第三話 あたたかな橋
その橋は、車は通らない
人だけが通ることができる
少年は
めずらしそうに
周りを見る
行き交う人たちは
ほかの橋より
ゆったりしてるよう
人だけでなく
動物たちも
この橋を通る。
欄干の上では
すずめが
羽を休めている。
橋のすみに
丸くなって
昼寝をしている
ねこ。
人が通っても
逃げない。
その横を
犬が
しっぽを振って
歩いていく。
「なんだか
みんな
安心してるな」
それでも
トラブルは
起こる
杖をついた老人。
元気に走るこどもたち。
気づかぬまま
ぶつかりそうになる。
少年は
あわてて
あいだに入ろうとする
そのよこを
かぜが通り過ぎた
けれど
かぜがとどくまえに
ふわりと、
やわらかな光が舞い
老人と子どもたちが
はっと
立ち止まる
ほっとして
歩き出した
少年の目に
橋の入口に立つ
女の子が映った。
手をにぎり
唇をぎゅっと
閉じている。
ちらっと
向こうを見る。
そして
あわてて
目をそらす。
少年も
そちらを見る。
もう一人の女の子が
歩いてきていた。
二人とも
なきそうな顔。
思わず
近づこうとする
少年のよこを
また
かぜが追い抜いていった
ふしぎな音とともに
けれど
二人が
近づく瞬間
あたたかな空気が
ゆっくりと広がり
水面のきらめきとともに
ふたりを包む
少年は
おどろいて
周りを見た
だれもおどろいていない
二人も
笑顔だ
手をつなぎ
歩いていく
二人を
見送りながら
少年は
ノートを取り出した
「ふれあい橋」
「新町川」
そして少し考えて
「あたたかい橋」
少年は
ノートを閉じた。
そして
橋を
ふり返った。
橋の上を
やさしい風が
通り過ぎた。




