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航図無限 ~最弱の水夫、ただ《道具超強化》だけで七つの海を制した男~  作者: 伝説の男前
第三部:植民地戦争編

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第19話 救援要請

海賊王ダゴール討伐から一月ほどが経った、ある日のことだった。


「船長、緊急の報せです」


港に停泊中の白鯨号に、一人の伝令が息を切らして駆け込んできた。イザベラは眉をひそめ、伝令からの書状を受け取る。


「……カラベラ、だと」


イザベラの表情が険しくなった。


「船長、何かあったんですか」


蓮が尋ねると、イザベラは書状を机に広げながら答えた。


「西方海域にある弱小植民地、カラベラだ。アウレリア王国とは古くから友好関係にある小さな入植地だが……」


「侵略艦隊に包囲されている、との報せです」


ヴェルミナが書状を覗き込みながら続けた。


「相手は、大陸総督ザガレスが差し向けた植民地拡張艦隊。カラベラのような小規模な入植地では、到底太刀打ちできる相手ではありません」


蓮の胸に、不穏な予感がよぎった。


「ザガレス……?」


「聞いたことがあるか」


イザベラの問いに、蓮は首を横に振った。


「いえ、名前だけは、港で噂に聞いたことがあります。弱肉強食を掲げる、恐ろしい提督だと」


「その通りだ」


イザベラは苦々しい表情を浮かべた。


「ザガレスは、弱者は淘汰されて当然という思想の持ち主だ。抵抗力のない植民地を次々と併呑し、勢力を拡大している。カラベラも、その標的のひとつというわけだ」


蓮は書状に記された内容を、改めて読み返した。カラベラの人口はわずか数百人。武装も貧弱で、正規の海軍力など持ち合わせていないという。


「このままだと、カラベラは……」


「陥落するだろう。おそらく、住民の多くが奴隷として連れ去られることになる」


イザベラの声には、抑えきれない怒りが滲んでいた。


「船長、白鯨号で救援に向かうつもりですか」


ヴェルミナの問いに、イザベラは即座に頷いた。


「もちろんだ。だが、正直に言えば、今の白鯨号一隻で、ザガレスの艦隊主力に対抗できるかは分からない」


「規模は、どれくらいなんですか」


蓮が尋ねると、ヴェルミナが手元の情報を確認した。


「確認できているだけで、大型艦五隻を含む、計十五隻程度。しかも、あのダゴール討伐の噂を受けて、ザガレス側も相応の警戒をしているはずだ」


蓮は息を呑んだ。ダゴールの十二隻でさえ、あれほどの激戦だった。十五隻、しかも正規軍の艦隊となれば、桁違いの脅威になる。


「それでも、行く」


イザベラは迷いのない声で言い切った。


「カラベラを見捨てることは、私にはできない。船長として、そして――一人の人間として」


その言葉には、単なる義侠心以上の、何か個人的な想いが込められているように、蓮には感じられた。


「船長」


蓮は意を決して口を開いた。


「俺も、行きます。できることは、全部やります」


イザベラは蓮を見つめ、静かに頷いた。


「頼りにしている、蓮。だが、今回の相手は、これまでとは規模が違う。船体、砲、それだけでは足りないかもしれない」


「では、どうすれば」


イザベラは海図に視線を落とし、カラベラの位置を指し示した。


「まずは急行する。着いてから、現地の状況を見て、対策を練るしかない」


こうして白鯨号は、緊急の出港準備に入った。カラベラを救うための航海――それは、蓮にとって、これまでとは比較にならないほど大きな戦いの始まりでもあった。


港を離れる白鯨号の甲板で、蓮は改めて、自分の力の重みを噛みしめていた。


守れるかもしれない、多くの命がある。


その事実が、蓮の胸に、これまでにない重圧と、同時に確かな決意を刻み込んでいった。


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