↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビーストギア Another  作者:
モズキャッチャー編 2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/15

第4話「順番は大事」

『ビーストギア Another』


第二篇「メモリーを試す紀人」


第4話「順番は大事」


「…………よし」


 紀人は、ヒクイドリのメモリーを手に取った。


 頭に使えば、格好いい。


 脚に使えば、強い。


 なら。


「腕だったら……翼だよな?」


 自分の腕を見る。


「…………」


 鷲のメモリーでは飛べた。


 同じ鳥でも、ヒクイドリならどうなるのか。


「見たいな……」


 紀人は、メモリーを腕へ――。


「いや、待て」


 止まった。


「ちゃんと考えろ、俺」


 鳥の前肢は翼。


 つまり、腕そのものが翼になる可能性がある。


 そうなれば。


「手、なくなるんじゃないか?」


 紀人は自分の手を見る。


「…………」


 手がなくなったら。


 メモリーを抜けない。


「危なっ」


 気づいた。


 今回は、ちゃんと気づいた。


「よし」


 紀人は、もう一つのメモリーを取り出す。


 コブラ。


「お前だ」


 コブラには尾がある。


 しかも、器用に動かせる。


「先にコブラを胴」


 尾を出す。


「それからヒクイドリを腕」


 翼になって手が使えなくなっても。


「尻尾で抜けばいい」


「…………」


 紀人は頷いた。


「完璧」


 もう一度、確認する。


「コブラ」


「ヒクイドリ」


「戻す時は尻尾」


「よし」


 これなら大丈夫。


     ◇


 右手にコブラ。


 左手にヒクイドリ。


「まず、コブラを――」


「…………」


 左手を見る。


 ヒクイドリ。


「…………」


 翼。


 どんな形になるのだろう。


「いや」


 右手を見る。


「先にコブラ」


 左手。


「…………」


 翼。


 右手。


「順番」


 左手。


「…………」


 右。


「…………」


 左。


「…………」


 一拍。


「まあ」


 紀人は呟いた。


「見るだけなら」


 ヒクイドリのメモリーを腕へ装填した。


     ◇


「おおっ!」


 両腕が変化する。


 翼。


「やっぱり翼じゃん!」


 紀人は目を輝かせた。


 そして。


「…………」


 右を見る。


「…………」


 左を見る。


「…………」


 もう一度、右。


「…………小さっ!!」


 翼は出た。


 出たが。


 小さい。


「鷲の時と全然違うじゃん!」


 ぱた。


 ぱた。


「…………」


 ぱたぱた。


「いや」


 紀人は止まった。


「そもそもヒクイドリ、飛べないじゃん」


「…………」


 知っていた。


「何で翼見た瞬間、飛ぶこと考えたんだ俺」


 ぱた。


 ぱたぱた。


「…………」


 小さい。


「頭はあんなに格好いいのにな」


 ぱたぱた。


「…………」


 頭。


 格好いい。


 脚。


 強い。


 腕。


 ぱたぱた。


「…………微妙」


     ◇


「まあ、戻すか」


 紀人は、ヒクイドリのメモリーを抜こうとした。


「…………」


 翼を見る。


「…………」


 メモリーを見る。


「…………」


 ぱた。


「…………」


 もう一度。


 ぱたぱた。


「…………」


 一拍。


「小さっ!!」


 今さらである。


「いや待て!」


 紀人は翼をベルトへ伸ばした。


 ぱた。


「…………」


 届かない。


「もうちょい!」


 身体を曲げる。


 ぱたぱたぱた。


「んんんん……!」


「…………」


 届かない。


「そもそもベルトに届かないじゃん!!」


 もう一度。


 ぱたぱたぱた。


「伸びろ!」


 伸びない。


「伸びろって!」


 ぱたぱた。


「鳥だろ!」


 ヒクイドリである。


「翼だろ!」


 翼ではある。


「もうちょっと頑張れよ!」


 ぱたぱたぱた。


「…………」


 届かない。


「手がないとか以前の問題じゃん!」


 ぱた。


「飛べない!」


 ぱた。


「物もつかめない!」


 ぱた。


「ベルトにも届かない!」


「…………」


 紀人は翼を見た。


「何ができるんだよ!!」


 ヒクイドリに罪はない。


     ◇


「いや、大丈夫だ」


 紀人は思い出した。


「コブラ!」


 そう。


 そのためのコブラ。


 胴に入れる。


 尾を出す。


 尾でヒクイドリを抜く。


「ほら!」


 コブラのメモリーを見る。


「ちゃんとある!」


 あとは。


 これを胴へ。


「…………」


 紀人が止まった。


「…………」


 コブラ。


「…………」


 翼。


「…………」


 コブラ。


「…………」


 翼。


「…………」


 一拍。


「どうやって入れるんだよ」


「…………」


 先にコブラ。


 それからヒクイドリ。


 自分で決めた。


 確認までした。


「…………」


 なのに。


 ヒクイドリを先に入れた。


「…………」


 紀人の顔が引きつった。


「順番……」


 一拍。


「順番!!」


 紀人の絶叫が響いた。


「先にコブラだったあああ!!」


     ◇


「いや、まだだ!」


 口。


「口で抜けばいい!」


 身体を曲げる。


「んんんん……!」


 届かない。


「もうちょい!」


「ぐっ……!」


 無理。


「翼!」


 ぱたぱた。


「…………」


 届かない。


「だから短いんだよ!!」


 ぱたぱたぱた。


「伸びろ!」


 伸びない。


「頑張れ!」


 ぱたぱた。


「あとちょっと!」


 ぱたぱたぱた。


「…………」


「…………知ってた!」


 伸びるわけがない。


「くそ……」


 紀人は小さな翼を見る。


 コブラを脚に使った時は、足がなくなった。


 今度は、手がなくなった。


「…………」


 一拍。


「俺、身体の大切さを一個ずつ学んでない?」


 足。


 大事。


 手。


 大事。


「当たり前だろ……」


 自分で自分にツッコんだ。


「…………」


 だが。


 今回は足がある。


「歩ける!」


 なら。


「東さん!」


 探せばいい。


     ◇


 ぱた。


 ぱた。


 紀人は歩く。


 両腕は、小さな翼。


 ぱたぱた。


「…………」


 歩く。


 ぱた。


「…………」


 だんだん。


 恥ずかしくなってきた。


「誰にも見られませんように……」


 ぱたぱた。


「頼むから……」


 ぱた。


「誰も来るなよ……」


「紀人?」


「…………」


 来た。


     ◇


 ゆっくり振り返る。


 東。


「…………」


「…………」


 東の視線が。


 右の翼へ。


 左の翼へ。


 顔へ。


「…………」


「何してるの?」


「東さん!」


 紀人の顔が輝いた。


「助けてください!」


「今度は何したの?」


「説明する前に抜いてください!」


「これ?」


「それです!」


 東がヒクイドリのメモリーを抜いた。


 翼が消える。


 腕。


 手。


「…………!」


 紀人は両手を見る。


 握る。


 開く。


 もう一度、握る。


「手だ……!」


「…………」


「手がある……!」


「紀人」


「はい」


「あなた、身体の大切さを一部ずつ学習してるの?」


「それ俺もさっき思いました!」


「思ったのね……」


「はい……」


     ◇


「あと」


「はい?」


 東が紀人を見る。


「私が来た時、何であんな小さい翼で必死にベルト触ろうとしてたの?」


「…………」


 紀人が固まった。


「戻そうとしてたんです!」


「届いてなかったじゃない」


「それは俺が一番分かってます!」


「ずっと、ぱたぱたしてたけど」


「言わないでください!」


「『伸びろ!』って」


「そこから見てたんですか!?」


「見てた」


「…………」


「『鳥だろ!』とも言ってたわね」


「もうやめてください!」


「ヒクイドリに言っても伸びないでしょう」


「分かってますよ!」


「本当に?」


「今は!!」


「…………」


 東は、しばらく紀人を見た。


「で?」


「…………はい?」


「どうして、こうなったの?」


「…………」


 逃げられなかった。


     ◇


「ヒクイドリを腕に入れたら、手が使えなくなるかもしれないと思って」


「うん」


「だから、先にコブラを胴に入れて」


「うん」


「尻尾を出して」


「うん」


「それからヒクイドリを腕に入れれば」


「うん」


「手がなくなっても、尻尾でメモリーを抜けると思ったんです」


「…………」


 東は少し考えた。


「ちゃんと考えたのね」


「はい!」


「じゃあ」


「はい」


「何で尻尾がなかったの?」


「…………」


「コブラは?」


「…………入れてません」


「どうして?」


「…………」


「紀人?」


「翼を……」


「うん」


「早く見たくて……」


「…………」


「先にヒクイドリを入れました……」


「…………」


 東が目を閉じた。


「なるほど」


「…………」


「計画を立てた意味は?」


「…………ありませんでした」


「そうね」


     ◇


「いい?」


「はい」


 説教が始まった。


「手が使えなくなる可能性を考えた」


「はい」


「コブラの尾を使う対策も考えた」


「はい!」


「そこまでは進歩」


「ですよね!」


「まだ喜ばない!」


「はい!」


「何で自分で決めた順番を守らなかったの!」


「翼が!」


「うん!」


「早く見たかったです!」


「それで安全対策を全部すっ飛ばしたら意味ないでしょう!」


「はい!」


「メモリーは使う場所だけじゃないの!」


「はい!」


「交換する順番だって大事なの!」


「はい!」


「分かった!?」


「分かりました!」


「本当に!?」


「メモリー交換は順番が大事です!」


「そう!」


「先にコブラ!」


「そう!」


「それからヒクイドリ!」


「そう!」


「逆にしたら手がなくなって詰む!」


「そうだけど、もう少し一般化して覚えなさい!」


「はい!」


     ◇


 たっぷり。


 こってり。


 絞られた。


「…………」


「分かった?」


「分かりました……」


「じゃあ、今日分かったこと」


「はい」


 紀人は指を一本立てた。


「メモリーは、入れる場所が大事」


「うん」


 もう一本。


「交換する順番も大事」


「そう」


「あと」


「まだあるの?」


 紀人は、ヒクイドリのメモリーを見る。


 頭。


 格好いい。


 脚。


 強い。


 腕。


「…………」


 小さい。


 飛べない。


 つかめない。


 届かない。


「…………」


 紀人は深く頷いた。


「お前」


 一拍。


「頭と足だけにしとくわ」


「それ、今の反省と関係ある?」


「大事な実験結果です」


「…………」


「東さん?」


「もう好きにしなさい」


「はい」


     ◇


 こうして。


 紀人のメモリー実験は。


 一つの区切りを迎えた。


 使う場所は大事。


 組み合わせも大事。


 そして。


 順番も大事。


「…………」


 紀人は、自分の両手を見る。


「順番な……」


 今度こそ。


 覚えた。


 たぶん。


 きっと。


「…………」


 今回の失敗は。


 かなり恥ずかしかった。


 特に。


「伸びろ!」


 と、小さな翼をぱたぱたさせていたところを。


 東に見られた。


「…………忘れよう」


 紀人は決めた。


 東に見られただけ。


 他には誰も知らない。


 なら。


 今日さえ終われば。


 この恥ずかしさも。


 終わる。


 そう。


 紀人は。


 信じていた。


 この時は。


 まだ。


 この程度の恥ずかしさなど。


 可愛いものだったと。


 思い知ることになる。


 最大の悲劇が。


 刻一刻と――。


 近づいていた。


――第二篇「メモリーを試す紀人」完。


――――――――――


※本作は、作者が物語のストーリー、世界観、キャラクター、設定、展開を考案し、AIとの対話を通じて文章の整理・推敲・執筆補助を行いながら制作しています。


物語の方向性、設定、展開、および最終的な内容の判断は作者自身が行っています。


本作では「人間とAIが協力して、一つの物語を作る」という創作の形にも取り組んでいます。


※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。