえよ!!」
【でも翼見たくなったら?】
「…………」
紀人は黙った。
【先にコブラ】
「…………はい」
ネット民に。
説教された。
◇
【ところでKIDって性能より見た目で選んでない?】
「選んでない!」
【ヒクイドリ頭】
「…………」
【めっちゃ鏡見てた】
「…………」
【恐竜みたいで格好いいもんな】
「そうなんだよ!」
即答。
「…………」
一拍。
「違う!」
【ノミ頭は露骨に嫌そうだった】
「…………」
【つまり見た目】
「違う!」
【ヒクイドリ頭また使ってほしい】
「…………」
【あれ格好いい】
「…………」
【恐竜ヒーローみたい】
「…………」
紀人の口元が。
緩む。
「…………まあ」
一拍。
「分かってるね」
弱かった。
◇
【次はカマキリ腕が見たい】
「…………」
紀人が止まる。
「カマキリ……」
腕。
鎌。
「…………」
想像する。
「それ、普通に格好いいな」
【ワニ頭】
「噛むのか?」
【絶対強い】
「強そう」
【チーター脚】
「速そうだな」
【ゴリラ腕】
「…………」
自分の腕を見る。
「それも強そう」
【カンガルー脚】
「蹴りか」
【シャコ腕】
「…………」
紀人の指が止まった。
【パンチやばそう】
「…………」
少し考える。
「確かに」
【シャコ腕+チーター脚とか?】
「…………」
紀人が黙る。
頭の中で。
組み合わせる。
速い脚。
強烈な腕。
「…………いや」
首を振る。
「何、真面目に考えてるんだ俺」
◇
だが。
一度考え始めると。
止まらない。
【カメ胴】
「防御か」
【ヤマアラシ胴】
「近づかれた時に使える?」
【カメレオン頭】
「視界?」
【擬態じゃね?】
「…………」
紀人の反応が。
少しずつ変わっていた。
最初は。
「俺のメモリーを勝手に予想するな」
だった。
それが。
「それはない」
「それは面白い」
「それ、使えるか?」
いつの間にか。
予想に参加していた。
書き込んではいない。
だが。
頭の中では。
完全に。
スレの住人だった。
◇
【本人ここ見てたりして】
「…………」
紀人が止まった。
【まさかwww】
【見てたら笑う】
【KIDさん見てるー?】
「…………」
紀人は。
ゆっくり。
スマートフォンから身体を離した。
「…………怖っ」
【じゃあ本人しか分からない問題出そうぜ】
「何でそうなるんだよ」
【KIDが一番気に入ってる頭部メモリーは?】
「ヒクイドリ」
即答。
【ヒクイドリ】
【ヒクイドリだろ】
【あれはヒクイドリ】
【鏡の見方が違った】
「…………」
紀人が固まる。
「何で全員分かるんだよ!」
【一番二度と使いたくなさそうなのは?】
【コブラ脚】
【コブラ脚】
【コブラ脚】
【満場一致でコブラ脚】
「…………」
紀人は。
反論しなかった。
「…………まあ」
一拍。
「それは正解」
◇
【じゃあ次、本気で予想しようぜ】
「…………?」
紀人の指が止まった。
【ネタじゃなくて、実戦で使えそうなやつ】
「…………」
空気が。
ほんの少し。
変わった。
【KIDって同じ動物でも入れる場所で能力変わるよな?】
「…………」
【だったら単純に強い動物を選ぶだけじゃ駄目じゃね?】
「…………」
【組み合わせも重要そう】
紀人は。
黙って画面を見る。
【あと順番】
「…………」
【ヒクイドリ腕の失敗見る限り、交換する順番も結構重要だと思う】
「…………」
さっきまで。
笑っていた。
さっきまで。
好き勝手なことを言うなと。
画面へ。
ツッコんでいた。
だが。
「…………」
紀人の表情から。
少しずつ。
笑いが消えた。
【だったらさ――】
次の書き込みを。
紀人は読む。
「…………」
もう。
ツッコミは出なかった。
代わりに。
小さく。
「…………それ」
一拍。
「ありかも」
呟いた。
――第三篇 第2話 了。
――――――――――
※本作は、作者が物語のストーリー、世界観、キャラクター、設定、展開を考案し、AIとの対話を通じて文章の整理・推敲・執筆補助を行いながら制作しています。
物語の方向性、設定、展開、および最終的な内容の判断は作者自身が行っています。
本作では「人間とAIが協力して、一つの物語を作る」という創作の形にも取り組んでいます。
※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




