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アノンの涙  作者: maruko


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 アノン様


 お元気で過ごされていますか?

 お名前はこれでよかったかしら?


 唐突に手紙を認めてしまってごめんなさいね。

 どうしても、何か言葉をと。

 ただ私の自己満足の為に、書いてしまいました。

 夫からあなたの秘密を聞きました。

 大きな秘密をその小さな体で抱えていたのかと思うと胸が痛みます。

 秘密であるから私が知った事はあなたの本意ではなかったことでしょう。

 ですが、夫を責めないでください。

 私が彼を執拗く問い詰めたのです。

 あなたの様子がとても7歳の少女とは思えなくて、何日も彼を責めてしまいました。

 非は私にございます。

 どうか、ハウケン伯爵をお許しください。


 そして、あなたの秘密を知って私はどうしても貴方に伝えたい言葉があります。


 前の人生の時、私どもはきっとあなたの力になる事がなかったのでしょう。

 あなたのお父様が亡くなったあと、私共は子爵家から遠ざかったのではないでしょうか?

 覚えていない事だとしても、どうしてもその事が気に掛かります。

 もしも私どもが手を述べていたら、あなたの人生は違っていたのではないでしょうか?

 あなたのお父様の代わりに、あなたを守ってあげる事ができなくて本当にごめんなさい。

 今更の謝罪は、私のただの自己満足。

 覚えていないからと、ただ手紙に文字を起こしているだけですが、それでもどうしても。

 私が、覚えているあなたは、たった2回しかお会いしていないけれど、あなたのその表情には、長年培ってきたかのような“憂い”を私は見ました。


 今は幼いあなたなのに、そんなお顔をさせてしまった私どもの罪深さを、夫の告白で思い知らされました。


 今は元気に過ごされていますか?

 お体を壊されたりしていませんか?

 夜は眠れていますか?

 心は健やかであられますか?


 私の娘を見るにつけ、あなたを思い出してしまいます。


 その憂いを帯びたお顔が、いつか輝きに変わる日が来ることを、遠い地より願っております。

 ですがもし、助けが必要な事があれば、私も知っているのだと思いだしてください。

 そして助けを求めてください。


 きっと今度こそ、あなたを助けるとここに誓います。


 最後に、あなたの心からの笑顔をその心が取り戻すことを切に願っております。



      メリーヌ・ハウケン





 アノンはハウケン伯爵夫人の手紙を読み終え、その手紙を胸に抱いた。


 アノンは巻き戻り前にアルトの母となっている。

 その時の気持ちを思い出していた。

 夫人の手紙には母親の様な気持ちが綴られている。


 この手紙を、ミネリタが書いたものならば。

 アノンはそんなあり得ないことを思ってしまった。


 そして()()()()()()たった2回しか会っていないのに、その子供の表情で何かを感じ取り、そしてこんなにも自分を気にかけてくれた夫人に感謝する。

 彼女は自己満足だと、何度も書いているけれど、アノンにはそうは思えない。

 聞いても無視することも出来るのだ。

 だって巻き戻り前のことなど、アノンしか覚えていないのだから。


 そして前の時のように、何度もアノンと接しているのならともかく、今度は2回しか会っていない。

 そんな娘の秘密など、あしらってもいいのに、こうして気にかけてくれたのだ。

 それに巻き戻り前にも夫人はアノンを袖になんかしていない。ルートの事で後ろめたくて、アノンの方から疎遠になっただけだ。


 アノンは夫人に感謝した。


 その手紙は、夫人はそのつもりがないとしても、母親の慈愛が伝わってきたからだ。それはアノンが、前も今もミネリタから欠片ももらえなかったものだ。


「ありがとうございます、おばさま。私を励ましてくださって」


 アノンは手紙を丁寧に封筒に入れて、宝箱に仕舞った。



 それから暫くして、アノンは10歳の誕生日を迎える。

 その数日前に、ハイザード王国に一つの出来事があった。


 側妃の死とその生家の没落だった。


 アノンはその出来事を新聞で知った。

 それには事実のみが書かれていて、詳しいことは何も記事にはなっていなかった。









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