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#72 隣国王子とファルカスの話

 夏が近づき、温かさが増してきた。魔法はまだまだ全然時間はかかるが、結構使えるようになってきた。時間さえあれば魔法が使える。

 アルタイルもどんどん上達してきている。魔法も少しは使えるようになってきたようだ。

 ファリナはまだ目をさまさない。正妃も鳴りを潜めている。そのおかげで外出も自由になってきた。逆に言うといつ来るかわからないからね。ファリナが見つかるわけにもいかないし。


「ウリア様、今日も休みだね」


 ウリア王子は病弱らしく、休みや早退が多い。それでよく留学に来る気になったものだな。ゆっくり祖国で休んでいればいいものを。

 ラーファはファリナが気になって仕方ないし。でも王都に捨てられる前の記憶ないんだろ? だからこその心配かもしれないが。

 真昼が迫ったころ、遅刻でウリア王子が来た。顔色が悪いわけじゃないが、どこか気分は悪そうだ。


「大丈夫ですか、ウリア様」


 あいつは確か······侯爵家の長男だったか? ファルカスに取り入るのを失敗したから、次は隣国の王子ってか。

 ウリア王子は一瞬返答が遅れたが、すぐに可愛らしい笑顔で首を縦に振った。

 ウリア王子の魔力が少し減ってる? まさか魔法の練習がしたいがために遅刻したとか? それはないか。

 目を話した隙に、ファルカスがウリア王子に近づいていく。俺も慌てて後ろについていく。


「お体の調子は?」

「あ、ああ、いえ。その、大丈夫です。心配かけてごめんなさい」


 言い慣れたような謝罪だ。もしかして、彼がカーティリスに来た理由って家庭環境!? 病弱で迷惑かけちゃうから、毎日酷い扱いを······?

 まあ待て、ただの推測だ。でもあり得ぬ話でもないだろう。だってどうせ一夫多妻制でしょ? そしたらいざこざの一つでも起こるよ。

 同情心。ま、俺はそういう経験ないけどさ。間近でファルカスを見てたらわかるよ。王族はやばいってね。


「何か困ったことがあれば言ってくださいね。例えば、欠席分のノートとか」

「いいんですか······!?」


 おいおい、ファルカス。お人好しにも程があるって。目立たず行動するつもりだったんだろ? ウリア王子とつるんだら目立つじゃんか。

 ウリア王子は今にも嬉し泣きしそうだ。そういえば彼が特定の人と喋ってるのみたことないな。頼るような友達いなかったのかな。

 横をチラ見すると、さっきまで王子に話しかけていた侯爵子息がファルカスを睨んでいる。

 凄いな、向上心が。


「あ、あの、図々しいとは思いますが······ぁのっ、友達になってくれませんか!?」


 王子は顔を真赤にしながら手をファルカスに差し出す。

 お、一気に言ったな。声も裏返ってるし。でもいい度胸だ。

 ファルカスの表情は笑顔。勿論、と言って彼は王子の手を握った。

 初めての友達だったようで、王子は花が周りに飛ぶような笑顔。やっぱり友達いなかったのかよ。

 ということで、ラーファ、俺、ファルカス、ウリア。身分最高級が三人揃って一番後ろの席へ。俺の肩身がより狭くなった。

 ところでウリア王子、本当に人間じゃないな。一見、普通の人間なんだけど。


「ファルカス様、この日のノートを見せてもらえませんか?」


 お昼休憩。教室が一番静かだから教室で食べるが、向かい合えないのが欠点なんだよな。まあいいけど。

 右隣二人は斯々然々。ラーファと俺は食べることに夢中だ。


「ウリア、ブロッコリーいる?」

「いや、ちゃんと食え」


 ラーファはいつも苦手な食べ物を俺に寄越そうとしてくる。まあね、低学年の頃は許可したよ? でももう十二歳じゃん。食えよ。

 それにウリアなんて言ったら、王子の方も反応する――――してないんかい!


「ウリアさんって、ファルカス様の護衛なんですよね。どういう出会いだったんですか?」


 何、その新婚さんのインタビューみたいなノリ。確かにどんなだったかな。

 最初は図書館だったよな。泥をかけられて、そこでどうのこうの······。


「ウリアとは図書館で意気投合して、護衛になってもらったんです」

「へー。本が好きなんですか?」


 王子よ、お前の名前ってウリアだったよな。何でいちいち反応しないんだ。もうちょっと、ぴくりと動いてもいいだろ。

 和気あいあいとした昼休憩が終わる。ウリア王子と一緒に図書館に行く約束までしちゃった。ファルカスが。

 学校帰りにそのまま図書館に直行。まあ、いつもやってることなんだけど。

 そこでユリウスを見かけた。鎧は着てないし、私的に来たのだろう。聖騎士も休み少なそうだし、ゆっくりしろよ。

 今日は······そうだな。ウリア王子とは親友の友達だし、セントリア王国についての本でも読んでみるか。


「あれ、ウリア君。奇遇だね」

「ウリアさん、ここにいたんですね」


 板挟み。同タイミングで前後で声をかけてきた。前にユリウス、後ろに王子。何の用かね、諸君ら。

 ユリウスはさっきまで結構遠くにいたはずなのに、いつの間に。

 ここ、他国の文化やら歴史やらについての本が並んでいる場所なんだけど。彼に必要とかあるの、これら。

 王子もだ。俺に何の用か知らんが、俺を探さないでくれ。別に人と話すの得意じゃないんだよ。特に目上の人。

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