第四話 ねがいの橋
その橋は
年に1度
信じられないほど
賑わうことがある
少年は
幼いときに
両親と一緒に
賑わいの中
橋を渡った
さわがしいほどの人の声
はなやかな音楽も
おぼえていなかったけれど
うれしそうな姿
いや
声?
それだけ
おぼえているような気がした
その橋に
少年は
夜に
やってきていた
橋の側面と底面には
LEDが設置され
温度や街の音
橋の振動音
などで光がきらびやかに踊る
「すごい!」
おもわず声が出て
あわてて口をおさえた
行き交う人たちは
そんな少年を
ほほえんで見ていた
少し赤くなった
ほほをおさえたとき
急に
まわりから
いくつかの
気持ちが
流れこんできたように感じた
うれしくはずんだ
よろこびの気持ち
けれど
その奥に
寂しさ
悲しみが
まざっている
その時
少年には
その気持ちは
わからなかった
別の日
強い陽の光に
汗をかきながら
やってきた少年は
まわりを見て
あのときの気持ちが
理解できた
「さびしがりやなんだな」
少年は
ノートを取り出した
「両国橋」
「新町川」
「さびしがりやの橋」
少年は
ノートを閉じようとして
手を止めた
「にぎわいをねがう橋」
そう書き加えて
少年は
ノートを閉じた




