表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/43

8月20日 2ヶ月 その2

「あ、待ってくださいー」

 私とせーらさんは慌てて走り出した現ちゃんの後を追いました。

 研究棟ダンジョンが女性の生殖器と対応していることは判明しましたが、子宮への道のりは容易なものではありませんでした。

 一度卵巣近くまで行って、卵管を通ろうとすると途中で通れなくなっていました。

 仕方なく戻ろうとした所で、現ちゃんが上を指差しました。

 通気口のような小さな道。

 どうしても現ちゃんが譲らないので、聖良さんが仕方なくワイヤーのような縄ばしごを出してそれをひっかけ、上に登れるようにしてくれました。

 お庭を掃除する時、高い木に登る必要ができた際に使うものだそうです。

 そこそこお腹の大きくなった現ちゃんにとってこれを使用して登るのは大変つらいでしょう。

 何かあっては大変と、私と聖良さんは気を揉みつつ必死でサポートしました。

 登った先にあったのは、細い細い道。

 かがまなければ進めないその道をものともせず、お腹の出た現ちゃんはどんどんと進んで行きます。

 仕方ないので、私と聖良さんもその後を追います。

「本当に、この先に、子宮があるのでしょうか?」

 そもそも、子宮に子供はいるのでしょうか。

 いえそれ以前に、本当に女性の体と建物が対応しているというのでしょうか。

 もろもろの疑問を抱いている私の耳に、先を進んでいた現さんの声が届きました。

「見て! なんかある」

 少し広くなった道は行き止まりでしたが、そこに立札のようなものが立っています。

「これは……」

「何て書いてあるんですかー?」

 唖然とそれを見上げる現さんの横に立ち、私もそれを覗き込んでみました。


『一般的な妊娠状態においては着床後、何ヶ月目からが正常な出産時期? 1.9ヶ月 2.10ヶ月 3.11ヶ月』


 看板には、それだけが書いてありました。

 いえ、周囲にお花や動物のようなイラストが描いてあるのですが、情報的なものはなさそうです。

「……クイズ?」

「ですねえ」

 その意外な文言に、顔を見合わせるばかりです。

 よくよく見ると、1と2と3、と書かれた選択肢の所にボタンのようなものがついています。

「これを、押すのでしょうか?」

「待って、不用意に触ったら……」

 聖良さんの止める声を聞く前に、指が動いていました。

「答えは――2番!」

「違う!」

「ちがーう!」

「え」

 ぽちり。

 二人の声が揃った時には、私はすでにもうボタンを押してしまっていました。

 ゴゴゴゴゴ……

「えっ、ええっ、だって十月十日って言うくらいですから……」

「着床後って書いてあるじゃん! その時点でもう妊娠3週目くらいの計算になってるの!」

「一般常識の範囲内よ」

「そ、うなんですか……」

 ゴゴゴゴゴ……

 私が現さんたちから駄目出しをいただいている間にも、何やら不気味な低音が響いてきます。

「ど、どうしたんでしょう、これは……」

「さあ……」

「むーちゃんが間違えちゃったせい!?」

「も、申し訳ありません……」

 ゴゴゴゴゴ……

 不安が募る間にも、音は続いています。

 そして突然、その時はやってきました。


 がごんっ。


 私達を乗せている床。

 それが、突然斜めになりました。

「え」

「あ」

「ひゃあ!」

 驚きの一声だけ残して私達は、するするすると滑り落ちていったのです。

「あ……あ!」

 現ちゃんの手が空を掻きます。

 いけません。

 まだ妊娠初期の初期の私はともかく、現ちゃんのお腹はかなり大きくなっています。

 ここで落下したら、お腹の子供が危ないのでは!

 そんなことを考える暇すらなかったような気がします。

 慌てて現ちゃんに手を伸ばすと、聖良さんも私に手を差し伸べました。

 私はそのまま現ちゃんを庇うように下に――

 その時、私たちの目に白い物が飛び込んできました。

 それは、湯気。

 そして石鹸の香りと湯の香り。

 そして強い、どこか覚えのある人の香り。

「きゃぁああああ!?」

 人影が叫びましたが、止まれるわけもありません。

 だ、ぶーん!

 もうもうと立ち上る湯気の中、私達は見事、たっぷりお湯と泡の混じった使用中のお風呂に着水したのです。


「うぇえええ……た、たすかった……」

「な、何が起こったのでしょう……」

「すみません、怪我はないです……あ」

 ずぶ濡れの私達が顔を上げると、目の前に先程の人影が立っていました。

「あ、なたは――」

 その方は、以前、受胎時にお会いしたことのある…… この『産屋』の所長、凪さんでした。


 驚いた様子で見開かれた大きな瞳。

 水に濡れ、艶やかにウェーブを描く長い髪。

 白い肌に、ほんの少しふくらみの見える胸。

 中でも一番大きく存在を主張する、張ったお腹。

 そして、両足の間、股間の異物――


「きゃぁあああああ!」

 浴室に悲鳴が響き渡りました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ