2-5
手元にできた影に、つむぎは顔を上げた。
いけない。つい夢中になってしまった。
あんなに騒がしかったのに、いつの間にかみんな帰ったようだ。薄暗い部屋は変わらず雑然としているのに、どこか冷たい。
つむぎは軽く伸びをした。
窓から差し込む茜色の光が、壁を色付ける。
電気をつけよう。
つむぎは立ち上がった。
……なんだかお腹がすいた。
そういえば、みんなでポテトチップスとチョコをつまんだのが最後だった。コーヒーでも淹れようかな。
つむぎは自分の机に置いてあるマグカップを手に取った。
伏せられた本が目に入った。残りページがほとんどない。洸太郎たちのおかげだ。
つむぎは目元を和らげた。
一度マグカップを洗い、インスタントコーヒーの粉を入れた。クリープは二杯。
電動ポットのお湯を注いで、歩きながらくるくるとかき混ぜた。
テーブルに、一粒だけ箱入りのチョコが残っていた。碧人が買ったものだ。
つむぎは、それを口に入れた。
甘い。頭に染みる。
つむぎは椅子に腰掛け、マグカップに口をつけた。口に残った甘味をコーヒーが流した。
「はぁ」
思わず吐息が溢れた。
先生が淹れてくれるコーヒーには敵わないけど、これも十分おいしい。
……封筒を持った時だったなぁ。
つむぎは、将校行李の中を思い出した。
猫になって、過去の世界にいた。
慶一郎さんと正人さんに会った。
気が付けば研究室に戻っていた。
もし、本当に過去へ行っていたのだとしたら。
もし、もう一度過去へ行けるとしたら。
慶一郎を救うことはできるだろうか。
つむぎは、マグカップをぎゅっと握った。




