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巻き戻り前のアノンは、あまり王族には興味がなかった。それでもどこの家門が王家と繋がっているかくらいは、常識として知っていた。
第二王子と婚姻していたのは、確か侯爵家の出身のご令嬢だった。
それをアノンがロードに話すと、彼は頷いて続きを話してくれた。
殿下とそのご令嬢(後の公爵夫人)は年齢が離れていた。
第二王子殿下は、王太子様のご子息が3歳を迎えるまで発表を控えていたが、公爵位を賜って、臣籍降下が決まっていたのだという。
相手のご令嬢の、生家の事情もあったようで、殿下が学園を卒業するまで発表するのを控えていたのを、勘違いした令嬢数人が、学園で探すのではと言っていただけだった。
だが、ミネリタは相手のご令嬢の容姿を見て(婚約発表が夜会だった)金髪で青い瞳という、絵本から飛び出したようなその姿に、愕然としていた。
自分がブルネットの髪色で瞳が緑色という地味な容姿のせいで、あの場所に立てなかったのだと、アノンの祖父母を責めたという。
それでもその思い込みも、後になれば笑い話でもするようになるだろうと、先代たちは思っていたが、そうではなかった。
子爵家の嫡女であったミネリタにも、何人かの釣書が届いていた。どれも皆伯爵家以下の次男、三男が多かったそうだ。
最終的にミネリタが、ジュノンを婿に選んだ決め手も金髪の子供が生まれるかもしれないという理由だったと知ったのは、アノンが生まれたときだったという。
「どうして?お父様は金髪ではないわ。それに瞳も黒いわよ」
アノンは自分の目を指で指しながらロードに訪ねた。ジュノンの髪色は薄茶色で、光の当たり具合によっては金髪に見えない事もないが、と考えながらだった。
アノンのブルネットの髪はミネリタ譲りだったし、黒い瞳はジュノンからで、紛れもなくアノンは二人の子供だと言える。
「辺境伯家の三代前に王女が降嫁されているのですが、その方がそのお色だったのです。それで隔世遺伝が起こるかもと期待したのだと、お嬢様が生まれたときに、一目見てがっかりされたように呟かれました。それから旦那様はミネリタに尚の事失望したのでしょう」
ロードが指で眉間を揉む。
アノンは、もうミネリタに、これ以上失望することはないなと思っていたが、それにしても、もう第二王子殿下と縁付けるはずはないのに、そこまで拘るのが分からない。
それを告げるとロードはまたもや苦笑する。
「ミネリタは、自身がその容姿でなかったから選ばれなかったと、思いこんでいましたので、第二王子殿下に知らしめたかったらしいです。自分と結婚していたら、金髪の子供が生まれていたはずだと。それを生まれたばかりのお嬢様の顔を見て話したので、旦那様はお怒りでした。それまでもミネリタの女子爵とは思えない、言動や行動に旦那様は呆れていましたから、それに拍車がかかったのだと思います」
「は?」
アノンは思わず聞き返してしまった。
何だその理由!
感想はそれだった。
ロードがアノンに話すのを、躊躇した理由も分かった。
あまりにも馬鹿馬鹿しい。
本当に絵本を読み聞かせてもらった時から、ミネリタの思考は成長していなかったのだなと、アノンは改めて思い、そんなミネリタと結婚した父の苦労を思うと、巻き戻り前の自分と重なってしまった。
ミネリタから逃れたい。
アノンは益々その思いが強くなっていった。




