番外編 夢日記1「刺創」
あまり、眠れない。明日は学校だというのに。むしろそのせいかもしれない。元々私は寝つきが悪い方だ。週に一回あるかないかぐらい眠れずに朝を迎えることがある。今回もそのパターンだろう。
こんなときは寝るのを諦め、絵を描くのが一番だ。体を起こすと、目の前に母さんが立っていた。
「母さん。どうしたの」
部屋は真っ暗だが、キッチンから差し込む光によって母さんの手に持っているものが見える。暖かいキッチンの光で輝くそれは、包丁である。
母さんの表情は暗過ぎてよく見えない。何も言わず、じりじりと私のほうに近寄ってくる。
逃げたい。逃げたいのに腰に力が入らない。後退しようとした背中が壁とぶつかる。
「こないで、ぁっ、まって、ぃゃ……」
包丁が私に突き刺さる。
刺された。刺された。刺された。出てくる血はどれもあかく。いたい。肋から全てが抜かれていく感覚がする。思考も布団も痛みも真っ赤。痛い、いやだ、しにたくない__。
失血死寸前の所で飛び起きた。窓から見える外は、夜が明けたばかりの微妙な青色。あぁ、夢でよかった。ひどく汗をかいていて、体があつい。
実はあの悪夢に心当たりがある。昔、似たようなことがあったのだ。あの時に振り下ろされたのは包丁ではなく掃除機だったのだがな。夢の癖に痛覚を実装するなんて生意気。
これからは夢の内容も君に報告する。なぜなら、夢を記録に残すと人は狂うらしいから。どうせこの夏に全て終わるのだし、君と行けるところまで行ってみたい。では二度寝する、おやすみ。




