#96 ワイバーンと戦った話
ワイバーンは簡単に言うとドラゴンを小さくして知性をなくして寿命を短くして繁殖力を強くしたみたいな魔獣だ。
それでも強いので、人間にとっては厄介だ。
ファルカスが町に損害が出ないように魔法をワイバーンに放っているが、効き目なしだ。
ラーファ、アルタイル、ファリナは避難誘導中、聖騎士は弱くて使い物にならない、軍もない。ルミナリアさんはいないし、詰みすぎてるだろ。
ワイバーンは被害を四方に撒き散らしていて、町は半壊している。この城も崩れるのは時間の問題だ。
俺は窓をオープン。銃型グングニルの矛先をワイバーンに向け、そのまま撃った。魔力の塊を弾にして、狙いに着弾した瞬間に魔法が発動してドカンだ。着弾しなかったら、不発弾として霧散する。
ワイバーンが思ったよりも俊敏で弾を避けられたため、それはふっと消えていった。
クロードとダリアには人的被害を出さないように上手く立ち回るよう言って、俺は翼を広げ、窓から飛んでファルカスの近くに寄る。
「援護する。足引っ張るなよ」
「ウリア!」
クロードが大規模結界を町全体に張る。ドーム状なので三百六十度の防御が可能だ。これで町は大丈夫だな。
それでも壊れかけていた建物は崩壊の危険があるので、ダリアが崩れる前に丁寧に解体し始めた。ナイスすぎる。
俺達は自由にやれそうだ。
「援護と言ったが、やっぱり俺一人に任せてくれないか」
「え、本当? 助かるよ」
えっ、引き止めてよ。そんなあっさりと引き下がらなくてもいいじゃんか。
ファルカスは結界近くまで降下し、観戦モードに入ってしまった。
ま、信頼されているってことで。
ワイバーンは翼をはためかせ、かなり高い速度で町の上空を周回している。
ワイバーンって普段、あんまり人前に姿を見せないんだけどな。自分から動くなんて珍しい。
武器は使わず、魔法だけで倒そうか。今日はワイバーンの肉と、ご馳走になろうか。やっぱり胸肉だよねぇ、鳥系は。
俺が隙を見せると、ワイバーンは大口を開けて俺を丸呑みしようと迫ってきた。すかさず避けるが、隙を見せないと襲ってこないなんて慎重派の子もいるんだな。
えーと、まずは······『魔之暴風』かな。それを収束させて小さい竜巻みたいにしてぇ、次に『魔之爆炎』を一緒にして巻き込んでぇ、『魔之石塊』の小さいバージョンで細かい尖った石をぶち込んで殺傷能力上げてぇ、これでいいかな。
俺の手の平の上に小さなドリル状に渦巻く竜巻が踊っている。これ当たると、体を貫通しながらあちこちに傷をつけられる。まさに攻撃用の魔法だ。
まずはその魔法を消す。そして新しく魔法陣を浮かべて組み合わせ、一つの魔法として成り立たせた。複合魔法陣の完成だ。
作った魔法陣に魔力を適当にぶち込んで、さっきよりも巨大なドリルを作る。
さて、これを命中させる環境を作るか。
まずは誘い込み。ファイヤーボールをワイバーンに向かって打ち、俺の存在をはっきりと敵として認識させる。真っ直ぐ、ワイバーンが俺を睨んできた。
やっぱりファイヤーボールだけじゃ効き目ないよな。
『魔之氷槍』の追跡機能付きを三十個。一斉にワイバーンに向かわせる。ワイバーンとか、一般的に魔獣と称される動物は例外を除いて魔法が使えないので、ワイバーンはアイシクルランスから逃げ回る。
たまに横から割られたりして氷の槍はどんどん減っていく。しかし槍は増える一方だ。俺は少しずつプラスして優位に立っていた。しかし、ワイバーンは真っ直ぐ俺に向かって飛んできた。
今までより一番速いな。しかし向きが悪かった。真っ直ぐだと、ドリルも向けやすいというもの。速いからこそ、すぐ曲がれねぇだろ?
結果として、ワイバーンの口を入口としてドリルが猛威を振るった。俺がミスってそれを大きく作りすぎたので、ワイバーンは原型を留めない姿になって落下していった。
やべ、やりすぎた。くっそー、肉を頂こうと思ったのにー。微塵切りどころじゃなくぐちゃぐちゃだし、もう食べれないじゃん! 俺の馬鹿!
何故だろう、敗北感が溢れ出てくる。勝ったのに。くー、悔しい!




