14.凍りつく空気
勘吉についていき、幾つかの部屋を通過したあと、207会議室に辿り着いた。勘吉がIDカードをドア横の装置に近づけるとドアが開き、入ると同時に部屋の中が明るくなった。他の部屋の約二倍の広さの会議室には、部屋中央を囲むようにミーティングテーブルと、数十人分の青い一人がけチェアが用意されていた。ミーティングテーブルの上には新品のノートとペンが置かれていた。
「まぁ適当に座ってくれ」
勘吉はそう言いながら部屋に入って左、正面奥の椅子にジェイダと並んで腰を下ろした。レナが心たちを先導し、入口近くの勘吉たちに向かって左側の並びに座った。
ウィィーーーーーン…
大きなスクリーンがゆっくりと垂れ下がってきた。勘吉がリモコンを天井中央付近にある装置に向けてボタンを押したのである。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ではこれから説明をしていくわけだが、断っておくことがある。これからお前たちは、いくつもの、想像を絶する知見を得ることになる。本当に……到底信じられないことの連続だ。そこでいっておきたいのは、一度で完璧に理解しようとしないことだ。パズルを一つずつ埋めていくように、断片から繋ぎ合わせていってくれ。少しずつ、輪郭を掴むようにだ。これは今日以降も言えることだ。お前たちがこの部屋を出る時、なんとなく理解してくれたら我々の今日の目的は達成だ。お前たちの目の前にあるノートとペンで自分なりに情報を整理してもらって構わない。良いな? では始める」
勘吉の言葉に、心は呆れたようにみんなとを見合わせた。
(なんなんだいきなり!? レナ……わたしたちは何かのセミナーに参加させられてるのか!?)
(はは……確かに……)
茜が苦笑いで同調すると、ケイトも小さく肩をすくめた。
(結構……強引ね……)
(みんな、ほんっとゴメン!!)
レナは、申し訳なさそうに頭を抱えていた。これから何を言われるのか、その真意を計りかねて困惑しつつも、心たちはまだどこか日常の延長線上にいるような余裕を持っていた。しかし、「では始める」と告げた勘吉の眼差しと声のトーンが、それまでの柔らかな雰囲気を一変させたのは確かだった。静寂を切り裂くようなその低く響く声には、到底無視し得ない重々しさがあり、数秒前までそこにあったはずの平穏は瞬時に霧散した。代わって逃げ場のない、ただならぬ緊張がその場を支配し、彼女たちの思考を凍りつかせたのだった。
――続く




