第62話 帰還
世界の果てから帰還した白鯨号は、世界海洋連邦の中心港へと、静かに帰投した。
「よくぞ、ご無事で……!」
港では、シズカ、紅蓮、そして各勢力の代表者たちが、蓮たちの帰りを、心待ちにしていた。
「世界の果てで、何があったのですか」
シズカの問いに、イザベラは、静かに、これまでの経緯を語り始めた。海図管理者との邂逅、蓮の力の真実、そして、ゼロ号の犠牲。
話を聞き終えた紅蓮は、しばらく、言葉を失っていた。
「そんな、大きな秘密が……」
「ゼロ号の犠牲、無駄にはできませんね」
シズカが、静かに、しかし確かな決意を込めて呟いた。
蓮は、これまでの旅路で得た、多くのことを、改めて胸に刻んでいた。自分の力が、単なる偶然の産物ではなく、この世界の均衡を守るための、確かな意志のもとに託されたものだったこと。そして、その責任の重さ。
「蓮」
紅蓮が、静かに、蓮に歩み寄った。
「あなたの選択、私は、正しかったと思うわ」
「紅蓮さん……」
「あなたが力を手放していたら、この世界の均衡は、もっと不安定なものになっていたかもしれない。あなたが背負い続けると決めたこと、それは、大きな勇気だったと思う」
蓮は、少し照れくさそうに、それでいて、確かな温かさを胸に、静かに頷いた。
***
その夜、世界海洋連邦の中心港では、蓮たちの帰還を祝う、静かな宴が催された。
「ゼロ号のことは、残念だった」
ガイウスが、静かに、盃を掲げた。
「あいつの犠牲を、俺たちは、忘れちゃいけないな」
「ええ」
蓮も、静かに頷いた。
「いつか、必ず、あいつを直す方法を見つけます」
その言葉に、周囲の仲間たちは、静かに、しかし確かな決意を込めて頷いた。
宴もたけなわの頃、蓮は、ふと、ひとり静かに、夜空を見上げていた。
「まだ、悩んでいるのか」
イザベラが、静かに、蓮の隣にやってきた。
「はい。海図管理者が言っていた、『もう一人の断片を持つ者』のこと、気になって」
「私も、同じことを考えていた」
イザベラは、静かに、夜空を見上げた。
「これまでの旅路で、私たちは、多くのことを成し遂げてきた。だが、この世界には、まだ、多くの謎と、そして脅威が眠っている」
「ですね」
蓮は、静かに頷いた。
「でも、今は、少しだけ、休みたい気持ちもあります。ゼロ号のことも、まだ、心の整理がついていなくて」
イザベラは、静かに、蓮の肩に、そっと手を置いた。
「無理に急ぐ必要はない。今は、この静かな時間を、大切にすればいい」
その言葉に、蓮は、静かな安堵を感じていた。
だが、その平穏な時間は、そう長くは続かなかった。
数日後、世界海洋連邦のもとに、ある不穏な報せが届くことになる。かつて失脚したはずのザガレスの背後に、これまで誰も知らなかった、真の黒幕の存在が、静かに姿を現し始めていた。




