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11.地下への扉

 静寂が似合う長い渡り廊下では誰も喋ろうとはしなかった。そこを抜けると、右手には敷地の中に独立した門がある。靴を履いて入っていくと砂利敷きの広場があり、奥には重厚な構えの道場が見えた。家の敷地に入った時に母家と隣接しているように見えたのは、道場が予想よりもずっと大きかったためだ。数段の石階を上った入口の上には、濃褐色の木板に『神宮寺道場』と達筆な墨痕で刻まれた額字が掲げられていた。


「ここは私が師範を務める神宮寺道場だ。道場破りに来た輩は数しれずだが未だ不敗! それ故額字は古いままだ! どうだ!? 凄いだろう!」


 勘吉が道場の建物の前で、これみよがしに胸を張りながら左手で奥の神宮寺道場の額字を指差し、右手の親指はぐいっと自身を指さしながら満面の笑みを見せつけた。


「いいから入ろー?」

「行こう行こうー!!」

「く!おまえら……」

「ここだけでも広いな……ここが、レナと心の通う道場か~」

「ええ。どこも素敵……」


 心とレナは勘吉の自慢話を軽くあしらい入口に用意されていたスリッパに履き替えた。ケイトと茜もそれにならって道場内へと入っていった。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 道場内は薄暗く、この時は誰も居なかった。そこには、安らぎを与えてくれた庭園の風景とは違い、道場としての確固たる重々しさが漂っていた。ここに初めて来たケイトと茜は、ふざけた気持ちには最初からなっていなかったが、その重々しい雰囲気のなかでは、ただ屈服し従順になるしかなかった。心もレナも、道場内だけはその顔付きは変わり、稽古中と同じ振る舞いを見せる。道場と、そこに並ぶ仁王像の銅像に対して手を合わせ、お辞儀をする。そういう習わしなのかと、ケイトと茜も二人にならって一礼した。


 しかし目的の場所はこの道場ではなかったようで、レナと三人は、さらに正面左脇の奥へと歩く勘吉の後をついていった。その入口の扉が存在していることすら見落としてしまいそうな程、薄暗かった。


「へー!! こんなところに扉なんてあったんだ!? 三年近く通ってる場所なのに知らなかった!」

「……まぁ、来てくれ!」


 そこから先は、心にとっても未知のエリアだった。勘吉はまた親指をグッと立てると、その先へと進んでいった。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 扉を開けるとすぐに地下へと続く階段があった。その鉄製の非常階段を下りて行く。4つめの踊り場にくるとそこで勘吉が止まった。


「ん?」


 周りを見渡しても、何もない。心、ケイト、茜の三人がなぜここで止まるのか不思議に思っていると、勘吉は徐にズボンのポケットからスマホを取り出し、操作した。


ピッピッピッ……

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「え!!」

「なんと!!」

「すごい……!」


 左側の壁の一部が開き、20センチ四方の機械が現れた。勘吉がその正面に立ち一瞬静止すると、なんと踊り場正面の大きな壁が右にスライドしていった。


 それが開ききると大きく堅牢なステンレスのシャッターが姿を現した。そこに直に、大きな太字で『BRF』と白く印字されていた。茜はその下に小さく印字されている文字を読んだ。


「隠し部屋!?」

「ブラックリサーチファンデーション……?」

「フフ……IT技術の最先端へようこそ……」


 そういうと勘吉はシャッターを上げた。




――続く

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