表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
航図無限 ~最弱の水夫、ただ《道具超強化》だけで七つの海を制した男~  作者: 伝説の男前
第四部:海洋覇権編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/87

第37話 紅蓮、登場

島嶼連合の領海に入ると、白鯨号は、これまでとは異なる緊張感に包まれた。


「船長、周囲に複数の小型船。包囲されつつあります」


見張りの報告に、イザベラは冷静に応じた。


「慌てるな。友好の使者として来たことを、しっかりと示せ」


白い旗を掲げた白鯨号は、慎重に島嶼連合の中心地――巨大な珊瑚礁に囲まれた本拠地へと進んでいった。


「止まれ」


凛とした、それでいてどこか艶やかな女性の声が響いた。船上に姿を現したのは、鮮やかな紅色の衣を纏った、美しい女性だった。長い黒髪を潮風になびかせ、腰には島嶼独特の意匠を凝らした剣を提げている。


「私は、島嶼連合を束ねる者、紅蓮」


紅蓮は、まるで花魁を思わせるような、艶やかで独特の口調で名乗った。


「白鯨号の方々が、何用あってこの海域に踏み入ったのか、聞かせてもらいましょうかしら」


イザベラが一歩前に出た。


「私は白鯨号船長、イザベラ・デ・ヴァルモンド。此度は、友好と協力を求め、参上いたしました」


「友好、ですって」


紅蓮の目に、冷ややかな色が浮かんだ。


「王国の名を冠する者たちの『友好』というものが、これまでどれほど多くの島々を踏みにじってきたか、あなた方はご存知なのかしら」


その言葉には、深い怒りと、それ以上の悲しみが滲んでいた。


「紅蓮殿」


蓮は思わず口を開いた。


「その痛み、俺なりに、少しだけわかる気がします」


「あなたは……?」


紅蓮の視線が、蓮に向けられた。


「天草蓮といいます。俺は、これまで、ザガレスという大陸総督に狙われた、弱小の入植地をいくつも見てきました。力のない者が、大きな力に踏みにじられる痛みは、俺も、痛いほど知っているつもりです」


紅蓮はしばし、蓮を値踏みするように見つめた。


「随分と、若い割に、口の減らない水夫ね」


「す、すみません……」


「けれど」


紅蓮の表情が、わずかに緩んだ。


「その言葉に、嘘は感じられないわ。少なくとも、これまで会ってきた王国の使者たちよりは、ね」


紅蓮は、腰の剣に手を添えたまま、続けた。


「私の故郷は、かつて、王国の名を借りた侵略者たちによって、跡形もなく滅ぼされたわ。生き残ったのは、ほんの一握りの者たちだけ」


「……」


「それ以来、私は、この島嶼連合を束ね、二度とあのような蹂躙を許さないと誓ったの」


紅蓮の声には、深い決意と、それでも消えない古傷のようなものが、確かに滲んでいた。


「今回の話、簡単には信用できないわ」


紅蓮は、鋭い視線をイザベラに向けた。


「だけど――」


そう言いながら、紅蓮の視線は、再び蓮の方へと戻ってきた。


「あなたの言葉には、興味を持ったわ、天草蓮。少しだけ、話を聞かせてもらいましょう」


こうして、島嶼連合との初めての接触は、完全な決裂には至らず、しかし完全な和解にも至らない、ぎりぎりの均衡のうちに、ひとまずの一区切りを迎えることとなった。


蓮は、紅蓮の瞳の奥に垣間見えた深い悲しみを、忘れることができずにいた。この均衡を、本当の意味での協力関係へと変えるためには、まだ多くの道のりが必要だと、蓮は感じていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ