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#69 ファリナが見つかった話

「あー、もう! 俺に人殺しさせる気か、あのババア!」


 おいおい、王子様がそんなこと言っちゃ、キャラクター崩壊でしょうが! ファルカスもそんな暴言言うんだな。

 ファルカスもラーファも、既に正妃の魔力であることはわかっているようだ。そりゃわかるよな。あんだけやってくれちゃ。

 何とか魔法障壁で傷つけないように頑張っているが、魔力消費量が半端ないからな、障壁。気合か。


「······多分、そのババアさんは自分の魔力を他人に大量に入れ込んだんだと思う。どうにかして抜かないと」


 ラーファ、ババアとか言っちゃいけません。さん付けで呼んでも悪口は悪口だからね。

 俺も何かできることはあるかねぇ。どうしても魔法が使えないから、剣での攻撃しかできないんだよな。

 魔力を抜き取る方法、ね。無理だ。そんなピンポイントに抜き取る方法なんてない。ガンをガンだけ取り出すのって無理でしょ。多分それと一緒。

 あ、でも一つだけあるよ。無理ゲーだけど。


「持久戦になるけど、あいつの魔力が枯れるくらい魔法を使わせれば――――」

「無理な話言わないでくれる?」

「少なくとも、持久戦だと俺達が先に枯れるよ」


 何故だ。名案だと思ったのに、ラーファに切断されるように却下されてしまった。ファルカスもド正論かましてくるし。

 傷心の俺は剣で魔法の攻撃を受け止めて流してを繰り返すが、剣が先に壊れるな、これ。

 魔力量はかなり多いみたいだし、まずは今日一日魔法をぶっ放しても魔力は余るくらいある。

 何とかしたい。魔力を吸収······または破壊する······。

 魔法がかかっていればまだしも、魔力だけっていうのがダメなんだよ。······魔法?

 魔法、魔法か。支配する方法って、魔法だったか? 魔力だけをぶっこんでも、支配はできないハズ。もし支配できたら、食べ物全部アウトだし。

 正妃の魔力が人間をあの怪物にさせた。そしたら簡単な話。もとは支配されていたのだろう。けど、何が起こったか知らんがババアに大量に魔力をぶち込まれて暴走した、か。

 じゃあどうするかっていうのはないんだけど。

 一回接近して様子でも見てくるか。本当に支配されていたのかを。

 魔法を避けながら走っていくと、辛うじて人型を保った怪物に怪しげな紋様が見えた。人で言う首の後ろで、そこが最も防御が高い。あれは······魔法陣か。

 流石に剣で刺すのはダメだから、一回下がって情報共有。


「首の後ろ魔法陣があったけど、一番ガチガチに魔力で防御されてた」

「そこじゃん! どうする、どう消す?」


 ファルカスが驚きながらも悩む。ラーファは攻撃を攻撃で相打ちにしている。省エネか。

 どう消すって言っても、ねぇ? 魔法が使えない俺は既にお役御免みたいなものだし。


「私がやる。支配の魔法の解き方はもう研究済みだから」


 おっほぉ、ラーファさん、いつの間にそんなことを。何故にそんな興味深いことを俺に教えてくれないんだ。

 だが心強い。これで万事解決するだろう。

 ラーファは防御よろしくと言って全力で走り出す。魔力カツカツなファルカスが魔法障壁をしぶしぶラーファの前方に発動した。

 まさか防御を忘れて突っ込んでいくとは。俺も参戦しよう。ファルカスにも限界があるだろうから。

 俺は囮となって怪物の攻撃を全受け。でもその代わり、後ろがスカスカ。

 ラーファが魔法を怪物に向けて発動すると、ぴたっと時が止まったようにそれは静止する。


「やった、せいこ······ぅ」


 魔力を使い果たしたラーファはその場で倒れ込んだ。馬鹿なやつめ、頑張りすぎ。

 ファルカスが走ってこっちにくる。こいつも魔力不足で目眩の一つや二つは起こしているだろう。

 静止した怪物は正妃の魔力が霧散し消え、元の姿を取り戻していく。

 元はまだ幼い少女だったんだな。見覚えがある気がするけど気のせいか。


「ぁ······ファリナ······?」

「ぇ」


 ぇえええええ! マジか。確かに、言われてみれば。でも同い年なんだよね。明らかに五歳やそこらよ。

 倒れ込んだラーファをおんぶして、置いといたユリウスからもらった本を回収する。

 とりあえずファリナを連れて帰ることにして、王城に帰った。

 王城に帰ってすぐに、ファルカスの父親、国王にファリナのことを伝えることになった。

 護衛として俺もついていくことになるが、国王を見るのは久しぶりだ。式典とかパーティーでしか見ないし、それでもちらっとしか見ないからな。

 でもファルカスの父親だ。しっかり、イケオジ。爽やかで誠実な感じのイケオジ。うん、遺伝子って凄いな。

 ファルカスについていき、国王の部屋に入る。まだ仕事中だ。前世だったらブラック中のブラック。国王は忙しくて引きこもり。

 王城の家庭環境は狂っている。まず正妃があんなのじゃ、わかるだろうけど。正室はともかく、何人かいる側室の中でも身分の高さが家庭内順位。子供もそうなる。

 城内では家族団らんというのがない。そういう文化じゃなくて、普通にギスりすぎてできないんだろうな。

 お、アルタイルじゃないか。国王の護衛だったんだな。あ、目が合った。にっこり返してくれる。


「お父様、ファリナが見つかりました。今は僕の部屋にいます。失礼します」


 ファルカスは父親があまり好きじゃないのか、早口でそれを言うと踵を返し帰ろうとする。

 端的すぎるが無礼ではない。流石に俺もアルタイルも困惑だよね。早すぎるって。

 国王陛下も何で、そうか、一言で完結できるのおおおおぉぉぉ!? もっとさ、こう、深堀しなよってば!

 そう思っていると、国王はぴたっと走らせていたペンを止めた。


「え、待って、ちょ、ファルカス? もう一回言って?」


 今日初めて顔を見た。やっぱりびっくりしてるんかい。


「だから、ファリナが見つかって、僕の部屋にいるっていう報告です。失礼します」

「だから待てって。私も今ついていくから。アルタイル、行くよ」


 国王はわたわたと立ち上がり、すぐに歩き出す。お忙しいのでは······? と言わんばかりのファルカスの顔。

 いいね。国王陛下のそういうところ好きだわ。仕事ばっかりの仕事人間だと思ってたけど、人間らしいところもあるんだな。

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