表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/100

#78 お見舞いに行った話

 一週間、二週間、時は流れていく。その間、王子はずっと学校を休んでいた。色々聞きたいことはあるのだが、何せ休みなら仕方ない。体調不良らしいし。

 王子は確か、貴族街のセントリア王国来賓用の館にいるんだっけか。お見舞いも兼ねて、会いに行ってもいいかも。

 ユリウスの養子になることが願い、ね。彼に何か吹き込まれたのか、と詰め寄りたくもなるが、その肝心のユリウスから何もないあたり、ただのお願いなのだろう。


「ウリア、何か考えごと?」


 いつも通りぼうっとしていたら、ラーファが心配そうに目の前に現れた。学校で二人だけになるのは久しいことだな。

 ラーファもねぇ、こんなに立派になっちゃって。最初はおどおどして人とまともに話せなかったのに。


「あぁ、いや。何でもないよ。ウリア王子がちょっと心配なだけ」

「王子かぁ。そうだね、体が弱いって聞いてたけど、大丈夫かな。ねー、ファルカス」


 話題はファルカスにまで引火していった。彼も同意見。

 そんなこんなあって、お見舞いに行くことになった。どうせ学校帰りは暇なのだし、毎日図書館でぐったりするよりは、お見舞いに行くほうがいいだろ。

 お見舞いの品に何か、果物とかか? 王子が好きそうなの、そうだな······。わかんない。から、適当に果物か。

 王都の市場で売られていた色どりみどりの果物は、旬が近いのか賑わっていた。

 リステニア侯爵及び正妃アリアは、今や処刑待ちのただの罪人に成り果てた。公開処刑ではなく、秘密裏に毒殺するらしい。

 侯爵領を誰の領地にするかを、現在検討中とのこと。若くて国王の信頼が厚い高位の貴族になりそうだけど。

 捕らえられた侯爵軍は、侯爵領に送り届けている最中だ。幸いなことに、犠牲者は少ない。今後、王国に楯突くことはないだろう。

 果物を買い終わり、セントリア来賓用の館に向かう。もう面倒だから大使館でいっかな。いいよね。ちょっと意味違うかもしれないけど。

 それにしても、果物の色のセンスいいな。ラーファがほとんど選んでくれてたな。こういうの、本当に尊敬する。

 セントリア大使館はこれもまあご立派だった。しかし庭の端々まで管理されていない。

 門の前に立つ兵士に事情を説明して中に通してもらう。制服だったのが幸いか。


「「「失礼しまーす」」」

「あ、どうぞ」


 ウリア王子の部屋にそろりと入る。彼は驚きもせず、いつも通りの笑顔で迎えてくれた。

 彼はベッドで起き上がる体勢を取っていて、隣にはたくさんの本が積み上がっている。

 俺は彼に聞きたいこといっぱいあるけど、今日はそれが目的じゃないからな。

 ちなみに、ファルカスとラーファとアルタイルには既に王子のことは伝えてある。


「お見舞いに来ました。これ、お見舞いの品です」


 ラーファがそう言って果物を、ベッドの横にあった小さなテーブルに置いた。果物、ラーファ、日差し。絵になるわ。

 どれどれ、王子はどんな本を読んでいるのかな。えーと、妖精王の物語? 精霊と人間? 妖精王の真実に迫る? 癖のある本読んでんな。


「あ、そうだウリアさん。この前のお願い、考えてくれました?」

「んー、まあ考えはしましたよ。あまり乗り気はしませんけど」


 うぅ、このまま忘れてくれれば良かったのに。ユリウスの養子に、か。何と言えばいいのか。思い出したんだ。親が殺された直後、俺を殺そうとしたレイガルドを止めたのは、ユリウスだってこと。

 複雑な気持ちだ。もしまた、大事な人が殺されてしまったらと思うと、寒気がする。それに、両親の死んだ顔がフラッシュバックされて、気分が悪くなる。


「ウリア様。その、余命があと二ヶ月って、本当なんですか」

「はい、本当ですよ」


 ファルカスが一気に雰囲気を氷のようにした。暗さが少しずつ、室内を埋めていく。

 急に話題を変えるな、それに。俺がびっくりだよ。


「何で、黙ってたんですか」

「·········」


 ぎゅっと、ファルカスが拳を強く握った。怒り? 悲しみ? 後悔? 何か知らんが、感情が複雑に絡み合っていたのは確かだった。

 それに対してウリア王子は、ファルカスの言葉に共鳴するように、何かを言いかけていたが、すぐに口を静かに閉じた。


「話を聞いてくれませんか」


 ······。しーん。だがその沈黙が、ある意味了承であり、そして拒否でもあった。現実への。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ