男の生涯
--ジェレミー老人は認知症患者として、介護施設で暮らしていた。
国家反逆罪を犯したということで若い頃から監獄暮らしをしていたが、身寄りのない彼を迎える者もなく、罪状も明確でなく、収容側の怠慢もあり、長年釈放されることがなかった。出所の頃にはかなりの高齢であった。
入所時の彼は比較的大人しい性格…といえば聞こえが良いが、言ってしまえば無気力な老人であった。しかし、施設内の上映会で、彼の若い頃の時代を題材としたとある映画を見ると、珍しく反応を示した。
そのため、施設でDVDを購入し、彼は、その映画を繰り返し好んで見るようになった。
数年後、街に映画のテーマパークが出来ることになり、施設利用者が招待を受けた。彼が好んでいた映画の体験も可能ということで、ジェレミー老人も参加した。
彼は初体験時、涙するほどの反応を見せた。そして、繰り返し行きたがった。介護施設では、自由に選択できる活動の中で、可能な限り連れて行くようにしていた。
しかし、そのうち、「この映画に出ているのは自分だ!」「彼女を迎えに行くんだ」と繰り返し訴えるようになり、職員は困り始めた。刺激が強すぎたのでは?と言う結論に至り、テーマパークへ連れて行かないようになり、DVDも隠した。
それから数ヶ月後、夜間にジェレミー老人は施設を抜け出そうと試み始めるようになった。
そして、ついに職員の目をかいくぐり、抜け出したことが発覚した後、テーマパークのその映画の体験施設の馬車で見つかったのだった。
こういったことが何度も繰り返されていた。




