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やりたかないのに陰陽師参  作者: 辻本 真悟
第一章:侵食する霧と『生徒会』の始動
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第三話:ポートアイランド・ヴァンパイア・ブラッド

「……おい、晴明。あれが棺の中身か?」


 煙の中から現れた、不気味なほど白い肌の男。その圧倒的な「異物感」を前に、博雅が独り言のように呟いた。


「本人に聞きたいけどよ、あれ……日本語通じんのか?」


 俺がタバコを咥え直して投げやりに言うと、隣で道満が顔を引きつらせて詰め寄ってきた。


「晴明、あれって吸血鬼なんかな? なぁ、吸血鬼なんかなぁ!?」

「知るかー。でも吸血鬼って、こんな日の光の下でも大丈夫なんか? 設定バグってんじゃねーのかよ」


「貴様ら、ふざけとる場合か!!」


 親父(泰臣)の怒号が飛ぶ。シワだらけのスーツを翻し、親父は空中に鋭い五芒星を描き、渾身の呪力パケットを叩き込んだ。だが、吸血鬼は直撃を受けても首を傾げるだけだった。攻撃をされたことは理解できても、その「意味」が定義されていないからダメージが反映されない。


「嘘やろ……。――臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!」


 道満が悍ましいほどの呪を込めた九字切りを放つ。黒い鎖のような呪術が吸血鬼を縛り上げるが、男は少し不快そうに顔を歪めただけで、すぐに何事もなかったかのように鎖を引き千切った。


「嘘……うちの最大出力が……」


 道満の絶望した声を聞いて、俺はため息をついた。


「……はぁ。やりたかないねん、ホンマに。……騰蛇トウダ。焼き切ってやれ」


 俺の影から這い出した獄炎の巨蛇が、倉庫ごと飲み込むような炎を吐き出す。だが、吸血鬼の白い肌を焦がすことはできても、根源的なデリートには至らない。何故だ……騰蛇の火が焼ききれないなんて。


 驚愕する俺たちを余目に、吸血鬼はニヤリと口角を上げた。こいつらの攻撃は俺には効かない――そう確信した男が、こちらへ一歩踏み出した、その時だ。


「……なら、これでどないやッ!」


 博雅が両手を大きく広げ、黄金色の氣を物質化させて巨大な弓矢を作り上げた。吸血鬼はそれを「日本の術式」だと思い込み、避けようともせず胸を貸した。


 だが、その予想は最悪の形で裏切られる。

 博雅の氣は、概念ではなく純粋なエネルギーの塊。つまり「物理」だ。


「――っ!?」


 着弾の寸前、吸血鬼の本能が危険信号を鳴らした。慌てて両腕を交差させて庇ったが、もう遅い。

 黄金の矢が接触した瞬間、吸血鬼の両腕は防護壁ごと粉々に爆ぜ、肉片が霧のように散った。


「ア……ガ、アアアッ!?」


 初めて見る、吸血鬼の「苦痛」の表情。腕を失った男は、信じられないものを見たという顔で博雅を睨みつけると、そのまま黒い霧となって港の闇へと逃げ去っていった。


 なぁ、あんたならどう思う?

 十二天将さえ効かないバグに、脳筋の物理攻撃が一番効くなんて。


「……やりたかないねー、ホンマによー。……博雅、お前、あいつのOSハックしちまったぞ」

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