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アノンは、ロードが話すミネリタの話を聞いていたが、それを聞いていて、何だか妙な気持ちになってきた。それは、アノンがあまりにも早く執務を覚えて働き始めてしまったせいなのか、どうにもロードの話すミネリタの行いが幼く感じるのだ。
「ねぇロード、お母様はその時学園に入ったばかりと言ってたけど、15歳にはなっているわよね」
アノンが堪らずといった様に、質問してきたのを聞いてロードは苦笑した。
「幼子のようだと感じましたか?」
ロードの言葉に目を瞠りながらアノンが頷くと、ロードもそれを見て頷いた。
「ミネリタは先代夫妻から甘やかされていましたから、成長しきれていなかったのです。私と合わなかったのもその辺が関係しています。ミネリタは畏れ多いことに、本当に真剣に王子様を待っていました」
「王子様って⋯」
「絵本を読み聞かせてもらってからずっとです」
「⋯⋯⋯はぁ⋯」
アノンは巻き戻り前のミネリタを思い出す。
自分の思い通りにならなければ、機嫌が悪くなっていたことや、誂えるドレスなども、かなりフリルが付いた物を好んでいた事など。そして子供がそのまま大人になったようだと、たしかに感じた事があったように思っていた。
本当に全く成長していなかったのだと、思わず大きな溜息を漏らしてしまった。
そんなアノンにロードが首を傾げる。ユナも不思議そうにアノンを見つめていた。
「あぁごめんなさい。前の時を思い出して、たしかに幼子のようだというのがぴったりだと思ったの。お母様って本当に成長していなかったのね」
「ずっとですか?」
「えぇ、私が最後にあった時。お母様はその時もピクニックに行くような感じで、私と絶縁したの」
「「なっ!」」
二人は同時に驚愕して憤ったが、アノンはロードに話の続きを促した。あとでその時の話を、アノンが詳しく話すという約束をさせられたあとに、ロードが再びミネリタの話に戻した。
ミネリタの突拍子もない話を聞いた前子爵、アノンの祖父は、一先ず詳細を知ろうとロードに調べるように頼んだという。
そしてロードが話を聞いたのが、その当時、教師として学園に在籍していた友人からだったそうだ。
その話によると⋯⋯。
タウンハウスのないミネリタは、学園の寮に入ったが、かなり浮いていた。学園の寮では、アノンの時もそうだったが、あまり上位貴族の子女は居ない。何故なら上位貴族なら、タウンハウスを持っているから、寮に入る必要がないのだ。自ずと入寮した貴族子女の中では、よっぽどの事情がない限り、子爵家でも立場が上になる。
それでも皆、寮に入る前に一通りの身の回りの事は、学習してから入ってくる。寮にも専属メイドは在住するが、一人で3人程を掛け持ちしていた。専属というのは個人ではなく、学園のという意味なのだが、ミネリタはそれを、全く無視していたため浮いていたのだ。
一人のメイドを朝早くから独り占めして扱き使っていた事を、寮長からも度々注意を受けていた。
そんなミネリタは寮だけでなく、学園でも孤立していた。
そんな時にミネリタを気にかけて、第二王子殿下が声をかけたのだという。
殿下にしてみれば、新入生が一人で泣いていたのを、心配して声をかけたそうなのだが(それも直接ではなく側近候補だった伯爵家の子息からだった)それをミネリタが勝手に妄想して勘違いした。
それというのも、学園で一部の上位貴族の令嬢の、思い込んだ噂があったという。
当時殿下には婚約者がいなかった。
学園で、探すことになっているのだと、上位貴族の子女が嬉々として、選ばれるのは自分ではないかと、話していたのをミネリタが聞いていたようだ。
殿下が自分に個人的に声をかけてきた。直ぐに婚約の話にならないのは、候補だからだ。
完全にミネリタの勝手な思い込みだった。
それを教師から、呆れたように聞かされたロードは、羞恥で泣きたくなったそうだ。
憐れむような友人の目が、ジェルバン子爵家の教育はどうなってるのだと、言わんばかりだったという。
「ミネリタは思い込みが激しいのは、幼い頃からでしたが、その時は特に酷かった。それで先代にミネリタを諌めてもらって、長期休暇が終わる頃には、殿下の話をしなくなったので、安心していたのですが、ただ単に私達の前で言わなくなっただけだったと、あとになって知りました。ミネリタは学園で殿下を追いかけ回していたそうで、あともう少しで、不敬で罰を受ける所まで酷かったようです。罰を受けなかったのは王家の温情故であったのですが、それもミネリタは自分が特別だと勘違いしていました」
そこまで聞いて、アノンは頭痛がして、額を手に当て天を仰いだ。
ユナも呆けていた。あまりにも酷いミネリタに呆れ果てたのだろう。
「殿下は2つ違いでしたから、ミネリタに付き纏われたのは一年程でした。卒業して程無くして婚約を発表されましたので、それで漸く現実を見てくれると思ったのですが、そこから金髪と青い目に拘り始めたのです」
「それはどうしてと聞いても?」
アノンは想像がついたが、敢えて確かめるためにロードに聞いた。
「自分がそうではなかったから婚約者候補から落とされたのだと思い込んだのです」
予想通りの答えに、アノンは目を瞑った。




