決意 新しい風が吹く
E都市最後の鬼は、毒を扱った。その毒は、じわじわと討伐隊の動きに制約を付け、自由を奪っていった。なかなか踏み込めず、もどかしい思いをする。そこにユキが切り込んでいった。毒の熱で目の前が二重になる。それでも、無理をして突っ込むとあっさりと鬼の腕が取れた。それを見たセイが背後からの不意打ちで鬼の首を取った。バタバタと人が倒れた。しかし、辛勝である。急いで病室に運ばれる。
三番シェルターでは、鬼の検査が行われていた。音響兵器を用いた検査で目の反応を見ていた。そのうち数名が引っ掛かり、捕縛された。一般の子供三人と、上級市民一人。彼らは人間として抵抗する。討伐から戻ってきて、報告を受けたユキたちはショックを受けた。アオイのこともあった。シェルターには多くの鬼が混じっていた。そんな時、シャロ嬢が目を覚ました。彼女は上級区画に戻される。そんな時、シャロは懇願した。討伐隊に入れてほしいと。隊長が説得するが、シャロは首を振らない。そこで管理人が
「捕えていた鬼共を殺せますか?」
そう聞いた。シャロ嬢は、
「やれます。」
とだけ言った。動けない無抵抗の鬼たちが懇願する。
「助けて!無関係なんです。」
シャロ嬢はその言葉に迷った。しかし、決意は固かった。彼らの首を刈ったのだ。討伐隊Aチームにシャロが加わった日だった。シャロは訓練に積極的に参加した。
「どうして討伐隊なんかに参加したの?」
ケイトは聞いた。
「このままじゃいけないと思ったからですわ。」
シャロはそう答えた。
「ケイトはユキのことが好きですの?」
ケイトは戸惑う。
「ユキって弟みたいよね。」
F都市には、シェルターが二つある。七番シェルターとは、連絡つかず、六番シェルターとはつながった。町にある監視カメラの制御権を受け取る。三本角がテーマパークの城に鎮座しているのが確認できた。人々が集められ、虐待されていた。三本角が、一人の腕をつぶし、そこから出た血で渇きを満たす。その場には、七番シェルターの管理人も確認できた。そこに連れてこられた人々が、七番シェルターの人々であると確信する。人質だ。それでも管理人は決断を下す。
「F都市のテーマパークにいる鬼を掃討する。」
その夜セイとユキは、いい感じになっていた。
「毒も抜けたね。」
「ああ、調子いいよ。」
「最後になるかな。」
「たぶんな。」
「ねえ、セイ。今なら好きにしていいよ。」
「好きって?」
「・・・今日を特別な一夜にしてもいい。」
「言ったな!」
「言いましたとも。ねえ、セイ。」
「愛してる。」
「先に言われちゃった。僕も愛してる。」
訓練室の前。ケイトはユキを待って声をかけた。
「最後にならないかな?」
「三本角さえ倒せば、残りの鬼は軽いかもね。ユキ。」
「ん?」
「これからも・・・ううん。何でもない。」
「僕らは戦友だ。何でも言ってくれ。」
「ありがとう。」
ケイトは、管理人に申請して、妹に会いに行った。上級区画。妹は機械につながれながらもそこにいた。優秀な妹。一度見聞きしたことは忘れない。鬼退治をしていること、ユキを好きになったこと、思いを伝えられなかったこと、これから三本角を倒しに行くこと。それらを、ショッキングな出来事は避けて伝える。
「お姉ちゃんは生きて帰ってこれるよね。」
その問いに頷いた。部屋を出たケイトは、セイと出くわす。こっそり話を聞いていたらしい。
「夢を見たんだ。」
「どんな?」
「・・・君が死ぬ夢。」
「・・・そっか。嘘ついちゃったあたし。」
ケイトは笑った。
「ユキは無事なの?」
「ああ。」
「それならいい。」
三本角討伐の時が近づいていた。ヘリコプターで、テーマパーク内に入る。城の前で、七番シェルターの人々が助けを求めていた。一本角の鬼がいた。
「投降しろ。」
「嫌だ。」
目の前で鬼が、一人を裂き殺した。それをユキは切り捨て、進む。後ろから悲鳴が聞こえてくる。助けを呼ぶ声。しかし、ユキたちには無視するほかない。
玉座前。三本角が目を見開いた。
「人間の方がよっぽど残酷だ。兵器を使い人を殺し、今も人々を見捨てた。仲間すら殺したのだろう。」
「アオイを送り込んだのはお前か。」
「立派に仲間を演じてたろ。血に濡れたお前たちに居場所などない!」
ケイトには、中型音響兵器が一つ託されていた。周りに雑兵が湧く。それを他のチームに任せ、ユキは三本角に突っ込んだ。三本角の攻撃に、ユキの片腕が飛んだ。頭に刀を振り下ろされそうになった瞬間、音響兵器が起動する。強力な音の波。近すぎたユキとケイトは鼻血を出す。大きな隙ができる。シャロが銃撃で援護する。ユキが正面から、セイが後ろから攻撃を加える。三本角は崩れた。
「ただでは死なぬ。」
ケイトに向かって渾身の衝撃波を放つ。ケイトの体が飛ばされ破裂する。命を削った衝撃波。ユキが叫び、ケイトを受け止める。ケイトは息も絶え絶えだ。
「妹を・・・守って。」
セイが三本角の腕を叩き壊し、三本角の角を剥ぐ。掲げて、
「終わった!」
と叫ぶ。シャロが死体を確認する。
(死んでいる。でも・・・。)
あたりを見回すが、誰もいない。シェルターに帰還する。管理人と隊長、先生が出迎えた。
「鬼と話し合って、シェルターを片付けることにした。」
その報告で、町での暮らしがやっと手に入るとみんなで喜んだ。
「ケイトの妹に会わせてもらえませんか?」
ユキは管理人と交渉した。許可が出て、上級区画にある妹の部屋へ赴く。彼女は、静かに祈りをささげていた。
「ケイトは・・・。」
「わかります。」
「・・・最後まで守られたよ。今度は僕が君を守るよ。何かあったら伝えてほしい。」
「お姉ちゃんはあなたのことが好きだった。」
突然の告白に、ユキは戸惑った。
「あなたを守れたことが、きっと誇りだと思うんです。」
「そうか。」
色んな人に命を守られている。ユキは静かに目をつぶった。




