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航図無限 ~最弱の水夫、ただ《道具超強化》だけで七つの海を制した男~  作者: 伝説の男前
第三部:植民地戦争編

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第20話 ガイウス登場

カラベラへ向かう航海の途中、白鯨号は補給のため、小さな港町に立ち寄った。


「食料と水の補給が終わり次第、すぐに出港する。上陸は最小限にとどめろ」


イザベラの指示のもと、蓮も水の樽を運ぶために港へと降りた。慌ただしい補給作業の最中、蓮はふと、見覚えのある背中を見つけた気がした。


「――え?」


大柄な体躯、日に焼けた肌、そして腰に提げた立派な剣。振り返ったその顔を見て、蓮は思わず息を呑んだ。


「ガイウス……?」


「ん?」


声をかけられた男が、怪訝な顔で振り返る。次の瞬間、その表情が驚きに変わった。


「――蓮、か? お前、蓮だよな!?」


「久しぶりです、ガイウスさん!」


蓮は思わず駆け寄った。ガイウス・フォルセイン。エスペランサ号での同期水夫であり、かつては蓮と同じく「落ちこぼれ」と呼ばれていた男だった。もっとも、その理由は蓮とは正反対――規格外の身体能力を持ちながら、団体行動が苦手で、何かと問題を起こしていたためだった。


「生きてたのか! エスペランサ号が嵐で散り散りになったって聞いて、ずっと気にしてたんだぜ」


ガイウスは蓮の肩をがしっと掴み、豪快に笑った。


「ガイウスさんも、無事だったんですね」


「まあな。俺は運がいいんだよ」


そう言って笑うガイウスだったが、蓮はその立ち姿に、以前とは明らかに違う何かを感じ取った。以前は粗野なだけだった剣の構えが、今では隙のない、洗練されたものになっている。


「ガイウスさん、その剣の腕、前と全然違いますね」


「気づいたか」


ガイウスは少し得意げに、腰の剣に手をやった。


「あの後、俺は流れ着いた土地で、腕利きの剣士に拾われてな。散々鍛えられたのさ。おかげで、今じゃそこそこ名の知れた傭兵になった」


「そうだったんですか……」


蓮は素直に感心した。同じように艦隊からはぐれた者同士でも、辿った道はまるで違う。ガイウスは自らの腕を磨き、蓮は道具を理解する力を磨いた。


「お前はどうなんだ? まさか、まだ樽運びしてるわけじゃないだろうな」


ガイウスの軽口に、蓮は少し困ったように笑った。


「実は、俺にも、色々あって……」


そこへ、補給を終えたヴェルミナが、蓮を探して駆けつけてきた。


「蓮、ここにいたか。出港の準備が――」


ヴェルミナはガイウスの姿を見て、ふと足を止めた。


「知り合いか」


「はい、エスペランサ号での同期です。ガイウスさん」


「ほう」


ヴェルミナはガイウスを値踏みするように見つめた。


「腕は立ちそうだな」


「そりゃどうも」


ガイウスは不敵に笑い返した。


「なあ蓮、お前ら、これからどこに向かうんだ?」


蓮が一瞬言葉に詰まると、ヴェルミナが代わりに答えた。


「カラベラという小さな植民地だ。侵略艦隊に包囲されている。救援に向かうところだ」


「カラベラ、か」


ガイウスの表情が、わずかに変わった。


「実は俺、今ちょうど、その方面の護衛依頼を受けたところでな。行き先が同じなら、都合がいい」


「本当ですか!」


蓮は思わず声を上げた。


「腕の立つガイウスさんが一緒なら、心強いです」


ヴェルミナも、しばし思案した後、頷いた。


「船長に確認は取るが、悪くない話だ。人手はいくらあっても足りない」


「決まりだな」


ガイウスはニヤリと笑い、剣の柄を軽く叩いた。


「久しぶりの再会で、いきなり戦場に一緒に向かうってのも、なんだか俺たちらしいじゃねえか」


その言葉に、蓮も思わず笑みをこぼした。頼りない自分と、豪快な親友。かつてのままの関係性が、そこには確かに残っていた。


こうしてガイウスもまた、カラベラ救援の航海に加わることになった。白鯨号は再び錨を上げ、戦火の迫る植民地へと針路を取った。


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