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デート 戦いの準備は続く

水族館までにはちょっぴり距離があった。手をつなぎながら、道の途中にあった商店街を眺める。腐った死体が落ちていてもおかしくないが、見かけない。そういえば、大型ショッピングモールの時も、死体を見かけなかった。

「死体がないのはなんでだろう?」

「急にどうした?」

「いや、疑問に思って・・・。」

「鬼が食べてるんじゃないか?」

鬼が食べている。そうなのかもしれないと思った。

「鬼の死骸もないよね。」

「鬼の死骸に関しては、しばらくすると溶け消えるからな。」

初めて知った。街は驚くほどきれいだ。この商店街も、人さえいればいつでも再開できるように見えるほどに。人だけがいなくなった、抜け殻のようであった。

「いつかまたここに人が並ぶ時が来るのかな?」

「頑張りによってはあるかもな。」

水族館。入口は開いていた。いくつもの円柱のポールに水が詰まっている。クリオネやクラゲが沈んでいる。大きな水槽は青い水が溜まっているだけで、魚は泳いではいなかった。水底に死骸がたまっている。普段は幻想的な空間が、棺桶へと変わっていた。ジンベイザメが水底を漂う。ペンギン広場は酷い匂いだった。匂いに耐えかねて足早に去った。イルカショー用の広いプールはぽつんと寂しく水が溜まっているだけだった。音響兵器による死が、ここにも訪れたことを表していた。イルカショー用の座席で夕食を食べた。普段のおいしい食事と違って、味がわからなかった。最後に、水槽のアーチをくぐる。魚は泳いでいないが、暗いせいで幻想的に見える。セイが足を止めて、僕の頭を優しくなでる。そういう雰囲気にもっていきたいんだろうが、僕の気分は乗らなかった。

「・・・この場所が元の姿を取り戻すのにいく年かかるんだろうか。」

「しばらくは厳しいとだけ。さっきから感傷に浸ってるね。」

「外がこんな有様じゃあね。」

「動物園の方がよかった?」

「もっときついだろ。匂いとか、ペンギンの非じゃないぐらいだろ。」

「次は遊園地にしよう。観覧車とかの方が記念っぽいし。」

「動かし方がわかればね。」

セイが頬にキスをする。結局いつもと変わらない。帰り道、売店があった。セイが、ジンベイザメの人形を選んで、レジに勝手に通す。

「プレゼント。」

ハイと手渡される。水底に漂っていたジンベイザメが思い起こされる。受け取って、抱きしめる。本物を今抱いたら、きっとボロボロに崩れてしまうに違いない。

「ありがとう。」

なんだかんだ言って、気分転換にはなった。巨人を倒した俺は、ひそかに世界を取り戻したいと思った。夕暮れ時、来た時とは違うルートを通って帰る。学校が見えた。小学校。

「少し寄って行かない?」

「いいよ。」

小学校の雲梯は低い。小さいときはあんなに高かったのになー。

「どんな子供だった?」

「いつも逆上がりの練習してた。俺だけ出来なくて。」

意外。

「出来るようになった?」

「この通り。」

セイが鉄棒で逆上がりして見せる。僕は感心の声を漏らす。

「そろそろ帰らないとね。」

僕は頷く。デートは、シェルターの入り口に着いて終わった。


入口から広場に入ると見たことない人がいた。大人。白衣を着ているが、医者先生ではない。会ったことがあるからわかる。その人は、壁に立てかけられた大型の剣を見て、うんうん唸っていた。首をかしげていると、ケイトが来た。

「デート、どうだった?」

「ああ、うん。あんまり。そっちは何してたの?」

「招集があって、B地区の自衛隊跡地に、BチームとCチームと共に、資源の回収に行ってた。見たことないものがいっぱいあったよ。いくつかいいものをもらったから、次の作戦で使えるかも。」

自衛隊跡地。そばは通らなかったな。巨人の居座ってたところだよな。

「あの人は?」

「先生の事?研究者の人よ。兵器の研究をしてて、そもそもあの人たっての希望で資源回収の話が立ったの。今は、剣とかの武器に対鬼用の装置がつけられないか、試行錯誤しているらしいの。」

兵器の研究者。そんな人がいたとは。この分なら、鬼を倒すのに苦労する日も遠くなかったりするのかな。セイが少し不満そうに僕の肩を叩く。

「次のデートはもっといいものだから。部屋に帰ろう。」

頷く。ケイトと別れて、部屋に着くと、ソファに座り込んだ。

「先遣隊は次の地区に行ったのかな?」

「多分。次はD地区に行くみたいだ。」

「D?Cじゃなくて?Cの方が近いのに?」

「奴がいるから避けたんだろう。」

「奴って?」

「・・・。」

セイがヤバいって顔をして黙る。

「Cには何かもっとヤバいのがいるのか?」

問い詰める。セイが唇に手を当てる。

「まだ内緒だぜ。二本角がいる。」

「二本角?鬼の角が二本ってこと?」

セイが頷く。たった角が一本増えただけでどうと言うんだろう。

「そんなにヤバいのか?」

セイが再び黙る。

「そんなことより、風呂入って寝ようぜ。」

ごまかされた。疑問に思いつつも、風呂に入り、彼の腕の中で寝る。


ツミは先生の持ってきた小型の音響兵器を手の中で弄っていた。

「これ一つで何が変わる?」

「鬼を怯ませることが可能だと思うけど、そのままだと人体にも影響あるだろうね。軽減装置は作っているがね。実用化にはまだかかりそうだ。」

ツミは音響兵器をじっと見つめた。顔をあげる。

「他には?」

「破片手榴弾が大量に手に入ったよ。それと銃器。アサルトライフルだね。弾丸はかなりあるから、実践投入できる。」

「鬼は基本、頭を切り落とすか、潰すかしないと動くようだからな。銃器は補助的な導入になるだろう。やはり後方支援部隊のメインウェポンだろうな。」

「手榴弾は、当たり所さえよければ、一発で行けるはず。」

「使い方を訓練しなければだな。D地区に行かせるのは、早くても一週間後だな。他の兵器はどうだ?」

「研究中の高周波ブレードが見つかった。かなり大型の剣で、使いこなせるものがいるかどうか。巨人は堅かったと聞いたから、そういう鬼に対しても有効だろう。」

「セイは・・・斧でいいというだろうな。となると、討伐隊の子に適性検査を実地しよう。音響兵器付き武器の調子はどうだ。」

「順調ではあるよ。もう少し時間と資源をくれるなら実用化に向けていけると思う。」

「わかった。必要なものがあったら、書類で提出してくれ。目を優先的に通しておくよ。」

「出来れば、口頭がいいんだけど・・・。」

「書類で。記録も残しておかねばならないからな。子供たちにもそろそろ書類の作成方法を教えなくてはな。」

「それじゃ、そろそろ研究室に戻るよ。」

「ご苦労。必要があったらまた呼ぼう。」

ツミは立ち上がり、コーヒーを入れる。睡眠時間は取れているとはいえ短い。完全なカフェイン中毒。それでも国民の安全と引き換えたら安いものだ。上級国民の皆様方には、今のところ影響少なく、安全に過ごしてもらえている。彼らが生き残りさえすれば、国家の運営は時間がかかっても、回していけるだろう。上級区画は、一般区画とは厚い扉で仕切られている。子供たちとは接触はない。そのおかげで、上級国民は穏やかそのものだ。彼らからクレームが来ようものなら業務が止まる。社会回復はその分遠のく。ツミは深呼吸した。深呼吸は精神の安定にいいとされる。

「隊長と今後の日程を話し合わなくては。」


翌朝。館内放送で目が覚めた。

「繰り返します。討伐隊には、一週間訓練期間を設けます。朝食後、速やかに訓練所に集まりください。」

放送が終わる。セイが頭をなでてくる。

「さぼっちゃおうぜ。あーあ。まだ寝てたい。」

僕はセイの腕をするりと抜けて、扉に手をかける。

「はいはい。行きますよ。」

食堂に着くと、隊長が食事をとっていた。討伐隊らしき子が積極的に質問していた。それが見える位置に席を取る。

「より強い鬼がいる可能性はありますか?」

「・・・作戦が決まり次第報告されるだろう。」

隊長は言葉を濁していた。昨日聞いた二本角が思い出される。聞きたい衝動に駆られるが、ぐっと我慢する。事実だったら、怖い。

「訓練の内容はなんですか?」

「昨日確保した兵器を使った訓練だ。」

どんなものを確保したんだろう?想像する。自衛隊跡地にあるようなものだ。爆弾、戦車とか?それから秘密の兵器。はファンタジーの読みすぎか。ちょっぴりとわくわくしながら、食堂を後にする。

訓練室。討伐隊の面々が集まっていた。ケイトの隣に立つ。

「まずは、高周波ブレードの適性検査をする。順番に呼ぶので、それまでの間、人形を使った訓練をしておくように。」

高周波ブレード。かっこいい!それらしくなってきた。見ると隊長が、大型の剣をまずはケイトに手渡す。昨日見たやつだ。僕は訓練人形の前に行って剣を振る訓練をしながら、横目に高周波ブレードの適性検査をする様子を眺めた。ケイトがよたよたしながら、肩に大剣を担ぐ。重そうだ。人形に向かって大剣を振り下ろす。スパッと人形の腕が取れる。大剣に体を持ってかれている。扱い方を間違えると危なそうだ。ケイトが戻り際、僕に向かって

「だいぶ難しいよ。」

と声をかけた。続いて、ヒナタが呼ばれる。ヒナタはそもそも大剣をろくに担ぐことすらできなかった。すぐに僕が呼ばれる。

「まずは肩に担いで見せろ。」

肩当を付けさせられ、目の前に大剣が差し出される。柄の部分を握る。持ち上げてみると重い。これで戦闘をこなすのは困難に思えた。大剣を扱えるという密かな期待は非現実に変わる。これを鬼に向かって振るってみたかった。とりあえず、肩まで担げた。

「体はそのままで、人形の腕にまずは当ててみろ。」

右腕に向かって振り下ろす。体がもってかれる。同じ位置に立っていられない。右腕が一瞬で飛ぶ様は気持ちのいいものだが、扱いが難しすぎる。隊長が、

「以上だ。次のものを呼ぶ。」

そう言って大剣を受け取った。僕はとぼとぼ先ほどまでいた訓練人形の前に戻った。それから次々と、大剣を担いでバランスを崩す者、そもそも大剣を担げない者、担げたはいいが、振り下ろすときにもっていかれる者と、大剣に敗れていくもののオンパレードだった。その中に、体躯の大き目な子。筋肉がよくついていて身長百九十センチぐらいの大人と見紛う子が、軽々大剣を担いで見せる。その子は、重心がぶれたりすることもなく人形の腕を叩き切って見せる。

「次は反対の腕。」

反対の腕がスッパっと切れる。

「最後に頭。」

頭をかち割る。人形の破片がここまで飛んできた。

「よし、合格。戻れ。」

見ていた子たちから感嘆の声が漏れる。その子は嬉しそうに、訓練人形の前に戻る。高周波ブレードが一通りの子に握られて、隊長が一人の名を呼ぶ。

「Bチーム、コウイチ。これは君のものだ」

「はい!」

コウイチと呼ばれた少年が大剣を受け取る。

「今日の訓練からこれを使うように。では、続いて手榴弾の使い方をレクチャーする。集合!」

皆が隊長の元へ集まる。隊長が籠を引っ張って来る。中には金属のボールが入っていた。

「まず使い方だが、安全ピンを抜き、二十メートルほどの地点に投げ、その場に伏せる。使ってもらうのは、破片手榴弾と呼ばれるものだ。致死範囲は五メートル。負傷範囲は十五から二十メートル。鬼に向かって投げて使う予定だ。ちなみに伏せるのは、破片が上に向かって飛び散るためだ。遮蔽物に隠れてもいい。まずは投げることに慣れてもらう。床に用意されたテープを目安にここから投げてみろ。このボールは手榴弾を模したものだ。実践では防弾ベストを配る。多少はリスクが抑えられるだろう。では始め!」

籠の中に入ったボールを手に取る。見た目と違って意外に軽い方だ。テープを目安に投げる。二十メートルの地点。すぐに伏せてみる。

「そうだ。伏せる癖を忘れないようにな。」

この分なら使いこなすのに苦労はしなさそうだ。ヒナタを見てみる。ヒナタは投げるのに苦戦していた。五メートルほどの地点で落とす。伏せるのも遅い。ケイトは見事に二十メートルを超えていた。壁に激突させるほど。逆に距離が測りづらいだろう。首をかしげて僕に聞いて来る。

「力みすぎなのかな?」

「そうだと思う。もっと力を抜いていいんじゃないかな。」

僕がもう一度ボールを投げる。すぐさま伏せる。二十メートルの地点。ほぼピッタリ。実践級だと、我ながらほれぼれする。しばらくボールを投げては伏せる工程を繰り返し、隊長が声をあげる。

「そのくらいでいいだろう。各々課題が見えてきたところで、銃の扱いと行こうじゃないか。アサルトライフルを配る。」

手元にずっしりとアサルトライフルが乗っかる。

「使い方だが、まず安全装置を外す。」

隊長が実戦形式で見せる。

「サイトを覗くときは両目で。脇を締めて銃をしっかりと体に引き付ける。グリップは銃身に近い、高い位置を握る。引き金を人形の頭に向かって引く。」

人形の頭に穴が開く。

「さあ、実践だ。弾丸はすでに入っている。」

人形に向けて、銃を向ける。安全装置を外して、言われた通りに撃ってみる。意外と難しい。反動で、頭からそれてしまう。

「数をこなせ。後は慣れだ。」

銃撃音が、訓練場に響き渡る。耳が少し痛いぐらいだ。

「よし、撃ち切ったな。リロードの仕方を教える。マガジンを受け取れ。」

マガジンを手にする。

「空のマガジンを外し、捨てる。新しいマガジンを装填する。チャージングハンドルを引いてボルトを前進させろ。それでもう撃てる。人形に向かって数発撃ってみろ。」

人形の頭に向かって数発撃つ。ブレを抑えて撃てた。だいぶ慣れてきている。

「今のがエマージェンシーリロード。次は、タクティカルリロード。残弾がある場合のリロードだ。マガジンを受け取れ。古いマガジンを外し、新しいマガジンを装填する。それだけでオーケイだ。古いマガジンはポーチなどにしまっておけ。扱いに気を付けろ。」

スムーズにリロードする。

「よし、では剣や斧などの武器の訓練に戻れ。さっき習ったことは忘れるなよ。そして銃はあくまでサブウェポン。これで楽に、鬼を倒せると思うな。剣や斧などの訓練を怠らず、いつでも急所を狙えるようにしておけ。質問があれば受け付ける。」

ヒナタが手をあげる。

「手榴弾は使った方がいいのでしょうか?うまく使える気がしません。」

「使えるようにするだけしとけ。何が役立つかはわからんからな。心配なら、訓練終了後に追加訓練の申請をしろ。しかし、やりすぎないように。休息も大事だからな。この訓練が終わったら、資料の書き方を教える。鬼討伐の報告書をかけるようになってもらう。」

訓練は昼すぎまで続いた。今日は昼抜きなのかと思っていると、訓練室に食事が運ばれてくる。おにぎりだ。

「この一週間の間だけ、訓練室で食べろ。時間がもったいないからな。」

セイも一緒にやってきた。おにぎりを片手にもって、僕の隣に座る。

「やあ、お昼を食べに来たよ。」

「何をやってたの?」

「B地区で、バスの回収をやってた。D地区はちょっきし遠いからね。」

米をほっぺに付けている。取ってやってそれを食べる。

「ついてたぞ。」

いきなりやったからか、セイの頬が赤くなる。

「あ、ありがとう。」

意外とウブな反応もするんだな。食事が終わると、机と椅子が置いてある、多目的ホールに案内された。資料作成の方法を教わる。

「セイ!ついでにここ最近の未提出の報告書をまとめておけ。」

「えー。めんどくさい。」

「ちゃんとしておけば、次の外出許可はスムーズに出してやれる。」

セイが張り切って資料作成に励む。書類ができて午後が終わった。部屋に戻り、風呂に入り、彼の腕の中で眠る。朝起きて訓練に出る。それが一週間繰り返された。


朝。館内放送で目覚める。

「今日は作戦会議です。朝食を済ませ次第、多目的ホールに集合してください。」

セイをゆすり起こす。

「朝だぞ。」

「んー。目覚めのキスがないと起きれない。」

自分の顔が赤くなったのがわかった。まだそういうことをするのは慣れない。

「馬鹿言ってないで、俺は先に行くからな。」

朝食を済まし、多目的ホール。一週間前、鬼退治の報告書を作成した部屋だ。

「次の作戦場所はD地区だ。」

隊長が告げる。セイに聞いた通りだ。しかし、聞いていなかった人々から疑問が出る。

「C地区ではないんですか?」

「上層部での話し合いの結果、D地区を優先することにした。異論は受け付けない。バスを用意させたから、D地区までにそれで移動する。」

「巨人のような特異個体はいるのですか?」

ケイトが質問する。

「確認されていない。通常の動くタイプと動かないタイプだけだ。」

「C地区には、特異個体がいるのですね。」

ケイトの鋭い質問。

「C地区の掃討作戦の時にC地区のことは話し合おう。」

隊長が濁す。

「今回、集まってもらったのは、掃討作戦をより効率的にするために各チームで連携を取ってもらいたいからだ。トランシーバーを各チームに一つ配る。」

トランシーバーをケイトが受け取る。各チームが受け取る。

「わかっているだろうが、現在七チームが討伐隊として生き残っている。これ以上数を減らすわけにはいかないから、トランシーバーを使って、鬼の情報を共有しつつ、連携した戦闘が取れるようになってほしい。」

「連携した戦闘とは、主にどのように?」

「役割の分担だ。鬼を引き付けるものと、叩くものをチームでやってもらう。今回は、ABとCFとGIKで組んでもらう。」

Bチームの方を見る。Bチームもこちら側を見ていた。

「君たちに引き付け役をやってもらいたいな。こっちには高周波ブレードもあるし、逃すことはないだろう。」

よく似た兄妹の男の方がそう言った。

「いいアイデアね、お兄ちゃん。」

妹の方が賛同する。

「別に構わないよ。・・・いいよね、二人とも。」

ケイトの一声に、僕とヒナタが頷く。

会議が終わると、今日は休憩日になった。兄妹に話しかけてみる。

「僕はユキ。そっちは?」

「僕はソウ。こっちは双子の妹のヨウ。そこのデカい彼がコウイチで、そこで縮こまってるのがヒメコ。」

「あたしは、ケイト。その子がヒナタ。」

ケイトも僕に合わせて自己紹介をする。ヒナタが頭を下げる。

「銃も使う?」

「そうだな。君たちが引き付ける時に使って、僕らは安全の観点から、近接武器でいくよ。」

「わかった。動かないのには手榴弾でいいわよね。」

「見つけ次第、チームの代表が投げればいいよ。それじゃ、僕らはこれで。」

「また明日よろしく。」

Bチームが去って行く。

「いけ好かないやつ。」

ケイトがソウの背中にぽつりとつぶやいた。

「かっこいい子だったけど。」

ヒナタは顔を赤くしている。好みのタイプらしい。

「あんなのだめよ。どうせあの兄妹で乳繰り合ってるわよ。」

「兄妹なのに?」

僕が驚いて声をあげる。

「あの妹、兄に色目使ってたもの。」

理解できない世界だ。

「手榴弾は、ユキが使って。投げるの一番うまかったでしょ。」

「わかった。」

「じゃあ、解散しましょ。ヒナタ、あなたから借りた本なんだけど・・・。」

ケイトとヒナタが一緒に部屋を出る。僕は、間をおいて部屋を出る。D地区の作戦は近づいていた。

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