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#70 隣国の王子の話

 ファルカスと俺、国王とアルタイル。ばたばたとファルカスの部屋へと一直線。

 ファルカスの部屋に入り、ラーファが起きないようにそろりと歩く。

 ファルカスのベッドの上に置いたファリナはまだ目をさまさない。どういう経緯であの場所にいたのかは知らんが、体内で別人の魔力が暴走していたのだ。相当体にダメージを負っているハズ。外観無傷だけど。


「これは······確かにファリナだ。どこかで見つけた?」

「貴族街に魔獣がいて、それがファリナでした。その、操られた痕跡があり、それで魔獣化したのだと考えられます」

「一体誰が······」


 ちらっとファルカスを見ると、表情は無になっていた。そんなに父親と話すのは嫌なものかと思うが、無になる程度には嫌なんだろうな。

 俺も早く寝たいな。それに、ユリウスからもらった本だってあるし。明日は学校だし。

 何だか今日はハードなスケジュールだったな。妖精の国に行って、戻ってきたら魔獣と戦って、ファリナだったし。


「ファリナを操っていたのは正妃様の魔力でした」

「何?」


 あ、言っちゃうのね。でもどうするよ、これで国王がそんなわけないとほったらかしたら。もしかしたら、ファルカスが信用なくすかも。

 国王は眉間に深いシワを寄せて聞き返すが、別にあり得ない話でもないと思ったのか、しばらくすると帰っていった。

 うつらうつらと夢に入っていく感覚がする。眠いな。今日は大人しく寝よう。そうして風呂に入ろうかとなった時また国王が来た。


「言い忘れていたが、セントリア王国から第二王子が留学してくる。お前と同い年だから、頼んだ」


 そう言い残して、また去っていった。ファルカスがみるみるうちに疲れ果てていき、今日のところはぐっすりといい眠りにつけたのだった。


 数日後、本当にセントリア王国から留学生として王子が来た。

 セントリア王国とは、ここ、カーティリス王国の大体北西に位置する国で、農業が盛んな国だ。

 同い年で同じクラス。同じ王子という地位のファルカスがいるから考慮されたのだろう。交換留学制度? らしく、このクラスからも何人か行ったようだ。

 このクラスにはその王子一人しか来なかった。


「ウリア・セントリアと申します。セントリア王国から来ました。一年間、よろしくお願いします」


 これはまた、性格が良さそうな人が来た。笑顔が可愛らしく、仕草も愛らしい感じ。金髪で赤色の目。珍しいな。見覚えのある組み合わせだけども。

 クラスの人たちの視線がチラチラと俺を向く。そうだよな、うん。名前······一緒だもんな。ありふれた名前か何かか? クラスあるあるなんだけど。

 肝心の王子様は、影を薄めている俺には気づいていないようだ。認識はファルカスの横にいる奴でいいからな。

 それより、俺はこれからどう呼ばれるんだ。孤児だぞ。苗字ないぞ。どうすればいい? イントネーションで聞き分けろとでも言われるのか!?

 朝の会、もといホームルームが終わり、小さな休憩が始まった。その間に王子に人だかりが纏わりついていた。

 ファルカスはその様子を見て、一時間目の用意を始める。


「ファルカス様、はじめまして。王子同士、仲良くしましょう」

「あ、はじめまして。こちらこそ、よろしくお願いします」


 人だかりをすり抜けて、王子がファルカスに挨拶しに来た。

 ファルカスが立って握手をする。超めんどくさそうだな。ファルカスは陽キャになりたくないがためにいつもひっそりと学校生活を送っているからな。寧ろそこがいいと、女子たちの間ではモテモテらしい。

 一瞬、ウリア王子と目が合った。だが一瞬だ。


「そちらは?」


 げ、俺に回ってきた。ラーファのこと、とかじゃなさそうだな。だって彼女、いつの間にどこかに行ってるし。

 何か知らんけど、ファルカスもラーファもクラスの中心人物になりたがらないんだよな。代表とか、そういうのも。


「ああ、こちらは俺の護衛のウリアです」


 ナイス! ファルカスが俺の紹介をしてくれた。ナイスすぎる。本当にありがたいな。

 ウリア王子は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔に戻って手を差し出してきた。

 俺も立ち上がり、握手を交わす。今更だけどこの世界に握手っていうのあったんだな。


「同じ名前なんて、奇遇ですね。仲良くしましょう!」

「······よろしくお願いします」


 身分とかは気にしなさそうだな。いい人そうではあるが、何が目的でカーティリスに来たんだろう。

 まあいいや。

 それより、握手したときの違和感だ。魔力が人じゃなかった。異種族ほど癖のある魔力じゃないが、かといって異種族の血を引いている感じでもない。ただ、人じゃない魔力。しかも握手するまで気づかなかった。

 ウリア王子が去っていってから、ラーファが一瞬で戻ってきた。なるべく彼とは関わりたくないな。

 授業が始まった。


「ウリア様、なんか変な魔力だったね」


 おわ。びっくりした。ウリア様って言うから、どっちかわかんないよな、本当。

 俺に姓があれば良かったんだけど、ないんだよね。一応孤児は孤児院の名前が姓になるが、俺はファルカスの護衛になった時点で孤児院を抜けているから苗字がない。

 別に苗字がなくても不便になることはないし、極稀に学校でも苗字がない人がいるから、大した問題でもない。


「············うん」


 っていうか授業中に話しかけてくるな、とは言わない。文化の違いなのか何なのか、授業中に喋るのは普通だ。先生の授業スタイルが、そもそも日本とは違うし。


「どうした?」

「いや、同じ名前だと不便だなと思って」

「うちが養子取るように、お父様にお願いしようか?」


 おいおいラーファ。お前公爵家だろ。俺は嫌だよ。今更社交辞令やら何やらやらせられるのは。

 別に大した問題でもないし、そこまでされたくはないんだよな。でも確かに、養子に入れば苗字が獲得できるか。

 何かないかな、ほぼ無関係で何も望まなくて養子にしてくれる都合のいい人。

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