表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
航図無限 ~最弱の水夫、ただ《道具超強化》だけで七つの海を制した男~  作者: 伝説の男前
第一部:出港編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/87

第8話 拾われる

近づいてくる船影は、先ほどの海賊船とは明らかに違う気品を纏っていた。


白い帆に、優雅な曲線を描く船体。舳先には、白鯨を象った彫刻が施されている。旗にはアウレリア王国の紋章と共に、私掠免状を示す印が掲げられていた。


「私掠船……」


蓮は緊張しながらも、小舟の上で立ち上がった。海賊よりは話が通じるはずだと、自分に言い聞かせる。とはいえ、私掠船もまた荒くれ者揃いだと聞いたことがある。油断はできない。


船が接近し、甲板から縄梯子が下ろされる。


「そこの小舟、身元を名乗れ!」


凛とした女性の声が、甲板から降ってきた。蓮が見上げると、そこには鎧を纏った若い女性が立っていた。歳の頃は蓮と近いだろうか。長い金髪を潮風になびかせ、腰には片手剣を提げている。その立ち姿には、蓮がこれまで見たことのないような凛々しさがあった。


「て、天草蓮といいます! アウレリア王国艦隊、エスペランサ号の乗組員でした! 嵐で流されて、その後、海賊に襲われて……」


「エスペランサ号だと?」


女性の表情が険しくなる。


「あの艦隊は、私も存じている。西方遠征の旗艦だ。まさか、生き残りがいたとはな」


女性は少し考えるような素振りを見せた後、部下に何かを命じた。


「梯子を下ろせ。この者を引き上げる」


「あ、ありがとうございます……!」


蓮は縄梯子を伝い、震える足で甲板へと上がった。周囲を取り囲む乗組員たちの視線が、ひどく居心地悪く感じられる。


「私はイザベラ・デ・ヴァルモンド。この私掠船《白鯨号》の船長だ」


改めて名乗った女性――イザベラは、蓮を値踏みするように見つめた。


「その盾、ずいぶんと様子がおかしいな。先ほどの砲撃、遠目に見えていたぞ。あの威力を、傷ひとつなく防ぎきったように見えたが」


蓮は言葉に詰まった。この不思議な力のことを、どう説明すればいいのか、まだ自分でも整理がついていない。


「……その、うまく説明できないんですけど。道具を、強化する力、みたいなものがあるみたいで」


「強化する力?」


イザベラの片眉が跳ね上がる。信じがたいという表情だったが、それでも興味を隠しきれないような光が、その瞳に宿っていた。


「まあいい。詳しい話は後で聞かせてもらう。今は休め。お前、ひどい顔色だぞ」


そう言われて初めて、蓮は自分の体が限界に近いことに気づいた。無人島での数日間、そして海賊との対峙。緊張が解けた途端、どっと疲労が押し寄せてくる。


「あ、ありがとう、ございます……」


蓮がそう言い終える前に、視界がぐらりと揺れ、意識が遠のいていった。


***


目を覚ましたとき、蓮は白鯨号の船室のひとつに寝かされていた。


「気がついたか」


声の方を見ると、イザベラが腕を組んで壁にもたれていた。


「あ……すみません、ご迷惑を」


「別に構わん。それより、聞きたいことが山ほどある」


イザベラはそう言うと、蓮の傍らにあった木の盾を手に取った。


「この力、詳しく聞かせてもらおう。使い方次第では、我々にとっても、お前にとっても、悪くない話になるかもしれない」


蓮は少し戸惑いながらも、これまでのことを――無人島での目覚め、鬼灯との再会、海賊船との対峙を、順を追って語った。イザベラは腕を組んだまま、時折目を細めながら、黙って耳を傾けていた。


「なるほどな」


すべてを聞き終えると、イザベラは静かに頷いた。


「アウレリア王国からの正式な召集ではなく、行き倒れの拾い者、というわけか。だが、その力は本物のようだ」


「あ、あの、それで、俺はこれからどうすれば……」


蓮が恐る恐る尋ねると、イザベラはふっと口の端を上げた。


「決まっているだろう。しばらくこの船に乗れ。次の航海で、その力とやらを見せてもらう」


その言葉に、蓮の中で何かがざわめいた。恐怖でも、不安でもない。これまで感じたことのない、微かな高揚感だった。


「はい……! よろしくお願いします!」


こうして天草蓮は、私掠船《白鯨号》の一員として、新たな航海に加わることになった。


無人島で目覚めた力を胸に、まだ誰も知らない、七つの海への航海が、今、静かに動き出そうとしていた。


(第一部・出港編 完)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ