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〜無能で最弱の元プリンセスが、地獄の果てまで飲み込む復讐界隈の話〜 ミセス アナコンダ  作者: 大背戸智
第六章「鍛冶郷アンボス編」

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第61話:『骨を切って、肉を断つ』(2026年4月29日修正)

100+1は200にも300にもなります

(本文2026年4月29日修正)

二本の武器が、止まった。


止まった、その瞬間。


ホブが、動いた。


動いた、というよりは——跳んだ。


天井の高さに、もう一度近づく。


着地と同時に、ガルドの正面に武器を振り下ろした。


ガルドは、動かなかった。


動かないまま、首だけをずらす。


二本の武器が、ガルドの肩のすぐ脇を抜けた。


岩の床に、ふたつの深い傷が刻まれる。


「……ホブは、俺だ」


低く、一言。


それが、開戦の合図だった。


退路の通路で、ぎ、ぎ、ぎ、と無数の足音が走り出した。


百は、いた。


(……数だけは、立派ね)


ガルドが、初めの一撃を受けた。


受けた、というよりは——流した。


二本のうちの片方を、拳の甲で横に押す。


押された武器は、岩の壁に深く刺さった。


もう一本が来た。


これも、流した。


ガルドの拳が、武器の腹を撫でるように滑らせる。


その通りに、ホブの体重が横へ流れた。


ホブが戸惑った。


僅かに、戸惑った。


それに気づいたのは、ガルドだけだった。


——おもしれえ。


ガルドは、口に出さなかった。


——あいつらの修行を通して、俺も成長するとはな。


腰を低くする。


——お前と戦ってくれた、先人たちにも、感謝だ。


ホブが武器を振り回し、ガルドがまた流す。


流すたびに、ガルドの体の動きが変わっていった。


変わった、というよりは——無駄が、削れていった。


ホブが突然、ガルドではなく横に武器を振った。


横にいたのは、アナ。


ガルドが、間に滑り込んだ。


二本の武器を両手で受ける。


岩の床がガルドの足元から、ぴしり、と割れた。


「お前の相手は、こっちだ」


低く、一言。


ホブがまた戸惑い、ガルドに向き直った。


その後ろで、ジークが剣を引いた。


引いて、待つ。


最初のゴブリンが、躍りかかった。


引きの間合いの奥で、剣が動く。


ゴブリンが、伏せた。


二匹目が来て、伏せた。


三匹目、伏せた。


ジークは、斬っているというよりは——捌いていた。


斬らずに、間合いを外す。


外した先に、剣を置く。


剣のほうへ、ゴブリンが勝手に入ってくる。


ガルドの、講義のとおりだった。


その左で、ラピスが杖の先を向けた。


灯りではない、別の魔法。


——火は、駄目だ。


ラピスが唇の中で、反芻する。


——洞窟で、火は、駄目だ。


杖の先端から、灯りが消えた。


代わりに、青い円がふわり、と浮かぶ。


円がねじれて、流れた。


水だった。


採掘場の湿った空気から、ラピスが引き寄せたのだ。


水流が低く、地面を走る。


ゴブリン群の足元を、撫でていく。


足が、滑った。


転んだ。


転んだところに、ジークの剣が待っていた。


その右で、アナが左腕を上げた。


針では、なかった。


針を、面に広げた。


衝撃波の、面。


——押し返す、壁。


ゴブリン群の先頭の五匹が、まとめて後ろに吹き飛んだ。


吹き飛んだ先にいた別の五匹も、後ろへ押される。


ドミノのように、十、十五、二十、と倒れていった。


倒れた群れの上に、また後ろからゴブリンが押し寄せてくる。


アナが、もう一度左腕を上げた。


押し返す壁が、また出た。


(……便利よりも、楽しいわね)


アナの口の端が、ほんの少し、上がった。


その後ろで、ナーガが両手を開いていた。


治癒の、構え。


誰もまだ、治す必要がなかった。


代わりに、ナーガは目を閉じていた。


砂漠の、占い師の習慣。


熱を、感じている。


「ジーク——左、もう一匹」


短く、一言。


ジークの剣が、左に動いた。


ゴブリンが、伏せた。


ジークは振り返らずに、


「ありがとうございます」


「うん」


それだけ、だった。


百が、減っていった。


九十。


八十。


七十。


四人の足元の灯りの輪の中に、伏せた影が増えていく。


ジークの剣の引きの間合いが、ますます深くなった。


ラピスの水流が、ますます滑らかに地面を走った。


アナの押し返す壁が、ますます広くゴブリンを押した。


——使えば使うほど、精度も威力も増していった。


ナーガの治癒の白い光が、二度、必要だった。


ジークの肩の、浅い傷。


ラピスの指の、擦り傷。


二つとも、ナーガの手の中ですぐに消えた。


百が、ゼロになった。


ゼロになった。


四人の息が、揃う。


ガルドの背後に、四人が合流した。


ホブはガルドと、まだ向き合っていた。


ガルドが、四人をちらりと見る。


「来たか」


「来ました」


ジーク。


「うん」


ラピス。


アナは、何も言わなかった。


ナーガが両手を開いたまま、頷いた。


ホブが、五人を見渡した。


数を、数えていた。


数え終わって、武器を握り直す。


しっかりと、握り直した。


それまでの戸惑いが、消えていた。


腹を決めた、という握り方だった。


(……あら。ご立派ね)


「散れ」


ガルドが、一言。


四人が散った。


ジークがホブの右へ。


ラピスが、左へ。


アナが、後方へ。


ナーガは、後方のさらに後ろへ。


ガルドだけが、正面に残った。


ホブがガルドに、武器を振り下ろした。


ガルドが、流す。


流された武器のその奥に、ジークがいた。


ジークの剣が、ホブの右の脇腹を浅く引いた。


引いて、すぐに引く。


——引きの、間合い。


ホブが振り返ると、その背中にラピスの水流が当たった。


足が、滑った。


膝が折れたわけではない。


わずかに、傾いだ。


傾いだ、その瞬間。


アナが左腕を、上げた。


針ではなく、面でもない。


——蛇、だった。


足元の影がひとつ、ふたつ、立ち上がる。


ホブの両足首に、絡みついた。


絡みついた、というよりは——縫いつけた。


ホブが、歩けなくなる。


「ジーク」


ガルドが、一言。


ジークが、走った。


ホブの、左の膝の裏。


そこに、剣を入れた。


骨が、砕けた。


——骨を、切った。


ホブが、膝をつかなかった。


つこうとして、つけなかった。


影の蛇がまだ、足首を縫いつけていた。


ガルドがホブの正面に立ち、両の拳を握る。


握った拳が、ホブの胸の真ん中に入った。


ホブの胸の骨が、内側に凹んだ。


凹んだまま、ホブが後ろへ倒れる。


倒れた、その瞬間。


ジークがホブの首の付け根に、剣を入れた。


——肉を、断った。


ホブが、止まった。


ホブの体が動かなくなった、その瞬間。


その体重が、祭壇のすぐ脇の岩の床に、ずしん、と乗った。


岩が、軋んだ。


ぴしり、とひびが走る。


走って、広がった。


祭壇の台座が傾ぎ、骨の山が崩れる。


布の塊が、落ちた。


落ちた先の岩の床にもまた、ひびが走る。


がら、がら、がら、と。


岩が崩れて、落ちていった。


その先に、闇があった。


——まるで、手招きをされているようだった。


岩の口ではなく、人の手で削られた、形をしていた。


ガルドがその奥を覗き、振り返らずに言った。


「——もう一段、深えな」


低く、一言。


灯りがぐらり、と揺れた。


揺れた向こうで——


奥の闇が。


呼吸を、しているように見えた。

今度は5人で怪我なく戦えました。

そして、ラピスが初めて攻撃魔法風なものを出しました。

天才ならすぐにマスターするでしょう。

祭壇が崩れた先に何が、いるのでしょうか。


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