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航図無限 ~最弱の水夫、ただ《道具超強化》だけで七つの海を制した男~  作者: 伝説の男前
第三部:植民地戦争編

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第33話 シズカとの出会い

ザガレスの陰謀が発覚してから数日後、カラベラの港に、見慣れぬ一隻の船が入港した。


白を基調とした美しい船体には、波と太陽を象った紋章が描かれている。海洋教団――この海域一帯で広く信仰を集める宗教組織の船だと、蓮はヴェルミナから説明を受けた。


「教団が、なぜこちらへ」


イザベラが警戒しながら港へと向かうと、船から降り立ったのは、上品な衣を纏った若い女性だった。


「初めまして。海洋教団より参りました、シズカと申します」


女性は、深々と、それでいて洗練された所作で一礼した。京訛りにも似た、独特の柔らかな言葉遣いが印象的だった。


「教団の巫女長を務めさせていただいております」


「巫女長……。このような若さで、ですか」


イザベラが驚いたように尋ねると、シズカは静かに微笑んだ。


「教団では、年齢よりも、天啓を受け取る資質が重んじられますゆえ」


蓮は、その落ち着いた佇まいに、どこか只者ではない気配を感じ取った。


「して、本日の御用向きは」


イザベラが尋ねると、シズカは真剣な表情に変わった。


「大陸総督ザガレス様の一件、教団にも報告が届いております」


「やはり、そちらにも」


「教団は、この海域の均衡を重んじる立場にございます。ザガレス様の勢力拡大は、その均衡を大きく乱すもの。看過できるものではございません」


シズカの言葉に、蓮たちは顔を見合わせた。


「教団として、我々に協力してくださる、ということですか」


ヴェルミナが慎重に尋ねると、シズカは頷いた。


「直接的な武力行使こそ叶いませんが、教団は各地に広い人脈を有しております。外交的な支援、そして情報の提供であれば、いくらでもお力になれましょう」


イザベラは、しばし考え込んだ後、静かに頭を下げた。


「感謝いたします。今の我々には、あらゆる支援が必要です」


「もったいなきお言葉」


シズカは穏やかに応じた後、ふと蓮の方へと視線を向けた。


「あなたが、噂の水夫殿ですね」


「あ、はい。天草蓮です」


「あなたのお力のこと、教団内でも様々な憶測が飛び交っております」


シズカの目に、静かな探究心のようなものが宿った。


「対象への理解に応じて力を発揮する、と伺いました。それは、この世界の理――均衡の在り方にも通じる、大変興味深い性質かと存じます」


蓮は、シズカの言葉の意味を、完全には掴みきれなかった。だが、その言葉の奥に、何か深い洞察があることは、確かに感じ取れた。


「教団としても、あなたのお力については、今後、注意深く見守らせていただきたく存じます」


その言葉には、単なる好奇心以上の、どこか慎重な響きが込められているように、蓮には感じられた。


***


シズカの来訪をきっかけに、白鯨号とカラベラは、海洋教団という新たな協力者を得ることとなった。教団の広範な人脈により、ザガレスの動向に関する情報は、これまで以上に詳細に届くようになっていく。


「これで、少しは動きやすくなる」


イザベラが、シズカを見送りながら呟いた。


「教団の巫女長、か。あの落ち着きよう、只者ではないな」


「はい、なんだか、俺たちの想像もつかないような、大きなものを見ているような感じがしました」


蓮の言葉に、イザベラも同意するように頷いた。


この日出会ったシズカという人物が、後にどれほど重要な役割を果たすことになるのか――このときの蓮たちは、まだ知る由もなかった。


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