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アノンの涙  作者: maruko


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 相変わらず家に関しては何もしないミネリタの元に、何故か学園を卒業したマチルダが()()()()()。アノンは目の前に立つマチルダを見つめて、当たり前の事を言った。


「どうしてマチルダが戻ってくるの?あなたもう成人してるのですから、自分で道を決められるでしょう?」


 ミネリタがマチルダを連れて帰ってきたあと、ロードとアントン、そしてアノンはマチルダの伯父であるシトロン伯爵と話し合いを設けた。

 話すのは専らロードであったが、当主代理として訪ったアノンの代わりに、シトロン伯爵と交渉してもらった。


 その時に交わした契約で、養育費は最初にミネリタが受け取った金銭のみ、ただし学園生活でマチルダにかかる費用は全てシトロン伯爵家が出すという、ミネリタが交渉したと言い張る事を、書面にして家名印を押印してもらった。

 そして、成人した時点でマチルダとジェルバン子爵家は無関係、その先はシトロン伯爵家が責任を持つという行を追加してもらっていた。


 一応その契約書はミネリタにも見せたし、マチルダにも話しておいたのに、彼女は卒業して子爵家に戻ってきたと宣った。

 皆が不思議に思うのは無理もないことだった。


「あらっだって私、おば様と契約したのですもの」


 そう言ってマチルダが出したのは子爵家とマチルダの雇用契約書。しかもその仕事がミネリタ専属の()()()()だと記載されている。


 学園前と全く変わらないミネリタとマチルダにアノンは絶望にも似た感情が湧いてくる。


 父ジュノンが亡くなり、新規の事業を立ち上げる事が難しかったジェルバン子爵家は、ずっと領民の税とジュノンが生前、すでに軌道に乗せてくれていた事業の収入でなんとか遣り繰りしてきた。

 これから少しずつ、子爵家を支えてくれた皆に還元していこうとしている矢先に、ミネリタとそっくりな金食い虫が帰ってきてしまったのだ。


「お母様、この契約書の給金ですが、お母様の私的費用以上の金額ですけれど、これは払えません」


「あらっどうして?子爵家が雇うのだからマチルダの給金は子爵家が払えばいいのよ。私が払う必要はないわ」


 ミネリタはジェルバン子爵として、マチルダを雇用したと言い張る。

 その決定は当主の決定なので、アノンたちがいくら言っても覆す事は出来なかった。


 結局マチルダは、ミネリタと交わしたその契約書の効力によって、ジェルバン子爵家で雇用され、アノン達がシトロン伯爵と交わした契約書は、無駄になってしまった。

 そして今まで以上にマチルダの費用としての金額が嵩んでしまい、皆に還元するという目的は頓挫してしまった。


 それでも子爵家を見捨てずに残ってくれた使用人達()の為にアノンは決意して、新規事業に積極的に参加する事にした。


 そんな中で、やはりライトはアノンの支えとなり、いつしか二人は愛を囁き合うようになる。

 身元も分からないライトと婚姻するには方法は一つしかない。

 新たな戸籍を入手する事だった。それは子爵家の寄り親となる辺境伯の許可が必要でもあった。この国で新たにライトが手に入れられる戸籍は平民の戸籍だ。

 アノンは子爵令嬢なので、平民と婚姻することは法律違反には当たらない。


 ロードとアントンが尽力してくれてライトは無事スカイナ王国の戸籍を作ることができた。

 そしてアノンとライトは結婚した。


 愛し合っていても二人は忙しい。

 子爵家のために領民のために、寝る間も惜しむように働く二人。

 相変わらず何もせず、自分の楽しいと思うことしかしないミネリタは、頑なにアノンに爵位は渡さなかった。


 王家に訴える事もできたのだが、そうなると子爵家は爵位を返上しなければならない。

 何故ならミネリタは、自分だけが罰を受けるのではなく、皆が罰を受ける方法を無い頭で捻り出していたのだ。


 幼いアノンに領地経営をさせていた事実。


 これはミネリタだけの罪では終わらない。

 ロードやアントンまでもが罪に問われてしまう事で、もし王家に爵位継承を促せばそれを暴露するとアノンは実の母親に脅された。


 そもそもがアノンにそれをさせたのはミネリタだったのに、おそらくミネリタに変な知恵をつけたのはマチルダだと思われた。


 そのせいでアノンは子爵代理、若しくは次期子爵という変な肩書で、働くことを余儀なくされた。


 それでもそんな中にも喜びはある。


 アノンの専属メイドだったユナとアントンが婚姻して、子供が立て続けに産まれた喜びや、事業が軌道に乗り子爵家の領地が少しばかり潤ったり、そしてアノンとライトの間にアルトという一人息子が産まれたり、多忙の中でミネリタとマチルダに搾取されながらも、幸せに思える事はたしかにあった。


 長年アノンを父のように支えてくれたロードが病に倒れて儚くなったのは、アルトが一歳を迎えたばかりの頃だった。


「アノン様、貴方をずっと縛った私が言うのも烏滸がましいですが、無理だと思ったら逃げてください。ライト様とアルト様と三人でならどこででも暮らせるはずです。ジュノン様はあなたの幸せだけをいつも考えていたのに、私が不甲斐ないばかりに、あなたの人生を壊してしまいました。あの世でちゃんとジュノン様からお叱りを頂戴いたします。だから、逃げてください。アントンにもそのように伝えてあります」


 ロードは最期にアノンにそう伝えて息を引き取った。


 それでも踏ん切りがつかなかったアノンは、そのまま子爵家に留まっていたが、ある日息子のアルトから衝撃的な言葉を聞いてしまう。








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