村でのトラブル
船旅はナチュネが船酔いしたこと以外はたいしてトラブルなく船旅を終え、竜牙国に着いた。
「ここが竜牙国ですね。」
「ここが母さんの故郷。」
シリウスがそう呟くが正確には違う。
「シリウス、竜牙国と言っても竜のだいたいは山脈の向こう側に住んでいるから、お前の母さんの故郷とは限らない。」
「…そうか。」
「期待させたのにごめんな。」
頭を撫でてやると少し沈んだ顔が良くなった。
「さて、最短コースで山脈に行かなきゃな。」
「そうですね。」
「飛びましょうか?」
「いや、山脈のあたりは気流が乱れている。歩いて行くぞ。」
「は~い。」
大雑把に計算して山脈近くまで一週間くらいだろう。
登山3日目の山の中腹で村を見つけた。ここで休憩できるかどうか、門番の人と話す。
「すみません。一晩だけでもどこかで泊めていただけないでしょうか?」
「また来たのか!?俺たちは騙されんぞ!」
いきなり隙間から槍の先が飛び出してきた。
「何のことですか!?」
「そんな演技、誰が信用するか!?」
うーん、平行線。どうしよう。
「エンヤ。」
「巫女様!」
「その人たちは大丈夫です。通してあげてください。それとお祖父様に伝えてきてください。」
「は、はい。わかりました。」
門の向こう側の話し合いが終わり、門が開いて出てきたのは光人にとっては珍しい白髪のイオナと歳の近い少女だった。
「村の者が失礼をしました。少し事情があるのでお連れ様とともに着いてきてください。」
「わかった。」
イオナたちを呼び、巫女さんに着いていく。高い塀に囲まれた村の空気は重く、俺たちへの警戒の視線が刺さる。
「どうぞ、お入りきださい。」
巫女さんの案内でたどり着いた家は他の家より2周りほど大きく、古かった。その家の中の奥に通されると70代くらいのご老人がいた。この人がこの村の村長であり、巫女さんのお祖父様らしい。
「すみません。旅のお方、今、村は立て込んでまして、宿泊はご遠慮いただけませんでしょうか?」
「立て込んでいるとは?」
ご老人は下を向いて口籠る。
「お願いしてみては?お祖父様。」
「ヒメカ!しかし、これは村の問題で…。」
「政府は当てになりませんし、どうやら相当腕が立つようですよ。」
竜牙国は5年前にホリーフィア王国と戦争をして敗戦し、その代償として混血の人たち全員をホリーフィア王国に要求され、渡した。その関係で竜牙国の約4割の国民が減ったり、山脈の向こうへ逃げたために労働者が減り、竜牙国の兵力も縮小したことで竜牙国王都から離れた辺境の地には警備が行き届いていない現状だ。そこに俺たちのような旅ができるほどの自衛ができる奴らがきたら渡りに船だろう。
「はぁ、わかった。ただし、説得は自分でだ。」
巫女さんの説得に負けた村長はため息を吐いて部屋を出ていった。




