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航図無限 ~最弱の水夫、ただ《道具超強化》だけで七つの海を制した男~  作者: 伝説の男前
第四部:海洋覇権編

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第41話 大商会艦隊の内紛

私掠船同盟との対話に一定の道筋がついた後、白鯨号は、ヴェルミナのかつての所属先――大商会艦隊のもとへと向かった。


「私が離れてから、もう三年になる」


航海の道中、ヴェルミナは珍しく、感慨深げな表情を見せた。


「正直、複雑な思いはある。だが、この統合構想を進める以上、避けては通れない相手だ」


「ヴェルミナさんは、どうして大商会艦隊を離れたんですか」


蓮が尋ねると、ヴェルミナは少し間を置いてから答えた。


「合理性を欠いた内部抗争に、嫌気が差したからだ。詳しくは、着いてから話そう」


大商会艦隊の本拠地――巨大な商業港に到着すると、そこには予想外の混乱が広がっていた。


「これは……」


港のあちこちで、商会の紋章を掲げた者たちが、互いに睨み合っている。明らかに、内部で深刻な対立が起きていることが見て取れた。


「相変わらずのようだな」


ヴェルミナが、苦々しい表情で呟いた。


「大商会艦隊は、複数の商家が緩やかに連合した組織だ。利害が一致している間は結束するが、ひとたび利害が対立すれば、途端に内輪揉めが始まる」


「今回は、何が原因なんでしょうか」


「おそらく、後継者争いだろう。艦隊を率いていた老練な商会主が、先日亡くなったと聞いている」


港の一角で、ヴェルミナの旧知らしき人物が、彼女に気づいて駆け寄ってきた。


「ヴェルミナ殿ではないか! まさか、戻ってきてくれたのか!」


「事情があって、立ち寄っただけだ」


ヴェルミナは冷静に応じたが、相手は縋るような表情を崩さなかった。


「頼む、力を貸してくれ! 商会主様が亡くなられて以来、後継の座を巡って、艦隊全体が真っ二つに割れているのだ。このままでは、艦隊そのものが崩壊してしまう」


イザベラが、ヴェルミナに視線で問いかける。ヴェルミナは、しばし逡巡した後、静かに頷いた。


「事情を、詳しく聞かせてもらおう」


***


詳しい経緯を聞いたところ、対立の原因は、二人の有力な商家の当主が、それぞれ艦隊の指導権を主張し合っていることにあった。片方は、これまで通りの交易重視路線を、もう片方は、より積極的な軍事拡大路線を主張しているという。


「このままでは、艦隊が二つに分裂しかねない」


ヴェルミナは、状況を整理しながら、険しい表情を浮かべた。


「蓮、お前の力で、何かできることはあるか」


イザベラの問いに、蓮は少し考え込んだ。


「船や砲を強化することはできますが、人と人との対立を解決するのは、俺の力の及ぶところじゃないと思います」


「それでも、何か糸口があるかもしれない」


ヴェルミナが、思案しながら口を開いた。


「両陣営に共通しているのは、艦隊の弱体化を恐れているという点だ。もし、五大海洋勢力の統合という構想を示すことができれば――」


「どちらの路線を選ぶかという対立自体を、無意味にできるかもしれない、ということですね」


蓮が続けると、ヴェルミナは頷いた。


「交易重視であれ、軍事拡大であれ、統合構想が実現すれば、艦隊単独で背負うべきだった負担そのものが、大きく軽減される。両陣営を説得する材料には、なり得るはずだ」


イザベラが、決意を込めて頷いた。


「よし。両陣営との対話の場を、設けてもらえるよう頼んでみよう」


こうして、大商会艦隊内部の深刻な内紛の渦中へと、蓮たちは足を踏み入れることとなった。統合構想の実現に向けて、これまでとは異なる種類の困難が、彼らの前に立ちはだかろうとしていた。


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