第26話 ガレオン艦隊建造
決戦までの二日間、カラベラの入り江は、これまでにない活気に包まれていた。
「こっちの竜骨、まだ使えるぞ! 運んでくれ!」
「帆布はこっちだ! 手が空いてる者は手伝ってくれ!」
ドルシスの指揮のもと、入植地の住民総出で、廃船の解体と組み直しが進められていく。かつては見捨てられていた朽ちた船体たちが、次々と新たな骨組みへと生まれ変わっていった。
「蓮殿、こちらの船体、頼めますかな」
ドルシスに呼ばれ、蓮は組み上がったばかりの船体に歩み寄った。まだ骨組みだけの状態だったが、ドルシスの巧みな設計により、しっかりとした基盤ができあがっている。
「はい、任せてください」
蓮はこれまでの経験を活かし、船体の構造を素早く理解していく。ドルシスから随時説明を受けながら、それぞれの継ぎ目、木材の質、補強の要所を丹念に確認していった。
――頑丈に、そして速く。荒れた海でも、しっかりと戦える船体になれ。
強化のたびに、朽ちていた廃船が、輝きを取り戻していく。一隻、また一隻と、新たな艦隊が姿を現していった。
「馬鹿な……。あの朽ち果てた廃船が、こんな……」
作業を手伝っていた住民のひとりが、目の前の光景に呆然と呟いた。
夜を徹しての作業が続き、蓮は幾度となく疲労で倒れそうになった。それでも、カラベラの住民たちの必死な様子を見るたび、蓮は力を振り絞り続けた。
「無理はするなよ、蓮」
ガイウスが心配そうに声をかけてくる。
「大丈夫です。あと少し、頑張れば……」
蓮はそう言いながらも、体力の限界が近いことを自覚していた。だが、ここで止まるわけにはいかない。この島の未来が、自分の手にかかっているのだ。
「少し休め」
ドルシスが、蓮の肩に手を置いた。
「無理をして倒れては、元も子もありませんぞ。私も、若い頃、同じ過ちを犯したことがあります」
その言葉には、何か過去の重みが滲んでいるように感じられた。
「ドルシスさんも、無理をしたことが?」
「ええ、若気の至りというやつです。いずれ、機会があれば、お話ししましょう」
ドルシスはそう言うと、静かに微笑んだ。蓮はその笑顔の奥に、何か語られていない過去があることを感じ取った。
***
決戦前日の夜、ついに新たな艦隊――ガレオン船五隻からなる艦隊が、その全貌を現した。
「これが、俺たちの艦隊……」
蓮は完成した船体を見上げ、感慨深げに呟いた。かつては朽ち果てていた廃船が、今では白鯨号にも劣らぬ、堂々たる姿へと生まれ変わっている。
「見事だ」
イザベラが、艦隊を見渡しながら満足げに頷いた。
「これならば、本隊とも互角以上に渡り合える」
ヴェルミナも、緻密な計算を交えながら分析を加えた。
「白鯨号一隻に、新造ガレオン五隻。合計六隻の艦隊で、敵の十五隻に挑む。数の上では不利だが、質では圧倒的に上回っている」
「あとは、明日の戦い方次第だな」
イザベラが、艦隊を前に静かに闘志を燃やしていた。
蓮もまた、完成した艦隊を見つめながら、これまでにない充実感と、そして決戦への緊張を、同時に噛みしめていた。
カラベラの命運を賭けた決戦は、もう目前に迫っていた。




