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奪還 取り戻されていくもの

国会議事堂に着くと、討伐隊は、国会議事堂を守るように散らばっている鬼たちを次々に倒していった。一番シェルターの扉は開いていた。侵入して、ソウコを探すセイ。ケイトが後に続く。ソウコは居た。ユキが隣にいる。ソウコはユキの唇を奪った。濃厚なキス。時間が止まったようであった。セイがいら立ちに斧で地面を抉った。ギシャっという音を立て、床に穴が開く。

「ユキ、今助ける!」

ソウコがセイに向かって息を吹きかけた。すると、セイの足元に氷ができる。完全に足が凍った。しかし、怒りを味方につけたセイを止めるほどではない。足元に斧を突き立て、強引に氷を砕く。ケイトが隙を見て音響兵器を投げる。一個目。セイがソウコとの間合いを一気に詰める。二個目。セイが斧を振り下ろす。氷を吹いてガードするが、間に合わない。

「愛していたわ。一番はあなたよ。」

ソウコはそう言い残し、頭をつぶされた。続いてセイが、首を飛ばす。

皮を剥ぎ取り、めった刺しにし、二本角を剥いだ。ユキがセイに駆け寄る。

「今の僕にとって、一番はセイだ。」

ユキが抱き着いて来るのを嬉しそうに受け止めるセイ。それをケイトはただ見ていた。一番シェルターをあっさり奪還して、帰還する。


ツミが目を覚ます。病室で彼はため息をついた。三本角が現れたのは、予想の範囲内ではあったが、まだ裏がありそうであると、疲れを感じていた。隊長が病室に入って来る。

「目、覚めたか。」

「今はどうしてる?」

「ユキが連れ去られたからな。一番シェルターの奪還と合わせて作戦を決行している。」

「帰ってこれそうか?」

「監視カメラを見ていたが大丈夫そうだ。」

「そうか。終わったら、討伐隊を集めてくれ。」

「わかった。」

ツミは再び目を閉じた。

討伐隊が帰って来ると、管理室に呼ばれた。管理人は全員が揃っているのを確認すると、口を開く。

「三本角を我々はどうにかしないといけない。今まで以上に厳しい戦いになるだろう。・・・私としては、まだ裏があるような気がするのだ。気を付けて事に当たるように。」

裏がある。何も言いたがらない大人が、それを伝えてきたのは、ユキにとって意外だった。ユキはそのことを頭に強く留め、部屋へと戻った。

その後のA都市奪還は、スムーズに行われた。巨人がいたくらいで、二本角がいなかったためである。


E都市。シャロ嬢は銀姫に連れられ、鬼のコミュニティのあるビルに来ていた。

「ここに仲間の鬼さんたちがいらっしゃる?」

「そうじゃ。少し血を分けてもらうだけでいい。」

「お役に立てるのなら構いませんわ。」

二人は、ビルの中に入った。二本角が複数いた。眷属の一本角たちも大勢いる。二本角の一人が銀姫に話しかける。

「無事だったか。そいつは?」

「人間じゃ。協力してくれる。少し血をもらうぞ。」

「ええ。」

銀姫が爪を立てるとシャロ嬢の腕から血が出た。二本角の一人が、血をなめた。

「よし、いいぞ。」

銀姫が手を離す。シャロ嬢は腕をさすった。血はすぐに止まった。

「何を話し合いますの?」

「人間との共闘について。」


ユキたちは、D都市の奪還作戦を進めていた。雑兵の掃討は軽々終わり、二本角を倒すための作戦会議が開かれていた。とはいえ、今回は情報がない。会議は終わろうとしていた。そこに一本の連絡が入る。四番シェルターからだ。

「皆さまごきげんよう。」

「シャロ嬢!」

「今日は情報を届けに参りましたの。」

「今、どちらですか?戻ってきてください。ご両親が心配しています。」

「私が、鬼に皮を取られている可能性がありますわ。帰れません。そんなことよりも、D都市にいる二本角はそれぞれ、炎を操る能力と、泥から形を作る能力がありますわ。それと、鬼は必ずしも敵ではありませんわ。」

その言葉を残し、通信が切れる。

「二本角の能力がわかったな。」

隊長が言う。

「罠の可能性は?」

「低いだろう。どちらにせよ、不利になるような話じゃない。」

管理人が頷く。

「そうだ。音響兵器を詰めた武器が完成した。後で配る。従来の武器よりも重たくなるから、訓練しておくように。」

会議は解散になった。その後、配られた武器を持って、訓練する。二本角討伐は、すぐにでも開始される予定だ。

「セイ。調子はどう?」

「大丈夫そうだ。重さそんなに変わんない。」

「僕としてはちょっと重いや。」

「なれるさ。」

そんなちょっとした会話を交わした翌日。二本角討伐の日。まずは、一体目。山の中にいた。草をかき分け、慎重に二本角の元に近づく。セイが不意打ちをかます。二本角の顔半分が飛んでいった。二本角が手をかざすと、近くの木が燃えた。

(炎の方か。)

短期決戦が望まれるのは、誰の目からも分かった。ユキたちが銃撃で支援する。鬼の腕がつぶれる。セイは素早く斧を振った。首に斧が引っ掛かる。中の音響兵器によって二本角が怯んだのがわかった。斧を手で無理やり押し込む。首が取れた。急いで角を剥ぎ、撤退する。幸い雑兵の方は、動きを止めるから、炎に巻かれて死ぬだろう。山に火の手が広がる前に撤退できた。

その翌日、今度は泥の方であることは確定していた。雨が降っていた。昨日の山火事はこれで鎮火するだろう。ショッピングモール一階。噴水広場のそばに、鬼は居た。雑兵はおらず、あたりは泥だらけであった。セイが間合いに入ると、泥が形を作り出す。一気に数十の兵に変わった。襲い来る泥兵に音響兵器を投げる。泥が形を崩したかと思うと、修復しだす。しかし、その隙にセイが一気に間合いを詰め、二本角めがけて斧を振るう。防ごうとした二本角の指が飛ぶ。泥兵がまとわりついて来る。ユキが正確に音響兵器を投げる。泥兵から逃れたセイが、今度こそ二本角の首をはねた。鬼を解体し、角を剥ぐ。ユキは二本角討伐が楽に終わって、噴水の周りを歩き回る。そこにアオイが近づいてきていた。

「鬼と協力することってできると思う?」

「急にどうしたの?」

「答えて。」

懇願するような彼女の目に思わず答える。

「難しいと思う。・・・でも、話し合いの余地はあると思う。」

「そう。ありがとう。」

去って行くアオイの背中を見送った。


休息日が来た。D都市も奪還できたから、気持ちよく休むことができる。セイにA地区の大型ショッピングモールに、デートに行こうと誘われた。大型ショッピングモールには、いろいろなものが置かれていた。アロマなんかの快眠グッズを見て回る。

「今回の二本角は弱かった。」

セイが言った。

「強さにも個体差とかあるのかな。」

「そう感じたな。欲しいものは見つかった?」

「うーん。いまいち。もうちょっと自然な臭いが好きかな。でも、この枕はいいかも。」

僕らは律義に金を払って、大型ショッピングモールを後にした。翌日の休息日には、訓練室に閉じこもって、三本角について考えていた。ケイトが、照準から顔を離す。

「何か考えてるでしょ。」

「うん。」

「さっきから、的に当たってない。」

「ごめん。」

「何考えてたの?」

「三本角って強いのかな?」

「如何にもな感じだったけど。」

「この間の二本角みたいに弱い可能性は?」

「ない。」

「はっきり断言するね。」

「狡猾なのは確かよ。防衛大臣に化けてたぐらいだし。でも、姿を見せたってことは、自信があるってことなんだと思うの。」

「それもそうか。」

「次はE都市になる。集中して。一発一発が命をつなげるかもなのだから。」


ツミは、五番シェルターに連絡を取ってみていた。反応がある。向こうの管理人が、モニターの前に顔を出した。

「そちらの状況は?」

「討伐隊、先遣隊ともに、一人を残して全滅した・・・。」

「徴兵は?」

「していない。完全に引きこもっている。」

「二本角に関して分かったことは?」

「風を操るやつがいると報告を受けている。そいつに全滅させられたと。」

「了解した。こちらで討伐する。」

通信を切る。

「腑抜けめ。」

「まあ、普通は徴兵したがらないさ。無駄死にの可能性も高いしな。」

「二番シェルター然り、もう少し、しっかりしてほしいものだな。」

「まあ、我々でどうにかしようじゃないか。」

ツミはコーヒーをすすった。


E都市、マンション屋上に向かう。二本角が一人でいた。

「楽できそうだ。」

セイがつぶやく。

「油断しないでね。五番シェルター隊もやられているんだから。」

「おう。」

セイが二本角に近づく。すると突風が巻き起こる。目を開けていられないほど激しい風だ。音響兵器を投げようとしても、風で飛ばされ、鬼まで届かない。やっかいだ。そう思っていると、セイが目を閉じる。精神を統一し、そのまままっすぐ突っ込んだ。

「無茶だ!」

二本角が正面に手をかざす。風が激しくなる。僕らは目をつぶるしかない。ザシュッという音が聞こえた。風が弱まったのを感じる。目を開ける。セイが目を開け、二本角に斧を振りかぶっているところが見えた。首が飛ぶ。地面に転がった。

「やった。」

僕がセイに近づいて抱き着く。怪我はないようで、セイが抱き返す。

「E都市も順調そうだ。」

皆でぞろぞろと屋上を降りようとした時だった。フードを目深にかぶった人が、階段にいた。総員で警戒する。

「待って。助けてほしいだけなんだ。」

フードを外した何者かの顔を見て、驚愕した。

「ヒナタ?」

ヒナタは死んだはずだ。この目で確かに見た。なんで今ここにいる?実は生きてたのか?二本角はヒナタを殺し損ねた?

「あなた鬼ね。」

ケイトの言葉ではっとする。

「来てくれ。シャロが大変なんだ。」

ヒナタはそういうと、誘導するように立ち止まる。僕らは顔を見合わせ、シャロという言葉だけを信じて鬼についていくことにした。


E都市にある、鬼のコミュニティのあるビルの中。シャロは苦しそうに息をしていた。熱があるのか顔が赤い。銀姫がそばで見守っていた。

「疫病を撒く二本角がおる。」

鬼のコミュニティには、むき出しの二本角を持った鬼と、一本角が複数いた。ヒナタが言う。

「僕たちは、人間と交友関係を結びたいんだ。三本角は恐ろしく、受け入れがたい。数を減らした人間たちの保護をしようと思う。シェルター外でも生きていけるように護衛をするよ。」

「考えさせてほしい。」

そう言って、みんなで相談する。シャロを見る。鬼に乗っ取られた感じではない。状態もいい。体をちゃんと拭かれ、食べ物も与えられているようだ。

「わかった。協力しよう。」

セイが言った。こちら側に損はないという判断だった。

「ダメだよ。」

アオイが言った。

「鬼と人は仲間になれない。鬼は呪われた者だから。」

アオイが首に付けているチョーカーを外す。首に傷があった。そこから何かがのぞく。

「私がアオイを殺したときに出来た傷。」

そうつぶやく。傷口に手を伸ばし、皮を剥ぐ。二本角が顔を出す。

「アオイ・・・分かり合えないか?」

「無理だよユキ。鬼と人は違う世界に生きる者。常世の鬼は人を食らい生きる者。」

コウイチの首が飛ぶ。アオイの周りに氷のつぶてが舞う。

「姉さんを殺した皆を、私は許すわけにはいかない。」

氷のつぶてが飛ぶ。二本角たちが盾となり、守ってくれた。ケイトが銃を下ろし、銃撃を開始する。僕も剣を抜く。覚悟するしかなかった。氷のつぶてを、二本角たちに弾いてもらいながら、アオイに近づく。有効な間合い。僕は飛び出し、アオイの首で剣を止める。

「あの日々は嘘だったの?」

「半分は本当。皆のことが大好きだった。でも、半分は憎かったよ。我々を地の底に追いやって、平和面している君達が。鬼は、絶滅したとしても、人間に食らいつく。自分ごと引きずりおろす。」

「どうしてそこまでして?」

「姫の悲願。三本角とは違う、姫のね。」

アオイは、自ら剣に首を差し出す。首が落ちた。僕はその角を剥いだ。


ツミは報告書を眺めていた。協力的な鬼達。姫の悲願。ツミは考える。姫の正体を。

シャロ嬢は病室で、弱弱しく息をしていた。E都市最後の二本角。二番シェルターにパンデミックを運んだのはこいつかもしれなかった。それは、二番シェルターに鬼の残党がいることを示唆していた。

ユキは食事を取りながら、ひそかに祈った。鬼と人がうまくいきますよう。

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