幕間 ザガレスの独白
かつて大陸総督として、弱肉強食の思想を掲げていたザガレスは、今、白鯨号の片隅で、静かに、自らの半生を振り返っていた。
「私は、一体、何を追い求めていたのだろうな」
誰に語りかけるでもなく、ザガレスは、静かに呟いた。
弱者は淘汰されて当然。その思想のもと、多くの弱小勢力を踏みにじってきた。だが、その果てに待っていたのは、自分自身が、より大きな力の「駒」として、利用され尽くすという、皮肉な結末だった。
「蓮とやら」
ザガレスは、静かに、遠くで作業する蓮の姿を見つめた。
「お前は、私とは、正反対の道を歩んできたのだろうな」
弱き者として生まれ、弱き者として蔑まれながらも、蓮は、力による支配ではなく、理解と、そして、他者との絆によって、この場所まで辿り着いた。
「愚かだったのは、私の方だったのかもしれん」
ザガレスは、静かに、自嘲気味に笑った。
強さとは、他者を踏みにじる力のことではなく、他者と共に在ろうとする、確かな意志のことだったのかもしれない。
「蓮」
ザガレスは、静かに、蓮に声をかけた。
「なんでしょうか」
蓮が、振り返って応じる。
「明日の戦い、私にも、何か、手伝えることはあるか」
その問いに、蓮は、少し驚いたような表情を浮かべた後、静かに、しかし確かな温かさを込めて答えた。
「もちろんです。あなたの、これまでの経験も、きっと、力になります」
ザガレスは、静かに、その言葉を噛みしめた。
かつての敵から、こうして、共に戦う仲間として迎えられる日が来るとは、思ってもみなかった。
「ありがとう、蓮」
その言葉には、これまでの傲慢さの欠片もない、静かな、しかし確かな感謝の想いが込められていた。




