第48話 獅堂グレン、参戦
機巧の巨人たちとの戦闘を制した艦隊は、警戒を解かないまま、大陸の海岸へと上陸を試みた。
「静かだな……」
イザベラが、辺りを見渡しながら呟いた。先ほどまでの激戦が嘘のように、大陸は静寂に包まれている。
『この静けさ、少し不自然です』
ゼロ号が、蓮の肩の上で、警戒するように呟いた。
そのとき、行く手の茂みから、ひとりの男が姿を現した。
大柄な体躯に、使い込まれた一振りの刀。異国の意匠を纏いながらも、その佇まいには、蓮たちの世界の武人にも通じる、確かな風格があった。
「ほう、随分と派手にやったものだな」
男は、崩れ落ちた機巧の巨人たちを一瞥し、愉快そうに笑った。
「お前たちは、何者だ」
イザベラが、警戒しながら尋ねる。
「俺は、獅堂グレン」
男は、豪快に名乗った。
「かつて、剣一本でこの大陸の一角を制した、しがない渡り人だ」
「剣一本で、大陸を、ですか」
蓮が驚いて尋ねると、獅堂グレンは、不敵な笑みを浮かべた。
「大袈裟に聞こえるかもしれんが、事実だ。もっとも、それも、この大陸のごく一部の話に過ぎんがな」
ガイウスが、興味深そうに一歩前に出た。
「お前、腕は立ちそうだな」
「ほう、お前もか」
獅堂グレンとガイウスの間に、剣士同士特有の、張り詰めた空気が流れた。
「まあ、待て」
イザベラが、二人を制した。
「獅堂殿、なぜこの海岸に、あれほどの機巧兵器が配備されていたのか、ご存知ですか」
獅堂グレンの表情が、わずかに真剣なものへと変わった。
「この大陸には、遥か昔、非常に高度な技術を持つ文明が存在していたと言われている。だが、その文明は、ある時を境に、忽然と姿を消した」
「姿を消した……」
蓮の脳裏に、ゼロ号との関連が浮かんだ。
「残された機巧兵器たちは、いまだに、文明が定めた『侵入者排除』の命令に従い続けている。俺も、この大陸に足を踏み入れた当初、散々な目に遭ったものだ」
獅堂グレンは、苦笑しながら続けた。
「だが、長年の経験で、奴らの弱点や動作パターンは、ある程度把握している。もし良ければ、案内役として、力を貸そうか」
イザベラは、しばし思案した後、静かに頷いた。
「ありがたい申し出です。獅堂殿の知見をお借りできれば、心強い」
「決まりだな」
獅堂グレンは、豪快に笑いながら、蓮の方を見た。
「それにしても、あの機巧の巨人を、砲撃だけで沈黙させるとは、大したものだ。お前、名は」
「あ、天草蓮です」
「蓮、か。ふん、面白い連中が集まっているようだな」
獅堂グレンは、興味深そうに艦隊全体を見渡した。
『獅堂殿、失礼ながら、質問がございます』
ゼロ号が、蓮の肩から声を上げた。
『あなたは、この大陸の失われた文明について、他に何かご存知でしょうか』
獅堂グレンは、機巧の鳥に驚いた様子を見せた後、興味深そうに頷いた。
「機巧の鳥まで連れているとはな。ああ、詳しいことは、この先――大陸の奥地に進めば、いずれわかるだろう」
その言葉に、蓮たちの間に、新たな緊張と、そして期待が広がっていった。
こうして、未知の大陸を制した剣士――獅堂グレンもまた、世界周航艦隊の新たな仲間として加わることとなった。失われた文明の謎を解き明かす旅は、こうして、さらに大きな局面へと進んでいくこととなる。




