#80 血の繋がった兄の話
一連の流れをウリア王子から聞かされ、ただいまげんなりとどん底の気分と雰囲気だった。
本物······俺が? まあ薄々気づいてたって言うと嘘になるけど、でも本物のウリア・セントリアにしては矛盾と謎があるんだよ。
ちょっと頭が追いつけないっていうか、理解したくないというか······。
「魂が全部返されれば、ウリアさんはまた魔法が使えるようになりますよ」
また魔法が·····? いや待てよ。魂割り? そしたら俺は、半分の魂で生きていた、と。できるの、それ。
そういえば最近夢に出てこない雷って、一人分じゃないみたいなこと言ってたよな。それも何か、関係が······?
ユリウスが真実を知っていたというのも気になる。
「ユリウスさんが知ってたというのは?」
俺がそう聞くと、王子は小さく笑った。その意味は俺にはわからなかったが、足音が近づいてくるのがわかった。
「これは本人に聞いたほうが早いですね。遅いですよ、ユリウスさん」
ドアの開く金具の音と、帯剣してる音。ドアの方を見ると、ユリウスらしき人が立っていた。
らしき人、というのは、顔も佇まいも確かにユリウスだが、違うのだ。髪も目も。
金髪に赤色の目。王子や俺と同じ組み合わせ。しかも王子と微かに似ている。
まさか彼って――――
「そのまさかですよ。ね、ユリウス・セントリア殿下」
ゆりうす、せんとりあ······。ふぁぅ!? もうワケわかんなくなってきたんだけどぉおお! 急展開迎えるなここで。ただのお見舞い、って心読まれてるから計画済みか。
えーと、恐らくユリウスが? セントリア王国の王子でぇ? ウリア王子の兄君ってことね。
「やめろ。僕は王子として生きていない」
「えー、ずるいな。僕もそうしたかったです」
むすっとした表情のユリウスは腕を組み、普段はない威圧感があった。見慣れないな。彼は俺の横に立った。
なるほど。俺が本物の彼の弟だから、何度か助けてもらったと。しかし親を殺されたんだぞ。それが血の繋がった兄だなんて、この上ない絶望だ。
俺が本物のウリア・セントリアなのだと信じきれていないが、王子は嘘はついていない。それに、実際彼は最初に会ったときから魔力が減っている。
これを見せられてしまえば、もう信じないという選択肢は小さくなっていってしまった。
そういえばユリウスも混血って言ってたよな。
「セントリア王族って、異種族の血が入ってるんですか?」
思い切ってそう聞いてみた。
これでYESなら、ユリウスは説明がつく。彼の魔力からは人間と少しの異種族のものを感じる。しかし俺はしっかりハーフ。
元から王族が一夫一妻だなんて思っていないが、YESだったら俺は王族じゃなくなる。
「太古の昔、初代国王が竜の血を飲んだと伝えられてるね」
「ちょ、ちょっと待ってください」
俺の質問でいつもの朗らかな態度を見せたユリウスだったが、それは一瞬で終わった。
水を差された、と表現するには悪意があると言えようか。ファルカスとラーファが困惑しながら話を静止した。
ユリウスには何もそんな不機嫌にならなくても、とは思うが、それが彼の素なのかな。
「セントリア王国の内情に、ウリア巻き込むということですか」
······確かに。確かにな。うん、知っちゃった以上どうすることもできないが、俺は巻き込まれてるな。ついでにファルカスもラーファも巻き込んじゃってる。
国際問題になりかねない、かも? いやまあ、ならないか。
「はぁ······、ファルカス殿下。何も知らないまま巻き込まれるよりも、知っていて巻き込まれたほうが、マシでしょう?」
「待て。ユリウスさん、俺を巻き込む前提ですか」
「いやだな、人聞きの悪い。何があっても、ウリアは僕が守るよ。だって、たった一人の弟だからねー!」
うぇ、きもっ。こいつが兄なの本当に引く。ドン引きすぎるよ、これ。
頭を撫でられそうになったが、剣を抜こうと俺が剣に触れたら、手が退散していった。
俺さぁ、人によってあからさまに態度変える奴嫌いなんだよね。
「ウリア、本当にユリウスさんに守られてていいの?」
ラーファのこの反応。ウリア王子も······って、本物じゃないんだっけ。でも生きてる限りは王子だよな。ウリア王子も、吹き出して笑っている。
ユリウスがまた不機嫌そうにむっとした。思ったよりこいつは、表情に出るタイプなのかもしれん。
「俺自身は俺が守りますので、ユリウスさんはご自身を守ってくださいね」
さらっと流したところで、そろそろ帰りたくなってきた。
太陽に黄色さが増し、雲が橙色に光っている。もうそんな時間か。何か、濃い一日だったな。
「帰りたいですか。では、まだまだ話したいこともありますが······今日はここまでということで」
ほうほう、また来いと。
しかし便利だな。魔力が繋がっている影響か、心が読まれるのって。口に出せない心の声もしっかり伝わるから欲が伝わるわ。
またね、とさよならを告げて、お城に直行だ。転移魔法で本当に直行。一瞬でお城に着いた。
「おかえりなさい。ファルカス様、陛下がお呼びだよ」
······今日、濃すぎないか。




