作戦開始
わたくしの世界は村の中だけだった。外の世界に興味はあったけれど。
わたくしの村は一天教という竜牙国の北方、ホリーフィア王国の西方に位置する国で先祖を祀って信仰していて、代々、巫女を輩出している村だった。しかし、ホリーフィア王国の侵略により、多くの信徒が集まっていた国が滅び、一天教はわたくしたちの村と片手で数えることができるほどの村しか信仰されなくなってしまった。
「ヒメカ、外は危険だから出てはだめよ。」
その言葉は幼い頃に亡き母からの遺言だった。
「ヒメカ、外は危険だ。散策は諦めなさい。」
父からも言われ、村周辺を出回ることさえ、できなくなった。その父も山の土砂崩れに巻き込まれ、亡くなってしまった。
「ヒメカ様、ありがとうございます。助かりました。本当に村の外は危険が多いですよ。」
薬を煎じ、傷を治癒すると、村のみんなもそういう。
武力も何もない村なので村を守るのに精一杯で、わたくしはこの村の唯一の巫女。守らなくては、この村を。
ヒメカの作戦に従い、準備を終え、作戦を開始した。
「知恵の書・緑の章」
「風の精霊王!」
ヒメカの魔法によってできた植物由来のガス状の薬をナチュネの風の魔法で拠点の方向に飛ばした。
「ぐ、げほ、ごほ。」
拠点の方から苦しげな咳がいくつも聞こえ、そのあとに人がバタバタと倒れる音がした。
「本当に、大丈夫なのか?」
「ただの眠り薬です。」
「けっこう、ゴホゴホ言ってる人が、多いけど…。」
「ちょっと煙たい眠り薬です。」
多分、村を襲われた恨みが入ってる気がするぞ。
「全員、眠りましたね。」
「山賊を運ぶのは俺とシリウスだな。回復魔法はできるか?もし、攫われた人がいたら怪我をしているかもしれない。」
「はい。できますよ。」
「じゃあ、頼む。ナチュネは周囲の見張りを頼む。」
「はーい。」
拠点に入ると、それなりに多くの山賊が倒れていた。
「ざっと30人ってところか。多いな。」
「師匠、あの魔法、試してもいいですか?」
俺はシリウスとナチュネを弟子としていて、シリウスには無属性の魔法を教えている。
「そうだな。頼む。魔力は前にやった時の半分くらいでいい。」
「はい。星の鎖。」
シリウスは銀色の鎖を手渡し、俺は渡された鎖を引っ張り、強度を確かめる。
「うん、強度もいい。これで2、3日は持つな。」
「師匠には切られましたけどね。」
「すまん。」
山賊をだいたい5人ずつで手足を拘束し、近くに水を置いておく。
「この人たちはこの後どうするのですか?」
「それなりの権力者に連絡は昨日のうちに連絡してあるから、大丈夫。」
「そうですか。安心しました。」
そう言うとヒメカはホっと胸をなでおろしていた。
「ヒメカ、お前の作戦のお陰だと、俺は思うぞ。」
「い、いえ、偶々です。」
「そんなことないですよ。私たちには思い着きませんでした。」
「ヒメカさん、自信を持っていいと思う。あの作戦にはそれだけの価値がある。」
「…はい。ありがとうございます。」
どこか、ヒメカの表情は安心していた。




