幕間 ガイウスの修行録
ガレオン艦隊建造の慌ただしさの合間、ガイウスは、ひとり、剣の稽古に汗を流していた。
「ふん、ふん……!」
素振りを繰り返しながら、ガイウスの脳裏には、流れ着いた異郷の地で、剣を叩き込まれた日々が蘇っていた。
「お前は、才能だけはある。だが、それだけで満足するな」
かつての師の言葉が、今も、ガイウスの耳に、鮮明に残っている。
エスペランサ号で「落ちこぼれ」と呼ばれていた頃のガイウスは、確かに、圧倒的な身体能力を持ちながらも、それを活かす術を、正しく理解していなかった。
「蓮のやつは、変わったよな」
素振りの手を止め、ガイウスは、遠くで作業する蓮の姿を見つめた。
かつて、甲板の隅で震えていた、あの気弱な水夫。今では、艦隊全体の命運を左右するほどの力を、静かに、しかし確かに、振るっている。
「俺も、負けてられねえな」
ガイウスは、再び剣を構えた。
蓮の力が、理解の積み重ねによって生まれるものだとしたら、自分の剣もまた、ただの才能任せではなく、より深い理解によって、さらに磨かれるべきなのかもしれない。
そんな思いを胸に、ガイウスは、その日、いつも以上に、長く、剣を振り続けた。
夕暮れの中、汗だくになったガイウスのもとに、ドルシスが、静かに歩み寄ってきた。
「精が出ますな、ガイウス殿」
「ドルシスの爺さんか。ちょうどいい、聞きたいことがあったんだ」
「ほう、何でしょう」
「あんたの故郷じゃ、剣術と道具の技術、どう組み合わされてたんだ?」
ガイウスの問いに、ドルシスは、少し驚いたように、しかし興味深そうに笑った。
「面白い質問をなさる。よろしければ、少し、お話ししましょうか」
こうして、決戦前の慌ただしい日々の中、ガイウスとドルシスの、思いがけない対話の時間が、静かに始まることとなった。




