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【悲報】盲目の無能と蔑まれ追放された聖騎士、実は気配察知スキルがカンストしていた〜盲目だけど仕込み杖を抜いたら、一瞬で魔王軍を全滅させてしまった件〜  作者: ボルトコボルト


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第八話:カジノのイカサマ師、逆恨みで王宮の闇へ走る

「ひぃ、ひぃ……! 新団長様! お願いです、あのクソ盲目のジジイを、今すぐ八つ裂きにしてください!」


 王都の格式高き王立聖騎士団本部・最高会議室。


 高級な絨毯の上に、下品なタキシードをボロボロに汚した男が這いつくばっていた。第二話でイチにカジノの全財産を毟り取られ、暗闇の中で全裸にされて失脚した悪徳ギルド『鉄の蠍アイアン・スコーピオン』のカジノ支配人だ。


 その目の前で、豪華な革椅子に深く腰掛け、不機嫌そうにワイングラスを揺らしているのが、聖騎士団の新たなトップ――新団長ボルドーであった。


 彼は前当主が失脚した隙に入り込んだだけの、コネと金で地位を買った無能なエリート。魔王軍の暗殺部隊『幻影の牙』に防衛網を突破され、連日王宮から無能だと罵られてヒステリーを起こしていた。


「黙れ、ドブネズミめ。カジノのイカサマがバレて全裸で池に突き刺さっていたような無能が、私に指図するな」


「そ、それには訳があるんです! あのジジイ、目が見えねえのをいいことに、絶対に凶悪な禁忌の呪いを使ってやす! 現に、あの元王宮筆頭騎士のゲラルトまで取り込んで、下町で王宮を転覆させるための私兵団を組織しているっていう噂ですぜ……!」


 支配人は下劣な舌をペロペロと出し、新団長の「保身」につけ込もうと、ありもしない虚偽の報告を並べ立てた。


「ほう……ゲラルトが平民どもと結託して私兵団を、な……」


 ボルドー新団長のゲスな目が、ギラリと狡猾に光った。


 魔王軍の暗殺部隊に勝てず、失脚寸前のボルドーにとって、この虚偽報告は渡りに船だった。


「『魔王軍に勝てない』のではない。――『下町に不法にカネを稼ぎ、王宮転覆を企む危険な盲目の大罪人がおり、魔王軍と内通しているため、その対処に追われている』。……そう王宮へ上奏すれば、私の失脚は防げるどころか、下町を合法的に壊滅させて手柄にできるな」


「ひゃっはー! さすが新団長様! お智慧が回る! ついでにあの居酒屋『カツコマ』を叩き潰して、あの生意気な看板娘を俺たちの奴隷にしちまいましょう!」


「フフフ、面白い。王宮の正規軍と聖騎士団の全戦力を動かし、不法占拠の罪で下町ごとあの盲目を圧殺してやる。せいぜい檻の中で自分の無力を呪うがいい、クソ平民どもが」


 最高会議室に、無能な新団長と下劣なイカサマ師の、反吐が出るほど醜い高笑いが響き渡る。


 彼らは完璧な陰謀だと確信し、ほくほく顔でワインを飲み交わしていた。


 ――だが、彼らはあまりにも無知だった。


 その最高会議室から数キロメートルも離れた、下町のしがない居酒屋のカウンター席に、すべての会話をリアルタイムで『爆笑しながら盗聴している男』がいるという事実に。


 ◇


「ぶふっ……! げほっ、ごほっ……!」


 居酒屋『カツコマ』のカウンター席で、俺――イチは、飲んでいた黒エールを盛大に吹き出した。


「ちょっと、イチさん!? 汚いじゃない、どうしたのよ急に!?」


 サホちゃんが布巾を片手に怒った顔で駆け寄ってくる。


「いやあ、すまないサホちゃん。ちょっとね、数キロ先の王宮の会議室から、あまりにも面白くて下品な『お笑い劇』が聞こえてきたもんでねぇ」


 俺は仕込み杖に左手を置き、カンストした聴覚スキル『世界樹の根』の感度を少し下げた。


 壁の向こう、遮蔽物、王宮の厳重な防衛結界――そのすべてを「ただの振動」として透過し、ボルドー新団長とカジノ支配人のゲスな会話、ワインを注ぐ音、下劣な笑い声まで、俺の耳にはすぐ隣で喋られているかのように100%筒抜けだったのだ。


「……イチ。王宮の奴ら、また何か企んでいるのか?」


 隣の席で串焼きを食べていたゲラルトが、鋭い目で俺を見た。


「ええ、ゲラルトの旦那。どうやら私たちが『王宮転覆を企む魔王軍の内通者』ってことになって、聖騎士団の全戦力でこの店を潰しに来るらしいですわ。カジノの支配人のハゲも、新団長にペロペロすり寄ってましたよ」


「はぁ!? 何よそれ、完全な濡れ衣じゃないの!」


 サホちゃんが顔を真っ青にして怒る。


「フン……無能な新団長らしい保身のためのトカゲの尻尾切りか。聖騎士団の全戦力ねぇ……。イチ、どうする? 私が今から王宮へ殴り込みに行って、あの新団長の首をハネてきてもいいが」


 ゲラルトがこともなげに恐ろしいことを言う。病気が治ってから、この旦那、少々血の気が多すぎる。


「まあまあ、ゲラルトの旦那、そんな野蛮な真似はいけませんな。向こうはわざわざ『王宮の正規軍』っていう、上等なお客様を連れてきてくれるんです」


 俺はニヤリと笑い、仕込み杖をコンと一回鳴らした。


「せっかくですから、次のお仕置き(マッサージ)の作戦でも立てましょう。向こうが下劣なゲス全開で来るなら、こっちはもっと派手に、かつ合法的に、あの新団長のエリートのプライドを完膚なきまでに叩き潰して(ざまぁ)やらないと失礼でしょう?」


「イチさん、また悪い顔になってるわよ……。でも、私も手伝うわ! あのハゲ支配人に、下町の底力を見せてやるんだから!」


「ハハハ、いい脱線だな。よし、イチ。その作戦、私も一枚噛ませてもらおう。古巣の無能どもが全裸で泣き叫ぶ姿を見るのは、悪くない酒の肴だ」


 下町の小さな居酒屋で、最強の盲目、天才魔剣士、そして怒れる看板娘の3人が、王宮の陰謀をあざ笑うように楽しげに作戦会議(悪巧み)を始める。


 数日後、自信満々で攻めてくる聖騎士団の勘違いエリートたちに、この世の地獄が待ち受けているとも知らずに――。

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