59.檻の中の戦士たち②
やがて市長の声が会場に響く。
「このG・Gトーナメント、いつものように、リング上での反則はありません!! それがルール!! 相手の戦意を喪失させた方が勝ち! ただそれだけです!! それではさっそく始めていきたいと思います!! 第1回戦第1試合はデスペラーズ対ライジング・サン! 両チーム、リングへ上がって来てください!!」
リングに上がったデスペラーズは、心たちがすでに何度か目にしているブラモンの様相と同様の、黒いブラモンたちだ。対するライジング・サンは、人間の若者たちのチーム。3人ともたすき状の鎖で左肩に固定されている肩当てをしている。両チームの各選手たちが、チーム毎にその身体が卓越感情を表す同じ色の光の膜で包まれているのが心たち3人にも見えた。
「はっきりと見えるあれはオーラだ!」
「デスペラーズは橙……期待ってことね」
「あぁ。そしてライジング・サンの黄色は喜びの卓越感情!ケイトと同じだね。黄色だけは忘れない。ケイトの髪の色と同じだから!」
「ふふ……」
「(やば……早く私も覚えなきゃ……!)」
プルチックの感情の輪の色の配置をすでに記憶していたレナとケイトの弾んだ会話を聞き、驚いた心は反省したのだった。
ウォォォォォォォォォォォォォ!!
「デスペラーズは自由を求め戦い続ける者たち!一方、ライジング・サンは、アグダラへの帰還という希望を宿した人間の若者たちです!」
市長の紹介が終わり、試合開始のゴングが鳴る。
カァァァァァァァーン!!
「僕たちが……アグダラを変える!」
ダダダダダッ!!
ゴングと同時に相手チームに突っ込んでいったのは、人間の若者たちだった。それぞれが異なるブラモン目掛けて突進していく。しかし、デスペラーズの動きには一切の無駄がなく、その一体一体は、感情を無にしたかの生き物の如く、機械のようにその攻撃を避け、腕が最短の軌跡で動くと、その鋭い爪が人間たちの急所を捉えた。大きく、するどいその爪たちは腹部に豪快に突き刺さったのだ。
「ぐ、ぐぅぅ……」
「殺しはしない。だが……動けまい……」
「あ、あぁ……」
「相手が我らで良かったな。また挑戦するんだな……だが!」
リングコーナー付近にいるリーダー格のブラモンが、倒れた少年の胸に足を乗せ、宣告する。
「決着だぁぁぁ!! 希望など!! アグダラには……不要なのだぁーっ!!」
「うぉぉぉおぉおお!!」
「いいぞ!! デスペラーズ!!」
歓声が闘技場を包む。その中で心とレナは、ただ唇を噛みしめてその光景を見つめる。
「私たちと同じ……人間側が普通にブラモンに負けた……あの人たちの信念が踏み潰されたんだ……」
「ブラモンたち、絶妙なカウンターだった……決着が早すぎる!!ここは…善も悪も関係なく……」
それは肉弾戦においてもカウンターを得意とするレナの言葉だった。
「勝者だけが称えられる戦場なんだわ……」
3人は、スイミーの言葉を思い出す。
「『アグダラは弱肉強食の世界』……」
「このトーナメント戦で優勝できないようであれば……到底、アグダラで生き残れるわけがないってことね……」
心、レナ、ケイトは、戦場の厳しさに改めて唇を噛みしめた。
――続く




