表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
航図無限 ~最弱の水夫、ただ《道具超強化》だけで七つの海を制した男~  作者: 伝説の男前
第六部:大渦潮編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
61/87

第55話 水圧という壁

世界海洋連邦の建国から一年が経った、ある日のことだった。


「船長、少し、お耳に入れたいことが」


シズカが、珍しく緊張した面持ちで、イザベラのもとを訪れた。


「教団に伝わる、古い伝承の中に、気になる記述を見つけました」


シズカが広げたのは、これまで見たどの海図にも記されていない、海域についての記録だった。


「『世界の果て』と呼ばれる海域です。どの海図にも、その先が記されていない、完全な空白地帯」


「海図の空白域、か」


イザベラが、興味深そうに呟いた。


「伝承によれば、その海域には、巨大な渦潮が存在するとされています」


シズカは、慎重に続けた。


「そして、この渦潮を突破した者は、これまで一人もいないと」


蓮は、その説明を聞きながら、ふと、あの日感じた違和感を思い出した。


――なぜ、俺の力だけ、上限がないんだろう。


世界海洋連邦の建国以来、蓮の中には、ずっとその疑問がくすぶり続けていた。あらゆる道具を、際限なく強化できるこの力。理解を深めれば深めるほど、その効果は、どこまでも高まっていく。まるで、この力自体に、意図的に「上限」が設けられていないかのように。


「もしかしたら、その渦潮の先に、何か、この力の真実に繋がる手がかりがあるかもしれません」


蓮が、そう口にすると、イザベラは、真剣な表情で頷いた。


「よし。次なる航海の目標を、その世界の果ての渦潮とする」


***


「大渦潮」と呼ばれる海域への航海が始まって数週間、艦隊は、これまでのどの航海とも異なる、異様な緊張感に包まれていた。


「船長、外縁に近づいてきています」


見張りの報告に、蓮は甲板から、遠くに見える異様な光景を見つめた。


水平線一帯が、巨大な渦を巻きながら、絶え間なく轟音を立てている。近づくだけで、船体全体が、これまで経験したことのない振動に見舞われた。


「これは……」


「船体が軋んでいます!」


乗組員の悲鳴じみた報告に、蓮は慌てて船体の状態を確認した。


強化された旗艦であっても、渦潮の外縁が生み出す水圧は、これまでのどんな強化でも想定していなかった、異次元の負荷を船体に与えていた。


「一旦、退避しましょう!」


ヴェルミナの指示で、艦隊は渦潮から距離を取った。


「あれが、水圧という壁、か」


イザベラが、遠ざかる渦潮を見つめながら呟いた。


「これまでの強化では、太刀打ちできそうにありません」


蓮は、自分の船体強化の限界を、改めて突きつけられた思いだった。


「蓮、大丈夫か」


「はい……。でも、これは、正直、これまでとは桁違いの理解が必要になりそうです」


蓮は、遠くに見える渦潮を見つめながら、静かに、しかし確かな決意を固めた。


「水圧そのものに耐えられる船体を、作らなければなりません。今までの理解の延長では、たぶん足りない」


『蓮殿、私の記憶の中に、失われた文明が研究していた、水圧耐性に関する技術の断片があるかもしれません』


ゼロ号が、静かに申し出た。


「頼む、ゼロ号」


こうして、蓮とゼロ号、そしてドルシスを中心とした、これまでで最も困難な強化への挑戦――水圧という、目に見えない巨大な壁を突破するための研究が、始まることとなった。


世界の果てに眠る真実へと辿り着くための、最後にして最大の挑戦が、静かに幕を開けようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ