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航図無限 ~最弱の水夫、ただ《道具超強化》だけで七つの海を制した男~  作者: 伝説の男前
第五部:世界周航編

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第52話 タケルとジロウ

要塞中枢からの未知の声に、艦隊全体が緊張に包まれる中、意外にも、事態はそれ以上の戦闘には発展しなかった。


『侵入者、いや――対話を求める者、と再定義します』


その声は、静かに、しかし確かな知性をもって語りかけてきた。


『あなた方は、我らの防衛機構を、破壊ではなく、無力化する形で突破しました。これは、我らのデータベースにおいて、極めて稀有な事例です』


「対話が、できるということですか」


イザベラが、慎重に問いかけた。


『可能です。ただし、詳細な対話には、然るべき手続きと時間が必要となります』


こうして、機巧文明の中枢との、本格的な交渉の場が、慎重に整えられていくこととなった。


***


交渉の準備が進む一方、艦隊の甲板では、これまでの緊張をほぐすように、賑やかな声が響いていた。


「おいジロウ、聞いたか! あの中枢とやら、本当に喋ったらしいぜ!」


「聞いた聞いた! いやぁ、タケル、俺たちの艦隊も、とうとう機巧の遺跡と会話するレベルまで来ちまったか!」


賑やかにやり取りしているのは、艦隊の見張り台を任されている、タケルとジロウという二人組だった。世界周航の途中、寄港した島で意気投合し、そのまま艦隊に加わった、掛け合い漫才師のような二人組である。


「しっかし、蓮の兄貴の強化倍率、もうわけわかんねえレベルだよなあ」


タケルが、感心したように言うと、ジロウが即座に突っ込んだ。


「わけわかんねえ、じゃ説明になってねえだろ! ちゃんと解説しろ!」


「あ、そうだった! えー、皆さん、ご覧ください! 兄貴が最初に強化した小刀、切れ味たったの千倍でした!」


「小せえ!」


「それが今や、要塞の防衛機構をぶち抜く一撃ですよ! 倍率で言えば、もはや天文学的数字!」


「数字も出せてねえじゃねえか!」


二人の掛け合いに、周囲の乗組員たちから、思わず笑いが起こった。緊張続きの航海の中で、この二人の存在は、艦隊にとって、貴重な息抜きの種となっていた。


「なあ蓮の兄貴、ちょっといいか」


タケルが、蓮のもとへと歩み寄ってきた。


「あ、はい、なんでしょう」


「俺たち思うんだけどよ、兄貴の力の凄さって、皆、正直、実感しきれてねえと思うんだよな」


「そう、なんですか?」


「せや」


ジロウが続けた。


「だから俺たちが、見張り台から、兄貴の強化した装備の性能とか、戦況の解説とかを、面白おかしく実況することにしたんすわ」


「実況、ですか」


「せや! 兄貴のすごさを、もっと皆にわかりやすく伝える! それが俺たちの役目や!」


タケルとジロウの提案に、蓮は少し照れくさそうに、それでいて嬉しそうに笑った。


「よろしくお願いします」


「任しとけ!」


こうして、この日以降、艦隊での大きな戦闘や強化の場面には、必ずタケルとジロウの軽妙な実況が入るようになった。時に大袈裟に、時に的確に、蓮の力の凄さを、誰もがわかりやすい言葉で伝えてくれる二人の存在は、緊張の続く世界周航において、乗組員たちの士気を支える、大きな存在になっていった。


「にしても、これから始まる交渉、どうなることやらなあ」


タケルが、要塞の方角を見やりながら呟いた。


「ま、蓮の兄貴たちなら、なんとかするやろ」


ジロウの気楽な言葉に、蓮は苦笑しながらも、静かに頷いた。


未知の文明との、本当の意味での対話が、いよいよ始まろうとしていた。


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