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【悲報】盲目の無能と蔑まれ追放された聖騎士、実は気配察知スキルがカンストしていた〜盲目だけど仕込み杖を抜いたら、一瞬で魔王軍を全滅させてしまった件〜  作者: ボルトコボルト


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第十六話:下町の神様と、世界最強の隣国「帝国」

「はい! イチさん、ゲラルトさん! 出来立ての串焼きと、冷え冷えのエールよ!」


 下町の活気を取り戻した居酒屋『カツコマ』。


 看板娘のサホが、弾むような笑顔とともに特大のジョッキをテーブルに置いた。王立聖騎士団の闇が綺麗に掃除された今、この店は下町の平民たちにとって、まさに心の拠り所であり、憩いの聖地となっていた。


「いやあ、サホちゃん、いつもありがたいねぇ。仕事の後のエールは、五臓六腑に染み渡りますわ」


 俺――イチは、愛用の木製の仕込み杖を壁に立てかけ、飄々とジョッキを傾けていた。


「同感だ。王宮の面倒な権力闘争から離れ、ここで飲む酒ほど美味いものはない」


 隣の席で笑うのは、元王宮筆頭騎士のゲラルトだ。病が完治し、全盛期以上の魔力を湛えた天才魔剣士も、今ではすっかり俺の貴重な「エールの飲み友達」として、下町のスローライフを満喫していた。


 だが、そんな穏やかな空間に、信じられないほど不条理で、かつ下劣極まりない足音が近づいているのを、俺の【限界値カンスト】に達した聴覚スキル『世界樹の根』はすでに捉えていた。


 ドガァァァァァン!!!


「ヒャッハー! どけドブネズミども! 偉大なるバルサス帝国軍の、超特級エリート騎士団様のお通りだァッ!」


 激しい衝撃とともに、『カツコマ』の頑丈な木製ドアが、ただの暴力によって粉々に吹き飛ばされた。


 店内に雪崩れ込んできたのは、漆黒の魔導鎧を身に纏い、禍々しい大剣を構えた数十人の男たち。王都の混乱を聞きつけ、この国を実質的な属国として支配するために大軍勢で乗り込んできた、隣国『バルサス帝国』の勘違いエリート騎士たちだった。


 彼らは店内にいた平民の客たちを見るなり、下劣なゲス全開の笑みを浮かべ、手に持った魔導鞭や剣の腹で容赦なく殴りつけ始めた。


「ぎゃああっ!? な、何をするんだ!」


「うるせえ平民! 今日からこの街は帝国の植民地だ! 逆らう奴は全員奴隷として鉱山に叩き落としてやるよ、ケケケッ!」


 逃げ惑う客たちの足を払って転ばせ、その背中を金属のブーツで踏みにじる帝国兵たち。あまりにも理不尽で、反吐が出るほど下品な侵略行為。彼らは王都の防衛力が低下しているのをいいことに、完全に調子に乗っていた。


「おいおい、そこの女ァ! 随分と上等な面構えじゃねえか。今日からお前は、俺たちの専属の慰安奴隷だ!」


 リーダー格の帝国騎士が、怯えるサホの髪を乱暴に掴み上げ、下品に舌をペロペロと出しながら引きずり回そうとした。


「やめて! 離して!」


 サホの悲鳴が店内に響き渡る。


「おい、離せ。その汚い手を今すぐ叩き切られたくなければな」


 ゲラルトが氷のような殺気を放ち、腰の魔剣に手をかける。しかし、帝国騎士団の副団長らしき男が、下劣なニヤつき面のまま立ちはだかった。


「ハッ! 元王宮筆頭騎士のゲラルトか! 病気で使い捨てられた落ちこぼれが、偉そうな口を叩くんじゃねえよ! ほら、動くなよ? 動いたら、この小娘の喉をこの魔導鞭で引きちぎってやるからなぁ!」


 人質を盾に取り、ゲラルトの動きを封じる帝国兵たち。彼らは弱者を利用し、強者を嬲ることに快感を覚える最低最悪のゲスどもだった。


 その時、カウンターの隅で、俺は静かにジョッキを置いた。


「……いやあ、お兄さん方。ずいぶんと賑やかなご挨拶ですな。目が見えねえ俺にとっては、あんたたちのその、ドブ川の底から湧き出たような下劣な呼吸音は、少々耳障りなんですがねぇ」


 イチはコツ、コツ、と仕込み杖を突きながら、ゆっくりと立ち上がった。


「あぁあん!? なんだその、ボロ切れを巻いた片目の、出来損ないの盲目ジジイは!」


「障害者の分際で、偉大な帝国騎士様に口を叩いてんじゃねえよ! 邪魔だ、そこに跪いてろ!」


 一人の帝国兵が、嫌がらせのようにイチの仕込み杖を足で蹴り飛ばそうとした。


 ――だが、その足が仕込み杖に触れることはなかった。


「――お前、今、誰を蹴ろうとした?」


 イチが眼帯の奥の目を、静かに『見開いた』。

 その瞬間、店内の空気が一瞬で真空に変わったかのような、凄まじい地響きが鳴り響いた。


「ひ……っ!?」


 イチの全身から溢れ出たのは、王都の空すら一瞬で黄金に染め上げるほどの、圧倒的な【魔王の威圧】。


 カンストした気配察知スキルが逆流し、物理的な『歩く覇気』となって帝国兵たちを直撃したのだ。


 その凄まじい魔力圧だけで、帝国兵たちが着ていた頑丈な漆黒の魔導鎧が、バリバリと音を立てて内側からひび割れていく。


「な、何だこのプレッシャーは……!? 身体が動かない……!」


「化け物だ……! このジジイ、ただの障害者じゃねえ……!」


 さっきまで下劣に笑っていた帝国兵たちが、あまりの恐怖に顔面を蒼白にし、歯をガタガタと鳴らしながらその場にへたり込んだ。イチがただ一歩、前に足を踏み出すだけで、兵士たちは自分の首筋に冷たい刃を突きつけられているかのような錯覚に陥り、尿を漏らしながら涙目で後ずさりする。


「おい、サホちゃんからその汚ねえ手を離しなさい。……お仕置き(マッサージ)の時間ですわ」


「ひ、ひえぇぇっ! 構うな、殺せ! この化け物を細切れに――」


 ――カシャッ。


 刹那、誰も視認できない速度で仕込み杖の刃が閃いた。


 イチが両手で放ったのは、剣風すら起こさない神速の極致『無刀流・神速逆手居合』。


 キィィィィィン……!


 金属が激しく擦れ合う高音が響いた瞬間、帝国兵たちが構えていた禍々しい大剣や魔導鞭が、まるで豆腐のように綺麗に根元から真っ二つに叩き切られ、床へバラバラと落ちた。


 それだけではない。


 ガサササササササッ!!!


 イチが放った衝撃波の風圧が店内に吹き荒れ、数十人の帝国騎士たちが身に付けていた最新鋭の魔導鎧、衣服、そして下着に至るまでが、ミリ単位の狂いもなく正確に切り刻まれ、一瞬にして爆散した。


「ぶひゃああああっ!? 全裸だ! 俺たちも全裸にされたァァァ!」


 世界最強を自負していた帝国のエリート騎士たちが、一瞬にして生まれたままの姿(全裸)にされ、あまりの衝撃で店外の泥水の中へともんどり打って転がり落ちた。皮膚には髪の毛一本分の傷すらついていない。衣服と武器だけを、完璧な技術で消し飛ばしたのだ。


「ひ、ひえぇぇぇ! 寒い! 助けてくれぇぇ!」


 さっきまでサホを奴隷にするなどとゲス全開で笑っていた侵略者どもが、今や股間を両手で隠し、泥水の中で涙と鼻水を流しながら惨めに這いつくばっている。


 下町を占領しようとした帝国の勘違いエリートたちのプライドは、たった一瞬で、完膚なきまでに叩き潰されたのだった。


「ふぅ……。サホちゃん、怪我はなかったかい?」


 イチはいつもの飄々とした態度に戻り、仕込み杖をサヤに収めた。


「うん! ありがとう、イチさん! あのゲスども、スッポンポンがお似合いよ!」


 サホが嬉しそうに、泥水の中で震える帝国兵たちを指差して笑った。


 ゲラルトもジョッキを掲げ、不敵な笑みを浮かべる。


「ハハハ! さすがだな、イチ。世界最強を騙る帝国のエリートどもが、ただのデコピン一発分の風圧で全裸で泣き叫ぶ姿は、最高の酒の肴だ」


「いやあ、それにしても。やっぱり目が見えないってのは、不便ですな!」


 イチのいつもの冗談に、店内には再び、夜空を揺らすほどの大爆笑が響き渡るのだった。

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