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航図無限 ~最弱の水夫、ただ《道具超強化》だけで七つの海を制した男~  作者: 伝説の男前
第三部:植民地戦争編

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第30話 和解

宴も落ち着きを見せ始めた頃、イザベラは蓮を捜して岸壁へとやってきた。


「こんなところにいたのか」


「あ、船長」


蓮は慌てて居住まいを正した。イザベラは小さく笑い、蓮の隣に腰を下ろした。


「ヴェルミナから聞いた。また、ひとりで塞ぎ込んでいたそうだな」


「その、色々考えることがあって……」


蓮が言葉を濁すと、イザベラはしばらく黙って海を見つめていた。


「私も、少し話したいことがある」


「はい」


「先日の、私の独断行動のことだ」


イザベラは静かに切り出した。


「あのとき、私は功を焦っていた。お前の力に頼り切りになっている自分を、認めたくなかった」


「船長……」


「だが、この数日、あの決戦を振り返って、改めて気づいたことがある」


イザベラは蓮の方へと向き直った。


「お前の力は、確かに絶大だ。だが、それを正しく使うための判断や、皆をまとめる指揮――そういうものは、依然として私自身の役割だ。お前の力だけでは、あの勝利は成し得なかった」


「それは、俺も同じことを思ってました」


蓮は素直に頷いた。


「船長の判断があったから、皆が力を合わせられたんだと思います」


イザベラは、蓮の言葉に、少し照れくさそうな表情を浮かべた。


「――こういう時、素直に喜べばいいものを、どうにも意地を張ってしまう性分でな」


「船長らしいと思います」


蓮がそう言うと、イザベラは思わず吹き出した。


「お前にそう言われるとはな」


しばらくの沈黙の後、イザベラが改まった調子で口を開いた。


「蓮」


「はい」


「私はお前のことを、単なる戦力として見ているわけではない」


イザベラの声が、わずかに柔らかくなった。


「あの無人島から拾い上げたときから、ずっと見てきた。誰よりも謙虚で、誰よりも仲間を想い、それでいて誰よりも自分自身を認められない――そんなお前の姿を」


蓮は思わず息を呑んだ。


「船長……」


「これは、船長としての言葉ではなく、私個人としての想いだ」


イザベラは、まっすぐに蓮を見つめた。


「お前が、隣にいてくれることが、私にとって、思っていた以上に大切なものになっている」


蓮の胸が、大きく高鳴った。これまで感じたことのない種類の緊張と、そしてそれを上回る温かさが、胸の内に広がっていく。


「俺、なんかで、いいんでしょうか」


「『なんか』ではない」


イザベラは、蓮の言葉を遮るように、はっきりと言った。


「お前は、お前だ。それ以上でも、それ以下でもない」


蓮は、しばらく言葉を発せずにいた。だが、やがて、静かに頷いた。


「ありがとう、ございます。俺も――船長のことを、大切に思ってます」


その夜、二人の間にあった小さな亀裂は、こうして、確かな絆へと変わっていった。


月明かりに照らされた岸壁で、蓮とイザベラは、しばらくの間、言葉少なに、それでいて確かな温もりを分かち合いながら、静かな時間を過ごしていた。


だが、その穏やかな時間は、翌日訪れる、思いがけない再会によって、再び大きく揺れ動かされることになる。


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