番外編 夢日記2「溺没」
目が覚めると、そこは白い機内だった。誰も座っていない青いシートがずらりと並んでいる。窓から外を覗くと、雲の上を飛んでいた。
飛行機に乗ったことが人生で一度も無かった。だから嬉しかった。雲と空の境界線が滲むのを夢中で見つめる。
機内が揺れてけたたましい轟音をたてる。ぶつけた頭をさすりながら、外を確認する。先程まで雲の上にいたのが、視界一面がまっ青である。この飛行機は海へまっさかさまに墜ちているのだ。目をぎゅっとつむる。機体が空中分解し、体が投げ出される。
海面に叩きつけられ、ぼんやり目を開ける。遠くのほうで翼だったものが浮いて燃えている。それ以外には見渡す限り海しかない。そして、目前には波が迫る。
体が沈んでいく。力の限り体を動かして酸素を求める。嫌だ。苦しい。いやだ。ゴポゴポ響く泡の音、海面から透ける太陽の光、胸に伝わる圧迫感。
どんどん深海へ呑み込まれていく。もがいてあらがっても届かない。体に水が入った。激痛が走り自身の終わりを悟る。
息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が息が。
肺が藍で満たされて意識が遠のいていく。やっと楽になれる。朝日に照らされ、ゆっくり目を開けると家の天井だった。やっと夢だと知る。
過去で一番ひどい夢だった。乗ったことすらない飛行機で死ぬとは不可思議な。
「りんちゃん!?いま何時だと思ってるの?!!今日も補習でしょう!!」
お母さんが今日も騒がしい。こっちが夢であってほしかった。では、学校に行ってくる。




