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【悲報】盲目の無能と蔑まれ追放された聖騎士、実は気配察知スキルがカンストしていた〜盲目だけど仕込み杖を抜いたら、一瞬で魔王軍を全滅させてしまった件〜  作者: ボルトコボルト


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第四話:悪徳辺境伯と奴隷狩り 〜お前たちの「足音」はすでに聞こえている〜

「イチさん、ゲラルトさん。はい、お代わりのエールよ!」


 店名が新しくなった下町の居酒屋『カツコマ』。


 看板娘のサホちゃんの元気な声が響き、俺――イチとゲラルトは、静かにジョッキを突き合わせていた。ゲラルトの体調はすこぶる良いらしく、先ほどから美味そうに酒を口に運んでいる。


 だが、そんな穏やかな時間は、唐突に終わりを告げた。


「ひゃっはー! 野郎ども、動くんじゃねえぞ! この平民の掃き溜めどもがァ!」


 バシャーーーン!!と店の木製ドアが荒々しく叩き割られ、完全武装した数十人の兵士たちが雪崩れ込んできた。


 彼らが身に纏うのは、下町の悪徳ギルド『鉄の蠍』の軽鎧。しかし、その奥の胸当てには、王都の強欲な支配者ヤンセン辺境伯の家紋が冷酷に刻まれていた。


『鉄の蠍』のバックには、国屈指の権力者がついていたのだ。辺境伯は自身の持つ違法な魔導奴隷鉱山を潤すため、下町の住人を「奴隷狩り」として拉致するよう命じていた。


「おいおい、また随分と下品な足音が乱入してきたねぇ……」


 俺が呟いた瞬間、兵士のリーダー格の男がサホちゃんの腕を乱暴に掴み上げた。


「おい、この女がカジノの売り上げをくすねた居酒屋の娘だな! 連れて行け! 鉱山で死ぬまでタダ働きさせてやるわ!」


「嫌っ! 離して! イチさん、助けて――っ!」


「サホちゃんに気安く触んじゃねえよ、三下どもが」


 ゲラルトが氷のような殺気を放ち、腰の魔剣に手をかけようとする。


 しかし、兵士の頭領は下劣な笑みを浮かべ、サホちゃんの首筋に鋭いナイフを押し当てた。


「へっ、動くなよ魔剣士ゲラルト。てめぇの雇い主である『鉄の蠍』のボスからの伝言だ。【この盲目のジジイを始末するまで、女の安全は保証しねえ】ってなぁ! 逆らうならこの場で女の喉をかっ切るぞ!」


「チッ……!」


 人質を取られ、さしものゲラルトも動きを止めざるを得ない。


「ひゃっはー! 傑作だな! おい、街の奴らも全員捕らえろ! 辺境伯様への極上の手土産だ!」


 兵士たちはサホちゃんや店内にいた下町の住人たちを次々と縄で縛り上げ、嘲笑いながら店から連れ去っていった。


 夜の下町に、住人たちの絶望的な悲鳴と、悪党たちの下品な高笑いが遠ざかっていく。


 静まり返った『カツコマ』の店内で、俺は静かに立ち上がった。


「すまない、イチ……。私の立場(雇われ)のせいで、サホちゃんを……」


 ゲラルトが悔しさに唇を噛み締めながら、俺の背中に声をかける。


「いやあ、ゲラルトの旦那。あんたが気にする必要はねえさ」


 俺の『人情スイッチ』が、静かに、そして完全にオンになった。


 脳内3Dマップを展開する。


 数キロメートル先。連れ去られていくサホちゃんたちの涙が地面に落ちる音。怯える小さな子供の心臓の鼓動。そして、「あのガキども、鉱山に売れば金貨何枚になるかなぁ」と下劣な皮算用をする悪党たちの醜い足音。


 そのすべてが、カンストした俺の聴覚スキルを通して、鼓膜を激しく突き刺した。


「目が見えないってのは、本当に不便でしてねぇ……。こういう時、悪党どもの汚ねえツラを見なくて済むのは、ありがたいんですが」


 コツ、と仕込み杖を床に突いた。


 その瞬間、ただの古びた木製のステッキだったはずの仕込み杖から、かつてないほど純粋で、かつ圧倒的な、黄金の神聖魔力のオーラが激しく吹き上がった。


 溢れ出る魔力圧だけで、店の周囲の空気の振動が変わり、夜の雨雲さえも引き裂かんばかりの輝きを放つ。


「――サホちゃんの、美味しいエールとエルフ豆の味を汚した罪。あんたたちのカネじゃ、とても払い切れませんよ」


「……イチ、君は……」


 ゲラルトはその人知を超えた神話級のオーラに、驚愕のあまり言葉を失っていた。


「ゲラルトの旦那。辺境伯の城までの案内、お願いできますかね。……ちょっと、下町の掃除に行ってきますわ」


 仕込み杖を逆手に握り直し、眼を開けることのない盲目の最強騎士は、悪党たちの足音を追って、静かに夜の闇へと歩みを進めるのだった。

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