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#94 まさかの再会の話

 ふう、と一息ついた頃に、鬼の形相をしたクロードがいるのに気づいた。悔しさと怒りに表情が支配されてしまった様子である。


「······どうしていつもいつも、急にどこかに行くんですか! 何も仰らずに!」


 ほら、始まった。その場を我関せずと逃げようとするダリアを捕まえ、二人で一緒に床に正座だ。

 いやー、はは。一人でふらついてはこうやっていつも怒られてたよね。俺の安全とかいいから、自由にさせろって。


「まあまあ、いいじゃない? たまには」


 俺が笑って誤魔化しながら言い訳、間違えた。クロードを宥めると、ダリアが全力で首をぶんぶん縦に振った。

 ダリアと出会ってから初めて、完璧な意思疎通ができた気がする。


「たまには? いつものことではないですか! 大体、オーディン様は行動する度に損を被っているのです! 御身のことを第一に考えて行動なさってください!」


 うう、ぐうの音も出ない。でも行動する度にっていうのは言いすぎだ、絶対。

 いや確かにね? クロードを拾った時に片目を失ったし、神の文字を探ってユグドラシルに首を吊って死にかけたりしたけど、毎回じゃないし?

 クロードもさ、別にお前が俺の片目を失くした原因だとしても、責任を負う必要ないもんな。だってアレ、百パーセント俺が悪いし。


「このままではウリア君の自由がないじゃないですか! 良くないです! 本当に忠誠を誓っているなら、ウリア君の自由を尊重すべきです!」


 良く言ったダリア! あとでよしよし······間違えた。あとでご褒美やらないとな!

 ダリアが俺の方を向いて、隠れてグッドサインをした。マジでイケメンすぎる。君という友を持って俺は幸せだよ、ダリア君。

 俺が幸せに浸っている頃、俺の部屋のドアが勢い良く開けられた。外れるんじゃないかという勢いで、ドアが反発で開け締めを繰り返す。

 おい、ダセェな。

 そんなのは無視して、クロードは語り続ける。


「オーディン様に自由? ダリアは新米だから知らないでしょうけど、この方は自由にさせた瞬間消えるのです!」

「確かにそんな気はします!」

「ダリア君!?」


 前言撤回。俺は何とも素晴らしくない友を持ってしまっていたようだ。幸せの絶頂から、どん底へ。絶望に近い感情が焦りにぐるぐると混じっていく。

 で、今のダッセェのは誰だ?

 ドアは静止し、立っていたのは見覚えのある顔だった。でも誰だか思い出せない。誰だっけ。絶対に会ったことはあるんだけど、思い出せないな。

 えーと、えっとぉ······。


「久しぶりだね、ウリア君」


 脳内よ、情報求む。見た目は二十代女性、言葉遣いは男勝りで強そう、赤茶色の髪と瞳······。えぇ、誰ぇ?

 学校関係者、でもなさそうだし。記憶を辿ると、青空、木の匂い、小さな家、銀髪と兎、ペン······。


「思い出した、ルミナリアさんですね!」


 そうじゃん、そうだよ。俺と同じ転生者で、何故か迷宮という、フシギ空間に住んでた人だよ。

 今考えれば異質極まりない空間だったな。収納魔法を魔改造したらできそうではあるけど。実験の価値ありだな。


「私もここに住むことになった。よろしく!」

「実はルミナリアさんとちょっとした縁があってね。絶対に戦力になるからお呼びしたんだよ」


 力強くルミナリアさんがここ住む宣言を終えた後、ファルカスがひょこっと顔を出してきた。

 恐らくちょっとした縁ではないのだが、そこを突っ込む間も与えられず彼女たちは廊下を進んでいった。

 ドアが全部閉められる前、ルミナリアさんの後ろを歩く銀髪の少女が小さく会釈してきた。俺も会釈して返すが、名前は思い出せない。

 隣の部屋から、ルミナリアさんの声、そして次にファリナの声が続いた。俺の隣はファリナだったようである。逆の隣はファルカスだ。

 今日は特に予定なし。だったら、やることは一つだ。折角魔力が使えるようになったんだし、迷宮の作り方について実験したい。

 しかしその前に、復讐の舞台を考えるとしようか。

 俺はグングニルを色々な形に変える。銃、剣、ハンマー、斧、ペンチ。どれが一番苦しいか考える。


「······ウリア様、復讐なんてやめませんか? 所詮、ちっぽけな人間です。あなた様が気にする必要なんて――――」


 俺が復讐の話を始めた途端、クロードの顔が険しくなった。

 彼の気持ちも、理解できないわけじゃない。というか、昔は俺の言うことをただ聞いていた小さな子供にすぎなかったのに、自分の意見を持ってそれを言えていて、寧ろ嬉しいと感じるくらいだ。


「わかってる。でも、俺の大切な人が殺されたのは、決してちっぽけなことじゃないだろ? クロード、自分に置き換えて考えてみろ。俺がちっぽけな人間に殺されたらどう思う?」


 あ、待って。例え話を間違えた。俺が人間ごときに簡単に殺されるわけないって言いそう。

 でも、クロードに大切な人っているのか? いねぇよな、うん。じゃあ、例えは合ってたってことで。


「ウリア様を害そうとした瞬間に私が殺します」


 やっぱり間違ってたかも。しかもアレよ、傷つけた瞬間でも、殺そうとした瞬間でもなく、害そうとした瞬間だからね。

 ダリアは静かに考えているみたいだ。


「実はね、目的はわからないけどきな臭い組織があるんだよ。聞いたことない? 『巨人の雫』っていう、シンボルがウロボロスの――――」

「「『巨人の雫』!?」」


 思わず聞き返したが、クロードとダブった。まあ、あの組織は有名というか何というか。

 『巨人の雫』とは、世界征服を目的として神出鬼没、現れては消える尻尾の掴めない謎の組織だ。世界征服はあくまで通過点で、彼らの本当の目的は、大地に眠る巨人を呼び覚ますことだ。

 しかし、彼らは――――


「それは、俺が、オーディンが、実験ついでに壊滅させた組織だぞ? どうしてまだ――――」

「私も知りませんでした。くっ、知識の妖精として、何たる不覚ッ!」


 クロードが知らなかったのも無理はない。歴史や文献などに残らなかった場合、それは知識として扱われない。あくまで彼は知識の妖精。そういうのはユグドラシルの専門なのだ。

 ユグドラシルも元気にしてるかな。見た感じ元気そうだったけど。

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